スポーツトレーナーの平均年収はいくら?就職先や年代別の給料やより給与をアップさせる方法を解説

スポーツトレーナーは、チームの成長を一緒に体験でき、選手が怪我から復帰する瞬間を見られるなど、多くのやりがいを感じられる仕事です。

スポーツが好きな方や、元々スポーツをやっていた方など、スポーツトレーナーの仕事に憧れを抱いている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、スポーツトレーナーになる方法や年収について、詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか?

そこで本記事では、スポーツトレーナーの平均年収や働く場所、給与を上げる方法について詳しくご紹介します。

「好きなスポーツに携わる仕事をしたい」「スポーツトレーナーに転職したい」とお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

スポーツトレーナーの平均年収はどのくらい?

スポーツトレーナーの給料

スポーツトレーナーは、アスリート個人や、アスリートが所属するチームのサポートをする仕事です。

スポーツトレーナーの就業先や仕事内容は、非常に広範囲にわたります。
例えば、スポーツチームに所属するスポーツトレーナーは、アスリートの個別トレーニングメニューの作成、アスリートのコンディション調整などを行います。
また、医療機関に所属し、医師や理学療法士と連携してサポートするスポーツトレーナーもいれば、スポーツジムで、利用者に合ったトレーニングの指導を行うスポーツトレーナーもいるでしょう。

スポーツトレーナーの年収は、雇用形態や勤務先によって異なり、平均年収以下の人もいれば、1,000万円を超える人もいます。
厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査を基に、スポーツトレーナーの平均年収を計算すると、次のようになります。
ただしこの数字には、スポーツトレーナーだけでなく、「個人教師」として指導する、アウトドアインストラクターや音楽教室講師、学習塾教師なども含まれますので注意が必要です。

きまって支給する現金給与額
30万2,800円(A)

年間賞与その他特別給与額(B)

年収
(A×12+B)

超過労働給与額

所定内給与額

2万2,400円

28万400円

51万4600円

414万8200円

※参考:厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査

なお「きまって支給する現金給与額」とは、基本給だけでなく、職務手当や通勤手当などが含まれた額で、所得税などを控除する前の金額です。
「所定内給与額」は、「きまって支給する現金給与額」から「超過労働給与額(時間外手当など)」を引いた額となります。

国税庁の令和4年分民間給与実態統計調査によると、すべての給与所得者の平均給与が458万円であることから、スポーツトレーナーの給与は、平均よりもやや低いとわかります。

就職先別スポーツトレーナーの年収

すべての給与所得者の平均よりも年収が低いスポーツトレーナーですが、働く場所や働き方で収入は大きく変わってきます。

スポーツトレーナーの就職先として挙げられるのは、おもに以下のような施設です。

  • スポーツチーム
  • スポーツジム
  • 整体院

これら就職先別の年収を比較してみましょう。

プロスポーツチームや選手専属のスポーツトレーナーの場合

スポーツトレーナーといえば、特定のスポーツチームや選手の専属として仕事をするというイメージを持つ方も多いでしょう。
現在は、さまざまなスポーツ競技において専属のスポーツトレーナーがつき、中には年収1,000万円を超える人もいます。

専属でつく場合は、自身の経験や実績、依頼元のチームや個人にどの程度資金力があるかによって年収に差が出ます。
チームや個人が獲得した成績や賞金の額によって、給与額が変動する可能性もあるでしょう。

また、どのように契約を結ぶかもポイントになります。
チームや選手に雇用されるスポーツトレーナーの場合は、プロ契約や、正社員・契約社員としての雇用など、さまざまな契約体系があります。
一般的には、年俸制で契約するケースが多いようです。

詳しく年収を調査したデータはありませんが、仕事で高い評価を受けた場合は、ほかのチームや選手からの引き抜きを受け、大幅に年収がアップすることもあります。
年単位で契約した場合、結果が出なければ契約更新されない可能性もある厳しい世界です。

しかし、チームやアスリートの成長に直接貢献できるため、やりがいがある仕事だといえるでしょう。

スポーツジムで働くスポーツトレーナーの場合

スポーツジムでスポーツトレーナーとして働く場合は、トレーニングマシンの点検・清掃、使い方の指導、受け付けなど、ジムの業務全般を行います。
なおスポーツジムの中には、研修制度が充実しているところもあるため、未経験でもスポーツトレーナーになることが可能です。

スポーツジムで働く場合の年収は、一般的なスポーツトレーナーの平均である、約415万円と同程度と考えられますが、勤務するジムの規模や地域によっても差があります。
例えばホットペッパービューティーワークによると、東京で正社員として働く場合は、平均月給が22万6,000円、大阪府の場合は23万3,000円となっています。
※引用:ホットペッパービューティーワーク「東京都の インストラクター・トレーナー・サロン平均データ」 「大阪府の インストラクター・トレーナー・サロン平均データ」
※2024年9月4日時点のデータ
※随時更新されているため、最新情報はこちらの各都道府県別ページから平均データをご確認ください。

また、パーソナルトレーナーとして、お客様にマンツーマンで指導できるようになれば、年収アップも期待できるでしょう。

整体院で働くスポーツトレーナーの場合

スポーツトレーナーは、整体院で働く場合もあります。

プレーヤーやアスリートがよりよい結果を出せるように身体の痛みの軽減や機能の向上をサポートする役割が求められるスポーツトレーナーは、整体師として必要な知識や技術を備えていることもあります。
そのため、整体院での仕事ととても親和性が高いのです。

整体院で働くにあたり資格を必要としないことも、スポーツトレーナーが整体院で仕事しやすい要因の1つです。

すでにスポーツトレーナーとしての経験があれば、その知識を活かして、即戦力として働くこともできるでしょう。

整体院で働くスポーツトレーナーの詳しい年収は発表されていませんが、ホットペッパービューティーワークによると、愛知県の整体師の平均月収は21万3,000円、静岡県の場合は23万円となっています。
※引用:ホットペッパービューティーワーク「愛知県の 整体師・サロン平均データ」 「静岡県の整体師・サロン平均データ」
※2024年8月5日時点のデータ
※随時更新されているため、最新情報はこちらの各都道府県別ページから平均データをご確認ください。

整体院の仕事で信頼を得られれば、予算が限られているため専属トレーナーを雇用できないスポーツチームからも、アルバイトとして依頼されるかもしれません。
このような副業もこなすことで、年収アップが図れるでしょう。

年代別スポーツトレーナーの年収

スポーツトレーナーの女性

スポーツトレーナーの仕事では、業務上、体力が必要とされます。
そのためスポーツトレーナーを目指す際には、「年齢を重ねても長く続けられる職業だろうか?」と、心配になる方もいらっしゃるでしょう。

そこで、厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査を基に、世代別の平均年収と働き方をご紹介します。
ただし、一度ほかの職種で就職したのちに転職してスポーツトレーナーになった場合や、所持している資格などによって年収には差が出ます。
そのため、以下の平均年収は目安として捉え、実際の年収は経験年数や勤務先によって異なると理解しましょう。

20代のスポーツトレーナーの平均年収

新卒でスポーツトレーナーになった場合、入社10年程度にあたる20代の年収は、次のようになります。

きまって支給する現金給与額(A)

年間賞与その他特別給与額(B)

年収
(A×12+B)

20~24歳

23万9,800円

30万9,000円

318万6,600円

25~29歳

26万9,700円

44万2,100円

367万8,500円

※参考:厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査

スポーツトレーナーの平均年収である、約415万円には、50万円~100万円ほど届きません。

体力のある20代の間は、経験とスキルを身に付けられる絶好のチャンスです。
仕事に役立つ資格を取得したり、多くのアスリートやお客様と接して経験値を上げたりすることで、30代以降の働き方や方向性によい影響をもたらすでしょう。

30代のスポーツトレーナーの平均年収

30代は、企業であれば中堅として、さまざまな仕事を任されるようになる年代です。
30代スポーツトレーナーの平均年収は、スポーツトレーナー全体の平均年収である、約415万円とほぼ同額になります。

きまって支給する現金給与額(A)

年間賞与その他特別給与額(B)

年収
(A×12+B)

30~34歳

30万5,700円

48万3,500円

415万1,900円

35~39歳

30万6,500円

58万2,000円

426万円

参考:厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査

20代で多くの経験や知識を積み重ねた方の中には、転職や独立によって、大幅に給与がアップした方もいらっしゃるでしょう。
積み重ねた実績によっては、プロチームやプロアスリートから、専属契約のオファーが舞い込むかもしれません。

40代のスポーツトレーナーの平均年収

40代になると、企業内では、部下を束ねて指示を出す役職に就く方が増えます。

スポーツトレーナーの場合は、部下やお客様からの信頼を積み重ねられる年代です。
お客様のトレーニング指導だけでなく、後輩トレーナーの育成に関わる人もいるでしょう。

きまって支給する現金給与額(A)

年間賞与その他特別給与額(B)

年収
(A×12+B)

40~44歳

34万3,300円

59万4,500円

471万4,100円

45~49歳

33万5,800円

66万9,900円

469万9,500円

※参考:厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査

40代になると活躍する場が広がるため、すべての職業の平均年収を超える方も増えてきます。

50代のスポーツトレーナーの平均年収

50代になると、スポーツトレーナーでも、若い頃の体力を維持するのは難しいと感じる方が少なくありません。

きまって支給する現金給与額(A)

年間賞与その他特別給与額(B)

年収
(A×12+B)

50~54歳

35万9,000円

69万600円

499万8,600円

55~59歳

32万4,900円

44万4,600円

434万3,400円

※参考:厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査

そのため50代以降は、ジムの店長やマネージャーなど、お客様と直接接するのではなく、裏方の仕事に就く人もいるでしょう。
一方で、生涯現役を貫きパーソナルトレーナーとして、最前線で活躍する人もいます。

働き方に差が出る分、収入にもばらつきが出やすくなる年代です。

スポーツトレーナーが給料をより上げるための方法4選

スポーツトレーナーの男性

スポーツトレーナーといっても、職場によっては「思ったよりも年収が低い」と感じることもあるでしょう。
そのような場合でも、給料アップのためにできることがあります。

ここからは、スポーツトレーナーの給与アップに効果的な4つの方法を紹介します。

  1. 仕事に活かせる資格取得を目指す
  2. より条件のよい勤務場所を選ぶ
  3. プロスポーツチームや選手と専属契約を結ぶ
  4. 独立開業する

1.仕事に活かせる資格取得を目指す

スポーツトレーナーが必要とされる職場は多岐にわたりますが、必要な資格や有利な資格は、職場によって異なります。
また、職場によっては、資格を持っている場合に「資格手当」をもらえる可能性もあるでしょう。

ここでは、国家資格と民間資格に分けて、スポーツトレーナーにおすすめの資格をご紹介します。

なお、スポーツトレーナーの資格について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
スポーツトレーナーになるには?必要な資格や試験、仕事内容や働き方を詳しく解説

おすすめの国家資格

スポーツトレーナーは、関連性が高い国家資格を取得することによって、仕事の幅が広がります。

しかし、国家資格を取得するためには学校へ通う必要があり、けして簡単ではありません。
どのような職場で働くかによって、求められる資格も変わるため、まずは働く場所を見極めることが重要です。

以下は、おすすめの国家資格と特徴、その資格が役立つ職場です。

国家資格

柔道整復師

特徴

・資格を取得すると開業資格が得られる

・手技により打撲や捻挫などの回復を図る

役立つ職場

・接骨院

・病院

・介護施設

国家資格

あん摩マッサージ指圧師

特徴

・手や指を使って、身体のこりをほぐしたり、脊椎のゆがみを矯正したりする

・関係の深いはり師やきゅう師資格を一緒に取得する人も多い

役立つ職場

・治療院

・整骨院

・病院

・介護施設

国家資格

はり師・きゅう師

特徴

・鍼灸師は、はり師ときゅう師両方の資格を取得した人のことである

・針やきゅうを使って自然治癒力を高め、病気やケガの回復をサポートする

役立つ職場

・鍼灸院

・接骨院

・病院

・福祉施設

国家資格

理学療法士

特徴

・事故や脳卒中の後遺症などの回復を図る

・パフォーマンスの向上や事故の予防など健康な人に対し指導や理学療法を行うこともある

役立つ職場

・病院

・福祉施設

これらの国家資格を取得する最大のメリットは、作業内容は限られるものの、医療行為ができるようになる点です。
例えば柔道整復師の資格があれば、骨折や脱臼・捻挫などに対し「柔道整復術」の施術ができます。
チームや個人の専属トレーナーになる際にも、これらの資格を所持していれば有利に働くでしょう。

おすすめの民間資格

スポーツトレーナーに関する知識を身に付けられる民間資格は、複数あります。
アスリートやお客様に、正しい知識を持って指導するためにも、取得しておくとよいでしょう。
また、知名度の高い資格であれば、転職に有利になる場合もあります。

ここでは、おすすめの資格を3つ、特徴とともにご紹介します。

資格

特徴

JSPO-AT

(日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)

・JSPO実施の養成講習会もしくは認定している専門学校や大学、大学院で専門科目を受講し、実技確認テストを修了しなければならない

・確認テスト修了後検定試験に合格する必要がある

NATA-ATC

(全米アスレティック・トレーナーズ協会公認アスレティックトレーナー)

・アメリカの国家資格

・認定カリキュラムのあるアメリカの大学と大学院を卒業しなければならない

・英語力が必要

NSCA-CPT

(NSCA認定パーソナルトレーナー)

・国際的に信頼度の高い資格

・日本語で受験可能

・NSCAジャパン会員になる必要がある

それぞれ難易度や、受験に必要な条件が異なります。
どの資格も認知度が高いため、取得することで信頼度が上がるでしょう。

2.より条件のよい勤務場所を選ぶ

2番目の方法は、条件のよい勤務場所を選ぶことです。

基本給はもとより、ボーナスの額や福利厚生の内容は、会社によって異なります。
現在の勤務先の労働条件に不満がある場合は、転職も視野に入れるとよいでしょう。

また、海外で力を発揮する方法もあります。

とくにアメリカは、スポーツトレーナーの地位が高い国です。
アメリカの国家資格NATA-ATCをもつスポーツトレーナーは、看護師・理学療法士同様の準医学従事者として扱われるため、収入も日本と比べて高額になる可能性があります。

3.プロスポーツチームや選手と専属契約を結ぶ

大幅な年収アップを叶えるには、プロスポーツチームや選手と専属契約を結ぶ方法もあります。

スポーツジムや整体院に雇用されて働く場合、年収1,000万円以上を目指すことは難しいでしょう。
しかし、プロスポーツチームやプロ選手と専属契約を結んだ場合、相手の収入によっては年収1,000万円を超える可能性もあります。

ただし、チームや選手の成績によっては契約更新を打ち切られる可能性もあり、高年収で雇用され続けるためには、スキルや知識・経験などが重要となります。

4.独立開業する

独立して、トレーニングジムやパーソナルジムなどを経営する方法もあります。

近年の健康ブームもあり、フィットネス市場は年々拡大中です。

もちろん、独立するためにはある程度の資金が必要です。
経営や集客に関する知識を付ける必要もあるため、トレーナー業務以外にも考えるべきことが多くなります。
しかし、店舗数を拡大する、顧客数を増やすなどの成功体験を重ねることで、年収アップも期待できるでしょう。

まとめ

厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、スポーツトレーナーの年収は、およそ415万円でした。
しかし、働く場所や経験・スキルなどにより、年収には大きな差があります。

スポーツトレーナーの勤務先は幅広く、スポーツジム以外にも、整体院やプロスポーツチームなどがあります。
健康志向が高まる昨今、スポーツトレーナーの需要が伸びており、病院・介護施設などで働くこともできるでしょう。

関連する資格を取得することで、できる仕事の幅が広がり、収入をアップできる可能性もあります。
スポーツトレーナーに興味のある方は、どこで働くのか、資格を取得したほうがよいのかなどを考慮して勤務先を決めましょう。

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監修者樋口 直彦

整形外科医

医療法人藍整会 なか整形外科(理事長)

帝京大学医学部卒業後、いくつかの病院で勤務し、院長を経験後、2021年1月に医療法人藍整会 なか整形外科の理事長に就任。
バレーボールVリーグのサントリーサンバーズのチームドクターも務める。骨折治療をはじめ関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。
クリニック運営にICTを推進し、お待たせすることない診療が信条。

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監修者秋田 繁樹

特定社会保険労務士

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研

2004年に秋田社会保険労務士事務所として開業スタートアップをはじめ中小企業の就業規則の作成や労働トラブルの予防や解決のためアドバイスを行っています。

執筆者山本 鮎美