スポーツトレーナーになるには?必要な資格や試験、仕事内容や働き方を詳しく解説

スポーツトレーナーの需要は幅広く、スポーツ選手の活躍するアスリート界はもちろん教育や医療の分野にも求められています。この記事では、実際に目指すなら知っておきたい必要な資格や取得方法、具体的な仕事内容や給料・年収などもあわせて解説します。

スポーツトレーナーの仕事内容は?

スポーツトレーナーが働いている様子

スポーツトレーナーとは、アスリートのトレーニング指導や健康管理を行う専門職です。スポーツの技術を実演などで指導するスポーツインストラクターとは異なり、怪我のリハビリやメンタルケア、食事の摂り方など日常の習慣もあわせてサポートすることが特徴です。

プロのアスリートや実業団選手からのニーズに限らず、医療分野と連携して一般の人を対象に活動するなど、スポーツトレーナーという職種には様々な働き方があります。まずはスポーツトレーナーに分類される代表的な6つの職種を解説します。

スポーツトレーナーの種類(1)アスレティックトレーナー

アスレティックトレーナーは、アスリートが怪我をしたときの復帰のサポートを行い、予防や再発防止に取り組む仕事です。健康管理やテーピング、ストレッチなども行います。スポーツトレーナーのなかでも認知度が高く、知識やスキルを承認する資格が多いのも特徴です。

スポーツトレーナーの種類(2)ストレングストレーナー

ストレングストレーナーの目的は、アスリートの身体能力を強化することです。解剖学はもちろん、栄養学、生理学など幅広い知識と実践が求められます。個々にあわせたトレーニングメニューやプログラム全体を作成して指導の場に携わっていきます。

スポーツトレーナーの種類(3)コンディショニングトレーナー

コンディショニングトレーナーは、身体のコンディション維持、向上を目的にアスリートをサポートする仕事です。大切な試合のタイミングとベストなコンディションを一致させるため、ストレッチや筋トレはもちろん疲労回復への指導も合わせて行います。

スポーツトレーナーの種類(4)メディカルトレーナー

メディカルトレーナーの働く場所は医療施設です。医師、理学療法士、作業療法士など専門職と連携して、身体と運動機能の回復、復帰に向けたサポートを行います。プロの選手だけではなく整形外科の患者など一般の人への指導にも対応するのが特徴です。

スポーツトレーナーの種類(5)フィットネストレーナー

フィットネストレーナーはフィットネス施設やスポーツジムなどで、利用者の目的やレベルに応じたトレーニングメニューの作成、提案、トレーニング指導を行う仕事です。スタジオレッスンや清掃など、施設内の業務が含まれる場合もあります。

スポーツトレーナーに資格は必要?

スポーツトレーナーが怪我の処置をしている様子

スポーツトレーナーを目指すなら、資格の取得を強くおすすめします。スポーツトレーナーという名称の国家資格や民間資格はありませんが、知識と技術を身につけるために、就職先や指導の対象を広げるために資格を取得するのがおすすめです。

スポーツトレーナーが資格を取得するメリットとは?

スポーツトレーナーにとって、資格の取得にはどんなメリットがあるのでしょうか。キャリアのスタートラインから、将来的な転機を踏まえて、身につけた資格がどんな場面で価値を持つのか2つのパターンを解説します。

スポーツトレーナーとしての知識や技術を証明できる

資格を取得することで専門的な知識や技術を身につけられます。自分自身の持つ専門性の価値を資格で証明できることは、雇用者や顧客からの信頼を得られる大きなメリットです。

スポーツトレーナーへの転職・就職・独立に有利になる

資格取得は就職にとって有利です。専門的な資格を所有すれば働き方の選択肢が広がります。転職や独立など将来的な転機にも、実績や経験とともに資格がキャリアを支えてくれます。

スポーツトレーナーにおすすめの資格を解説

スポーツトレーナーを目指すなら知っておきたい、おすすめの資格を紹介します。国家資格、民間資格ともに専門性の高い幅広い選択肢が用意されています。将来の働き方を想像しながら気になる資格を見つけましょう。

おすすめの国家資格4選

国家資格を取得することで、医療行為に該当するような専門的な施術を行うことができます。ここでご紹介する資格試験の受験には、所定の大学や専門学校などで認定カリキュラムを受ける必要があり、目安として3年間の通学が必要です。学習量や難易度は資格によって異なりますが、支援制度などを利用して効率的に取り組むことができます。

柔道整復師

柔道整復師は骨、関節、靭帯などが原因で起こるケガに対して手術を介さずに施術を行えることを証明する資格です。アスリートの世界の定説では外科手術からの完全復帰は難しいとされており、柔道整復師は重宝される存在です。

あん摩マッサージ指圧師

あん摩マッサージ指圧師は、疲労の回復やコンディションを整えるための手技や知識に長けた資格です。筋肉の緊張緩和、血行の促進、リンパの循環促進などの専門技術は、安静からの復帰を目指すアスリートから特に求められます。

鍼灸師

鍼灸師は身体の各所のツボへの刺激で不調にアプローチできる資格です。東洋医学にもとづき、医療機関や美容など活躍の場が幅広く、近年ではアスリートの疲労回復やケガの予防、改善への対応を行うスポーツ鍼灸が注目されています。

理学療法士

理学療法士はリハビリケアや機能訓練などを通して日常の生活動作の改善に取り組める資格です。理学療法士が持つ特有の知識と施術はスポーツ選手との親和性が高く、回復トレーニングをはじめ多岐に渡るサポートが期待されます。

おすすめの民間資格5選

スポーツに関する民間団体が定めた資格の受験は、実務の実績が重視される傾向があります。まずは合格率の高い資格から取り組み、キャリアを重ねてより高いハードルを目指すなど、段階的な取得をおすすめします。資格の難易度に比例して仕事の選択肢も広がるため、チャレンジを続ける価値があります。

JSPO-AT(旧JASA-AT | 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー)

日本スポーツ協会が認定する「JSPO-AT」は一般にも認知度が高い資格です。過去には合格率5%の狭き門でしたが、現在は約20〜30%に緩和されています。テーピングやストレッチ方法、栄養管理など総合的な知識や技術の所有を証明します。

NATA-ATC(全米アスレティック・トレーナーズ協会公認アスレティックトレーナー)

アメリカのスポーツ界への道も開ける「NATA-AT」を取得するにはアメリカの大学への留学が必要です。指定の3つの認定試験を1年以内に合格する必要があるなど難易度は高めですが、国際的な視野を持つなら挑戦する価値があります。

NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)

NACA-CPT」は認定試験に向けて通信講座も選ぶことができます。特にパーソナルトレーナー関連で高い信頼度を誇り、合格率約75%の間口の広さも魅力です。専門知識と指導技術、安全で効果的なトレーニングを計画できる技術が証明されます。

健康運動指導士

厚生労働大臣の認定事業として(公財)健康・体力づくり事業財団が発行する資格です。保健医療関係者と連携して運動を指導するためのプログラム作成、指導計画の調整などを担えます。全国71カ所の養成校で未経験から学ぶこともできます。

健康運動実践指導者

健康運動指導士と両軸になる資格です。自らが見本を示せる実技能力、運動指導技術を獲得。生涯にわたる生活習慣を重視して学校教育との関わりが深い点も特徴のひとつです。健康運動指導士と同じく未経験からの道筋も用意されています。

資格取得後の職場は?スポーツトレーナーの需要や将来性を解説

ジムで働くスポーツトレーナー

プロスポーツの世界を超えてスポーツトレーナーの需要の幅は広がっています。スポーツクラブはもちろん、教育や医療の現場にも求められる将来性は見逃せません。ここでは具体的な働き方と給与の概要を解説します。

プロのスポーツチームでスポーツトレーナーとして働く

プロのスポーツチームで働くには一流のアスリートと同様、実力主義の世界に身を置く覚悟が必要です。実績を積んでスカウトを待つ、人脈をつくって自分を売り込むなど、積極的にキャリアを磨いて手にするポストです。

企業の実業団チームのスポーツトレーナーとして働く

企業が運営する実業団チームで働く選択もあります。実業団のスポーツトレーナーは選手と同じく企業に属する正社員であることが多く、収入や福利厚生の受け皿が安定しており、持続的な働き方を望むことができます。

スポーツクラブ、学校、病院など需要に応じてスポーツトレーナーとして働く

スポーツクラブなどで一般の方を対象にする働き方もあります。スポーツトレーナーは教育機関や医療機関からも一定の需要があり、社員として在籍しながら地域の施設に出向いて指導を担う働き方もあります。

スポーツ選手など個人と契約しスポーツトレーナーとして働く

施設やチームに所属せず、個人と契約して働くことができるのもスポーツトレーナーの特徴です。プロスポーツ選手はもちろん、市民ランナーなどプロではない選手と個人契約を結ぶケースも珍しくありません。

スポーツトレーナーの給与は?

プロチームに所属した場合は年俸制が多く、スポーツトレーナーの平均年収は約370万円(※)です。キャリアを重ねて1000万円台後半の年俸を得るトレーナーもいます。昇給を望める契約更新は年単位で行われることが多く、能力、経験、実績をもとに所属先との交渉を行います。

スポーツジムなどで正社員として働く場合、年収約280〜578万円程度が目安です。保有する資格や能力による手当て、勤続年数とともに昇給を見込むことができます。

※引用:求人ボックス「スポーツトレーナーの仕事の平均年収は370万円/平均時給は1,100円!給料ナビで詳しく紹介」

まとめ:自分にあった資格を見つけてスポーツトレーナーを目指そう

スポーツトレーナーを目指すなら知っておきたい資格について、職種の種類や働き方についてお伝えしてきました。専門性の高いスキルが求められるスポーツトレーナーにとって、国家資格、民間資格の取得は必須と言えるものです。

資格を持てば就職先の選択肢が広がります。資格が証明する知識や技術は、プロとしての実績を支えてくれます。どんな職種に就いてどんな働き方をしたいのか、理想の将来をイメージしながら自分にあった資格を見つけてください。

プロフィール画像

監修者樋口 直彦

整形外科医

医療法人藍整会 なか整形外科(理事長)

帝京大学医学部卒業後、いくつかの病院で勤務し、院長を経験後、2021年1月に医療法人藍整会 なか整形外科の理事長に就任。
バレーボールVリーグのサントリーサンバーズのチームドクターも務める。骨折治療をはじめ関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。
クリニック運営にICTを推進し、お待たせすることない診療が信条。

執筆者 石田 純平