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美容師が独立したら年収はいくらになる?独立にかかる費用や、収入アップの方法を解説

美容師として勤務するなかで、独立・開業や昇進など、仲間たちがそれぞれのキャリアを歩んでいるのを目にすることもあるでしょう。
収入アップを目指すときに、独立・開業するのは有効な手段のひとつです。
しかし「独立して、どれくらいの年収を獲得できるのか」「失敗せずに、きちんと事業としてやっていけるのだろうか」など、不安に思うことも多いのではないでしょうか。

この記事では、美容師の平均年収のほか、独立後に平均年収と同程度の収入を獲得するため、必要な売り上げがいくらかなどについてご紹介しています。
また独立・開業するにあたって必要な初期費用や、収入アップのポイントなどについても解説するため、ぜひご覧ください。

一般的な美容師の平均年収は?

美容師の年収

厚生労働省の運営する職業情報提供サイト(日本版O-NET)job tagによると、2023年(令和5年)における美容師の平均年収は、379万7,000円となっています。
また、同じく厚生労働省の実施した「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、一般労働者の平均月収は31万8,300円のところ、美容師や理容師が含まれる「生活関連サービス業」の平均月収は27万8,700円でした。
美容師・理容師の収入金額は、全産業の平均よりも月額3万9,600円低い結果となっています。

またjob tagによると、美容師の月収のボリュームゾーンは、20~21万9,000円です。
スタイリスト・アシスタントの双方を含む統計とはいえ、他業種全体の平均値と比較すると、収入が低めのケースは多いといえるでしょう。
美容師のランク別の給料・年収に関する情報は以下の記事で取り上げているため、気になる方はあわせてチェックしてください。

▷美容師の給料・年収はどれくらい?アシスタントから店長まで各ランクの給料など徹底比較【美容師監修】

収入についてこうした背景があるため、年収アップを目指して独立する美容師も少なくありません。
独立すると、雇用されているときには目指せなかったような収入も、自身の努力・スキル次第では獲得できる可能性があります。

※引用:職業情報提供サイト(日本版O-NET)job tag「美容師」 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

美容師が独立した際の平均年収はどれくらい?

独立した美容師

一般的に、独立した美容師(スタイリスト)の年収は、売り上げの20%程度が目安です。
収入は下記の費用に振り分けることが多く、こうした経費を差し引いた分が利益になります。

  • 従業員・美容師を雇用した場合の人件費…35%程度
  • 賃料・水道光熱費…10%程度
  • 材料費・備品費…10%程度
  • その他…25%程度

とはいえ、独立後にどれだけの収入を獲得できるかは営業形態によっても左右され、ケースバイケースです。
ここでは「従業員を雇用する場合」「オーナー1人で経営する場合」「シェアサロンを利用する場合」の3パターンに分けて、美容師の平均年収程度を獲得するための売り上げの目安についてご紹介します。

従業員を雇用する場合

従業員を雇用するケースでは、売り上げの20%程度がオーナーの年収の目安となります。
美容師の平均月収は27万8,700円のため、このラインを超えるためには、その5倍となる月売り上げ139万3,500円以上を目指す必要があるでしょう。
1週間に2日の休日を組み込んで週に5日、月20日稼働すると仮定すると、毎日6万9,675円を売り上げなければなりません。

とはいえ、従業員も含めて複数人でお客さまに対応できるため、1日あたりの売り上げを増やしやすいメリットがあります。
1人で上記の金額を達成できていない場合でも、従業員を雇用して独立・開業が可能なケースもあるでしょう。
一方で、仮に売り上げが目標を達成できなくても、雇用したスタッフの給料は保証しなければならないことも注意点として把握しておく必要があります。

オーナー1人で経営する場合

オーナー1人で経営するケースでは、人件費がかからないため、売り上げのおよそ55%を年収として確保できます。
美容師の平均月収(27万8,700円)を達成するには、1ヶ月に50万6,728円、1日あたり2万5,337円(※週5日・月20日勤務の場合。小数点以下は切り上げ)の収入を確保できればよい計算です。

カラーやパーマの施術をしたり、サロントークで物販の販売数を伸ばしたりすれば、利益率を高められるでしょう。

シェアサロンを利用する場合

店舗を持たずに活動する美容師や理容師がシェアして利用する「シェアサロン」を使う場合、売り上げの65~80%程度を収入として確保できます。
サロンの利用料金を支払う必要があるものの、店舗を構える場合と異なり、まとまった賃料・水道光熱費を支払わずに済みます。
美容師の平均月収27万8,700円を達成するには、月間34万8,375~42万8,770円、1日あたり1万7,419~2万1,439円(※月20日稼働の場合。小数点以下切り上げ)の売り上げを確保できればよい計算です。

ただし、シェアサロンの料金形態によって、収入として確保できる割合が変わる点に注意しましょう。
また店舗を構えないことから、飛び込みのお客様を期待できないため、指名客を確保しておくか集客に注力する必要があります。

美容師が独立する際にかかる費用はどれくらい?

ヘアサロン

独立を目指す場合には年収アップなどのポジティブな要素ばかりを考えてしまいがちですが、実際には費用のことも十分に考慮する必要があります。

この章では、美容師が独立する際に必要な初期費用について、開業する場合とシェアサロンを利用する場合に分けてご紹介します。

開業する場合の費用

独立して事業を始めるまでには、初期費用として1,000~2,000万円程度が必要とされています。

主に、下記6項目の費用がかかります。

  1. 物件取得費用
  2. 内装工事費用
  3. 美容機器・備品費用
  4. 材料費
  5. 広告宣伝費
  6. 運転資金

それぞれの内訳を確認しておきましょう。

なお、独立時の初期費用の回収には、1~4年程度が目安であるとされています。
初期費用の融資を受けた場合は、収入の中から返済をしていくことになるため、あらかじめシミュレーションしておきましょう。

物件取得費用

物件取得費用とは、美容室として利用するテナントを借りる際にかかる費用のことです。
敷金・礼金・前家賃(契約時に支払う翌月分の家賃のこと)・仲介手数料などのコストが含まれます。
実際にかかる具体的な費用は、地域・立地・物件や、敷金・礼金・前家賃の設定によって異なります。

例えば、開業の場所として商業地を選んだり、地方でなく大都市を選んだりすると、コストがかさむでしょう。
とくに契約時には家賃4ヶ月~12ヶ月分以上の費用がかかるため、慎重に物件を探す必要があります。

しかし、物件取得費用を浮かせる方法として、自宅サロンを開業したり、シェアサロンを利用したりする方法が挙げられます。
物件取得費用に悩んだら、上記の方法も検討してみましょう。

内装工事費用

物件を取得したら、天井・床・壁・給排水・空調など、設備工事をする必要があります。
もともと美容室として運用されていた物件を居抜きで利用する場合は、コンセプトに合わせた最低限の工事費用で済むため、コストをおさえやすいでしょう。

一方、そうした設備が取り除かれているスケルトン物件を利用する場合、内装のアレンジがしやすくサロンとしての統一感も演出しやすいものの、大規模な工事をしなければならず費用もかさみやすい傾向にあります。
開業資金のおよそ半分を占めるケースもあるほど、まとまった金額が必要になるため、慎重に物件を選びましょう。

美容機器・備品費用

施術で用いるチェア・シャンプー・ミラー・パーマ機器・ドライヤーなどのほか、パソコン・レジ・掃除機・決済用端末などにかかる費用が含まれます。
なかでも専用機器は費用がかさみやすく、下記のように、本体価格のみで数十万円するものも少なくありません。

  • シャンプーユニット(サイド)…本体価格10万円~
  • シャンプーユニット(バック)…本体価格24万円~
  • シャンプーユニット(フルフラット)…本体価格68万円~
  • パーマ機器…10~35万円程度

ただしこうした費用は、中古品を活用することでおさえることも可能です。
またグレードを落とす、台数を絞る、メーカーを厳選するなどの工夫をすれば、費用をおさえられる場合もあるでしょう。

3-1-4. 材料費

材料費には、シャンプー・ヘアトリートメント・パーマ剤・カラー剤・ケープ・イヤーキャップなどの消耗品費や、タオルの購入費用などが含まれます。
用意する液剤が多いほど、幅広いニーズに対応できるため、顧客満足度を高められるでしょう。

ただし、液剤のバリエーションが増えれば、その分コストもかさみます。
ご自身の得意な施術やサロンのメニューに応じてそろえ、余剰・過剰がないように心がけることが大切です。

広告宣伝費

広告宣伝費は、美容室の開店を知らせたり、メニュー・価格・特徴などを知らせたりして、新規顧客を開拓するためにかかる費用をいいます。
例えば、下記のような活動に際してかかるコストが該当します。

  • インターネット広告の出稿費用
  • 公式サイトの作成費用
  • チラシの作成・配布費用
  • ご近所の方への挨拶時に配布するノベルティ制作費用

ただし、SNSの運用を中心に広告宣伝をすれば、コストはかなりおさえられます。
ターゲット層のほか、予算も考慮して宣伝の手段を選ぶ必要があるでしょう。

運転資金

独立・開業したのち、事業が軌道に乗るまでの期間を安心して過ごせるよう、半年分~1年分の運転資金を用意しておくと安心です。
思うように売り上げが伸びなかったときや、キャッシュレスで決済したお金が入るまでに時間がかかった際の負担軽減につながります。

また、ここまでご紹介してきた物件取得費用・内装工事費用などでお金がかかり、運転資金を用意できないときには、創業融資を検討するのもよいでしょう。
日本政策金融公庫や民間の銀行などで利用ができますが、返済が必要な点を把握しておく必要があります。

シェアサロンを利用する場合

シェアサロンを利用して活動する場合は、初期費用はほとんど発生しません。
一方で月々の使用料が発生するため、年収から引かれる経費がご自身で店舗を借りる場合よりも大きくなるケースが多いです。

また、シェアサロンによって料金体系が異なる点にも注意しましょう。
売り上げの100%が美容師・理容師の収入となるシェアサロンもあれば、30%程度をオーナーに納める必要があるシェアサロンもあります。
また材料・備品等のレンタルができるかどうかも異なるため、よく確認しておきましょう。

さらに、シェアサロンは大都市以外のエリアでは少ない傾向にある点にも注意が必要です。
活動エリアにどれくらいのシェアサロンがあるか、あらかじめ確認してから計画を立てましょう。

独立後にさらに年収アップを目指すには?

美容師の女性

独立開業後に、年収(収入)アップを実現するためには、3つのポイントをおさえておきましょう。
リピート客をつくる」「新規のお客様を増やす」「物販を始めてみる」についてご紹介します。

リピート客をつくる

リピート客の数を増やすことは、サロンの収入のアップや経営の安定に直結するため、サロンオーナーの年収アップのためにも欠かせないポイントです。

リピート客獲得のためには、例えば下記のような取り組みができるでしょう。

  • 施術に関する情報を整理し、カルテにきちんと記録しておく
  • ヘアスタイルや髪質、癖などを把握する
  • サロントークを記録しておき、次回のご来店時に役立てる
  • 再来店につながるアプローチを怠らない

再来店につながるアプローチとしては、例えば「お客様の誕生日にメッセージを送る」「毎月の営業日案内で連絡を取る」などを検討してみるのもよいでしょう。

新規のお客様を増やす

リピート客の維持のみでの年収アップは非現実的です。
また、開業直後に関しては基本的にはリピート客ゼロからのスタートになります。
そのため、独立した後はいかに新規のお客様を増やすかということを常に考えなくてはなりません。

新規のお客様を増やす方法は以下のとおりです。

  • チラシを配布する
  • 看板などを使用して近隣にお住まいの方にアピールする
  • SNSを効果的に活用する

SNSは無料で利用でき、工夫次第では集客にも直結するため、効率的な宣伝方法になる場合があります。
とくに画像・動画などを掲載すれば、視覚的にアプローチできます。
すでに高い人気を獲得している美容師のSNSも参考にしつつ、自身の店舗が軸に据えているコンセプトとターゲット層を意識してSNSを選び、アプローチをしましょう。

物販を始めてみる

物品の販売に力を入れれば、その分客単価が上がり、収入アップにつながる可能性が高まります。
お客様の悩みや、ヘアスタイル・カラーの維持に役立つアイテムを扱えば、サロントークを通じて購入してもらえる可能性もあります。
接客を通じて悩みを聞き出し、適したアイテムをすすめるトークスキルを磨いておくとともに、ターゲット層やニーズに応じて、シャンプー・トリートメント・コスメ・エステ用品など、サロンで扱うアイテムを用意しておきましょう。

まとめ

美容師は、独立することで年収(収入)アップを目指せます。
ただし、売り上げにおける経費の割合は業態により大きく異なる点に注意が必要です。
また店舗を構えるケースでは初期費用もかさみやすいため、まとまった額の開業資金を用意する必要があるでしょう。

ご紹介した独立後のポイントもおさえておき、自信を持って施術スキルを発揮し、年収アップを目指しましょう。

プロフィール画像

監修者齊藤 彩子

美容師

学校法人 国際共立学園 国際理容美容専門学校 美容科学科長

国際共立学園は創立69年の伝統ある学園で、職人の技術偏重主義に決して偏ることなく、あらゆる職業を通して、豊かな人間性を併せ持った職業人育成を目指している。『夢をかなえる 人づくり』を教育のテーマに、これまでの教育実績をさらに進化させ、社会に貢献できる人材を育成している。

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監修者秋田 繁樹

特定社会保険労務士

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研

2004年に秋田社会保険労務士事務所として開業スタートアップをはじめ中小企業の就業規則の作成や労働トラブルの予防や解決のためアドバイスを行っています。

執筆者佐藤