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美容師が腰痛になりやすい原因|痛みへの対処法や予防法も紹介
多くの美容師が抱える職業病と言っても過言ではないのが「腰痛」です。腰痛がひどくなると、仕事に支障が出るだけでなく、日常生活にもさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
そのため、日ごろから適切な予防法・対処法を心掛けておくことが大切です。
本記事では、美容師が腰痛になりやすい原因や腰痛の対処法・予防法についてわかりやすく解説します。
美容師が腰痛になりやすい原因
不自然な態勢を維持することが多い美容師の仕事には、腰痛になりやすいさまざまな原因がひそんでいると考えられます。実際に、腰痛に悩む美容師は多く、その悩みを解消するには根本的な原因を知っておくことが大切です。腰痛の原因としては以下のようなことが考えられます。
- 不自然な姿勢が続く
- 長時間立ちっぱなしの作業である
- 合わない靴を履いている
不自然な姿勢が続く
腰痛が生じる主な原因として、中腰や前かがみなどの不自然な姿勢で腰に負担がかかることが挙げられます。短時間であれば、しばらく休むことで症状は落ち着くことが多いものの、不自然な姿勢をとる時間が長くなるほど、腰にかかる負担は大きくなります。
美容師は、お客様のヘアカットやシャンプーをする際に不自然な姿勢をとることが多くなりがちです。特に、前かがみの姿勢が続くシャンプー時は、腰の筋肉に集中して疲労が溜まるため、痛みの原因になりやすいとされています。
長時間立ちっぱなしの作業である
長時間立ちっぱなしの姿勢を保つために、腰や背中の筋肉だけでなく、お尻周りや太もも、ふくらはぎなど、多くの筋肉が上半身の体重を支えています。このうち、骨盤を支える筋肉が凝り固まってしまったり、猫背や反り腰などの歪みがあったりすると、血流が悪化してしまいやがて腰痛があらわれます。
腰への負担は、姿勢の癖によってさらに大きくなる可能性もあるため、注意が必要です。営業時間中、ほとんどの時間を立ちっぱなしで過ごすことも、美容師が腰痛に悩まされる原因だと考えられます。
合わない靴を履いている
自分の足に合わない靴を履いて仕事をすることも、腰痛を引き起こす原因になります。美容師という職業柄、おしゃれであることは欠かせない要素です。そのため、見た目のおしゃれを優先にして、履きづらい靴で1日を過ごすといった美容師も多くいるようです。しかし、ファッション性を重視してクッション性の低い靴ばかりを選んでしまうと、足にかかる負担は軽減できません。
たとえローヒールやフラットのシューズであっても、サイズや形状などが自分の足にフィットしていることが大切です。基本的な要素を見直すだけでも、足にかかる負担は軽減できる可能性があります。合わない靴を履き続けてしまった結果、骨盤が歪んでしまい腰回りの筋肉へ大きな負担をかけてしまうことが、腰痛につながるケースは多くあります。
美容師の腰痛への対処法
腰痛をそのままにしておくと、どんどん症状が重くなる可能性があります。場合によっては、美容師を続けることが難しくなってしまうため、我慢のし過ぎは禁物です。自分の症状にあわせて、適切に対処できるようにしておきましょう。たとえば以下のような対処法が考えられます。
- 整形外科を受診する
- サポーターやコルセットを使う
整形外科を受診する
腰痛の症状が重くなってきた場合は、早めに整形外科を受診することをおすすめします。整形外科では、医師がレントゲンやMRIなどの画像検査を通じて腰痛の原因を特定し、現在の状態に適した治療を行ってくれます。腰痛の主な治療法は以下のとおりです。
- 薬物療法:痛みが強い場合には、鎮痛剤や抗炎症薬が処方されます。
- 神経ブロック療法:局所麻酔薬やステロイド剤を注射し、神経を伝う痛みの信号を遮断する治療法です。急性の腰痛や激しい痛みに対して即効性があり、短期間で痛みを緩和できます。
- リハビリ:痛みが和らいできた段階でリハビリを通じて筋力を回復させます。再発を防ぐため、リハビリ後も適度な運動を続けることが大切です。
- 手術療法:上記の治療法でも症状が改善しない場合、日常生活に大きな支障があるときは、手術が必要になるケースもあります。特に腰痛の原因がヘルニアなどの場合、問題部位を切除するなどの外科的処置をすることで症状の改善が期待できます。
サポーターやコルセットを使う
サポーターやコルセットを使用するのも、腰痛の緩和に効果的です。腰を少し動かすだけでも強い痛みを感じるときは、コルセットやサポーターを装着することで腰の動きが制限され、痛みを抑えられます。特にぎっくり腰など急性の腰痛が発生した際は、患部に負担をかけないよう固定することが大切です。
サポーターやコルセットを使用すると、外からの圧迫により腰の周りにある組織が支えられます。これにより、強い痛みが緩和されます。また、腰がしっかり固定されていると、精神的に安心できるのもメリットです。ただし、コルセットやサポーターを長期間常用すると、これらの装具を頼る癖がついてしまうため、筋力が低下する可能性もあります。
体を支える体幹の筋肉が弱くなると、腰痛が再発しやすくなるので、装具の使用はあくまで一時的な対策とし、根本的な改善を目指すことが大切です。締め付けが強すぎると血行不良を引き起こしかねないため、正しく装着するようにしましょう。
美容師におすすめの腰痛の予防法
腰痛を防止するために、日常のさまざまな場面で注意する必要があります。
正しい姿勢を意識する
立ち仕事で生じる腰の負担を少しでも軽減できるよう、正しい姿勢で立つことを意識しましょう。正しい姿勢とは、背骨が頭から腰にかけて自然なS字カーブを描いている状態を指します。正しい立ち姿勢をつくるには、あごを引いて頭が前に出ないよう意識しつつ、腹筋を軽く引き締めて体幹を安定させることがポイントです。
そのうえで、背筋をまっすぐ伸ばし、肩の力を抜いて左右の肩の高さをそろえます。重心を足の親指の付け根に置くようにすると、姿勢が安定しやすくなります。この姿勢を保つことで、腰にかかるストレスが軽減され、長時間の立ち仕事でも疲れにくくなります。
腰への負担を減らす
腰痛を防ぐためには、日々の動作の中で腰への負担を軽減することも大切です。特に重いものを持ち上げることはぎっくり腰につながることが多いので、なるべく腰に負担がかからない注意しましょう。重いものを持つ際は、ものをなるべくおなか側に抱き寄せるようにして、腰だけでなく全身を使って持ち上げるのがポイントです。
具体的な例として、床にあるものを腰や膝を伸ばしたまま持ち上げようとすると、腰に大きな負担がかかり、ぎっくり腰などの原因になります。そのため、中腰や前かがみの状態で持ち上げようとせず、一度膝を曲げてしゃがみこみ、足の力を利用して荷物を持ち上げるようにするとぎっくり腰のリスクを低減できます。
日ごろから腰椎にかかる圧力を減らし、腰を痛めるリスクを抑えられるようにしましょう。
足に合った靴を選ぶ
上述したように、腰痛を予防するためには足に合った靴を選ぶことも重要です。美容師は立ち仕事が中心となるため、足元の安定性が腰にかかる負担に直接影響します。そのため、靴を選ぶときは、デザインや価格だけでなく、自分の足とサイズ、形状に合っているか、クッション性は優れているかなど、機能面もチェックすることが大切です。
また、ヒールが高すぎる靴は、足首や膝、腰に大きな負担がかかるため、仕事用の靴としては避けた方が無難です。フラットな靴やヒールが低くて安定感のある靴を選びましょう。さらに、インソールを使用するのも効果的です。足裏の負担を分散させる効果があるインソールは、腰への負担軽減に役立ちます。
靴を購入するときは、実際に試着して歩いてみるようにしましょう。たとえサイズが合っていても、靴の形状や素材はさまざまなので、実際に履いてみなければその靴が自分の足にフィットするかどうかはわかりません。靴も仕事道具のひとつという認識で、慎重に選ぶことが大切です。
ストレッチをする
腰痛を予防するためのストレッチも役立ちます。ストレッチには、筋肉をほぐして血行を良くする効果が期待できます。休憩中やちょっとした仕事の合間や、1日の終わりの入浴後にストレッチを行い、仕事で凝り固まった筋肉や関節をほぐしてリセットしましょう。
参考までに、手軽に行えるストレッチを2つ紹介します。
立ったまま行うストレッチ
美容師の腰痛は中腰や前かがみになる時間が長いことで生じるケースが大半です。
このようなタイプで起こる腰痛を解消するには、上体を後ろに反らすストレッチが効果的です。具体的な方法は以下のとおりです。
- 両足を肩幅より少し広げ、両手を腰に当てます。
- 両手を支点に、できるだけ腰を後ろに反らします。この際、膝を曲げないように注意しましょう。
- 反らした状態を3秒ほどキープした後、最初の姿勢に戻ります。
- 上記のステップを2~3回ほど繰り返します。
このストレッチは、長い座り作業や重いものを持った後などに行っても効果的です。また、猫背などの姿勢改善も期待できます。椅子や道具を必要としないので、仕事の合間などに意識して行う癖をつけましょう。
椅子を使って行うストレッチ
猫背などの矯正に役立つストレッチです。椅子を使用しますが、休憩時間や仕事の前後など、短い時間を使って行えます。
- 椅子に座った状態で背中の力を抜いて猫背の姿勢をつくります。その状態を数秒キープしてください。
- 上半身を引き上げ、できるだけ腰がまっすぐに伸びた状態で座ります。
- 2の状態を数秒間維持した後、1に戻ってまた同じ動作を繰り返していきます。
腰痛を防ぐためには、上記の動作を10~15回程度繰り返すと効果的なため、朝・昼・晩と1日3回行うのがおすすめです。なお、2の状態はいわゆる「過矯正」の姿勢となり、体に負担がかかります。普段座る姿勢では、これよりも少し力を緩めるようにしましょう。
生活習慣を見直す
腰痛には、運動の頻度や睡眠の質など、日々の生活習慣も大きく影響します。そのため、腰痛予防をするには、生活習慣の見直しも必要です。具体的に意識したいポイントは以下のとおりです。
- 適度な運動をする
- ストレスを解消する
- 冷えを防ぐ
- 寝具を変えてみる
適度な運動をする
腰痛予防には、筋力をつけるための適度な運動が効果的です。特に、腰周りの筋肉を強化すると、腰にかかる負担を低減できます。先に紹介したストレッチはもちろん、ウォーキングやヨガなどの全身運動は積極的に取り入れるようにしましょう。
これらの運動は、体幹の安定性を高めてくれるだけでなく、血行を促進して体全体のコンディションを整える効果が期待できます。あくまで腰痛予防が目的なら激しい運動をする必要はありません。自分に合った無理のない範囲で継続できる運動法を見つけましょう。
ストレスを解消する
心身のストレスを解消することも腰痛予防につながります。仕事や日常生活でストレスが溜まると、体全体が緊張して肩や背中、腰などの凝りが発生し、腰痛が慢性化するリスクが高くなります。また、心の健康を守るためにも、ストレス解消は重要です。趣味を楽しんだり、リラックスできる時間を意識的につくったりして、ストレスを溜めないようにしましょう。
冷えを防ぐ
腰痛の原因のひとつに、冷えによる血行不良が挙げられます。そのため、体の冷えを防ぐことも腰痛予防に効果的です。冷えを防ぐためには、入浴はシャワーだけでなく、湯船にしっかりと浸かって体を温めるようにしましょう。また、寒い季節には重ね着をするなど、服装に気を配ることも大切です。夏場も冷房で冷えてしまうことがあるため、冷房が効いた屋内の温度を想定した服装を選ぶようにしましょう。
寝具を変えてみる
就寝中や起床時に腰の痛みを強く感じるようなら、布団やベッドなどの寝具が体に合っていない可能性があります。このようなケースの場合、腰に負担をかけないマットレスなどを選ぶことで、腰痛を予防することも可能です。寝具選びのポイントはクッション性です。寝具が硬すぎると腰が浮き、逆に柔らかすぎると腰が沈み込みすぎて体に負担がかかります。そのため、中程度の硬さで、体の重みを適度に分散させる寝具を選ぶと睡眠の質が向上します。
まとめ
美容師の仕事は、長時間の立ち仕事や前かがみの姿勢が多いなど、腰痛が慢性化するケースも少なくありません。痛みはストレスの原因にもなりやすいため、腰痛を予防することや、痛みを抑えるためのノウハウを知っておくと安心です。正しい姿勢を維持することや足に合った靴選び、腰への負担を減らす動作の工夫、そして生活習慣の見直しが腰痛予防に効果的です。
また、日ごろから適度な運動やストレス解消、冷えの防止、寝具の改善など、腰痛を防ぐための対策法は多々あります。これらの対策を日々の生活に取り入れることで、腰痛のリスクを大幅に減らし、快適に仕事に取り組めるようになるはずです。腰痛に悩む美容師の方々は、ぜひこの記事で紹介した方法を実践してみてください。
監修者:齊藤 彩子
美容師
学校法人 国際共立学園 国際理容美容専門学校 美容科学科長
国際共立学園は創立69年の伝統ある学園で、職人の技術偏重主義に決して偏ることなく、あらゆる職業を通して、豊かな人間性を併せ持った職業人育成を目指している。『夢をかなえる 人づくり』を教育のテーマに、これまでの教育実績をさらに進化させ、社会に貢献できる人材を育成している。