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美容師の離職率が高い理由は?続けられる人の特徴やサロン選びのポイントを紹介

美容師は離職率が高い仕事であり、就職から3年以内に半数が辞めるというデータもあります。
なぜ離職率が高い傾向にあるのでしょうか。

本記事では美容師の離職率が高い理由や美容師の資格を活かす方法、自分に合ったサロン選びのポイントなどを解説します。

美容師の離職率

美容師の女性

美容師は、離職率が高い職業であると評価されています。実際に就職から数年で辞めてしまう人が多い傾向にあり、さまざまなデータにも表れています。
一般社団法人日本美容サロン協議会の「美容師制度の在り方」によると、美容師の離職率について以下のように記されています。

  • 就職1年までの離職率:30%
  • 就職3年までの離職率:50%

就職して3年経つ頃には、約半数の美容師が職場を離れていることがわかります。

また、厚生労働省の「美容師制度の概要について」によると、免許登録者数(累計)が135万人であるのに対し、美容師に従事するのは54.2万人とされています。
つまり、美容師免許を取得したとしても、美容師として働き続ける人が多くはないことがうかがえます。

※引用:一般社団法人日本美容サロン協議会「美容師制度の在り方」
※引用:厚生労働省「美容師制度の概要について」

美容師の離職率が高い理由

悩んでいる女性

美容師免許を取得するには、指定の養成学校(美容専門学校など)で知識を学び、国家試験に合格する必要があります。
知識や技術を積み、努力して免許を取得したにもかかわらず、多くの人が数年で辞めてしまうには、以下のような理由が考えられます。

  • 給料が安く福利厚生が不十分だと感じる場合がある
  • 1日の労働時間が長い傾向がある
  • 接客で気疲れする場合がある
  • 職場の人間関係が難しい場合がある
  • 下積み期間が長く将来が不安になることがある
  • 体力が必要である

それぞれの理由について、データ等を交えながら詳しくみていきます。

給料が安く福利厚生が不十分だと感じる場合がある

厚生労働省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模10人以上のサロンに勤務する美容師の平均年収は約330万円(※1)となっています。
また、就職後は通常、アシスタントからスタートしますが、その平均給与は約16万円(※2)と低い傾向にあります。

給与が安い一方で、仕事柄おしゃれに気を使ったり、ハサミなどの道具や練習用のウィッグを自腹で購入したりする必要があり出費がかさみがちとなります。
その結果、経済的に厳しくなり辞めてしまう人がいます。

ただし、平均年収はあくまでも統計データであり、実情は勤務先や役職などで大きく異なります。
独立して成功し、高収入を得ている方もいるため、必ずしも「美容師=年収が低い」に当てはまるわけではありません。

※1 引用:厚生労働省「賃金構造基本統計調査 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」
※2 引用:一般社団法人日本美容サロン協議会「美容師制度の在り方」

美容師の給料や年収についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

▷「美容師の給料・年収はどれくらい?アシスタントから店長まで各ランクの給料など徹底比較【美容師監修】」

1日の労働時間が長い傾向がある

ヘアサロンは営業時間が長く、オープン準備から閉店作業まで含めると労働時間が10時間を超えることも少なくありません。
さらに、開店前や終業後に練習して技術を磨くなど拘束時間が12~14時間ほどになることもあります。

労働時間もサロンによって大きく異なるため一概にはいえませんが、このようなハードな勤務体系が不満や疲労につながり、離職者が増加していると考えられます。

接客で気疲れする場合がある

ヘアサロンはお客様と接する時間が長く、美容師は常に気を張っている必要があります。
接客業であるゆえに、自分自身がイライラしていたり体調が悪かったりするときでもお客様には丁寧に対応しなくてなりません。
そのため美容師の仕事自体は好きでも、接客で気疲れして辞めるケースがあります。

また、施術中はお客様に積極的に話しかけて楽しませたり、どのようなヘアスタイルが好みなのか、最後にセットする必要はあるかといった情報を引き出したりする必要があります。
お客様の満足度に関わるため欠かせないものですが、このような会話が苦手だと感じる美容師もいるようです。

職場の人間関係が難しい場合がある

ヘアサロンは1店舗あたりの従業員数が少なく、人間関係が密になりがちです。
そのなかで先輩や上司から技術や接客について学ぶので、とくに下積み時代は上下関係での悩みが生じやすい傾向にあります。

加えて、毎日長時間サロンにいるため、同僚や後輩との関係に問題を抱えることもあるかもしれません。
このような人間関係のつまずきによって離職に至ることがあります。

下積み期間が長く将来が不安になることがある

美容師として活躍するために就職した先に待っているのは、アシスタントとしての下積み期間です。
下積み期間はサロンによって異なりますが目安は2~4年ほどで、就職から3年くらいでスタイリストとしてデビューするのが一般的です。
それまでは掃除や洗濯、受付、シャンプーやドライヤーなどの業務を担当します。

これらの業務は美容師にとって非常に重要なものですが、給与が安い傾向にあることが不満だったり、イメージしていた美容師像とのギャップを感じてしまったりすることから将来に不安を感じて辞めてしまう方もいるようです。

体力が必要である

おしゃれで華やかにみえる美容師ですが、実際は1日中立ちっぱなしであることが多く体力勝負な面があります。
シャンプーなどの中腰での作業も多く、体力の限界や腰痛の悪化で辞めてしまう方も少なくありません。

また、長時間の水仕事やヘアカラーなどの薬剤が合わず、ひどい手荒れを起こして続けられなくなる場合もあります。

美容師の資格を活かして活躍する方法

美容師免許を持ちヘアメイクアーティストとして働く男性

金銭面・体力面の問題や人間関係の悩みなどで、「美容師を辞めたい」と思うこともあるかもしれません。
しかし万が一現在のサロンが合わなかったとしても、美容師免許を活かして他の場所・方法で活躍できる可能性があります。
具体的には以下のような可能性が考えられます。

  • 別のサロンに転職する
  • 免許を活かせる仕事に転職する
  • 正社員以外で働く
  • 独立してサロンを持つ

それぞれについて、詳しく紹介します。

別のサロンに転職する

「今のサロンで働き続けるのはつらい」と感じているのなら、別のサロンに転職することを検討してみましょう。
美容師の待遇やサロン内の雰囲気は、サロンによって大きく異なるからです。

もし今抱えている不満や悩みが自分の努力で解決できるものである場合は、別のサロンに移っても再び同じような不満や悩みを抱える可能性が高いので、安易な転職は向かないかもしれません。
しかし「サロン内の人間関係が悪い」「きちんと指導してくれる人がいない」などの問題は転職によって解決できる可能性があります。

免許を活かせる仕事に転職する

ヘアメイクアップアーティストやスパニスト、アイリストなど、美容師免許を活かせる別の職種に転職するのもひとつの方法です。
美容師免許が不要な場合もありますが、免許があることによって転職で有利になったり信頼を得やすくなったりすることもあります。

「美容師の仕事は好きだけどサロン勤めが辛い」という方には、訪問美容師もおすすめです。
訪問美容師とは、病気や障害などが理由で美容室に通えない方の自宅や介護施設などに出張して、カットやカラーなどの施術を行う仕事のことです。
店舗を持たず、いろいろな場所に出向いて施術するので、同じ場所で働くスタイルが合わない方に向いています。
超高齢社会の最中にある日本において、今後需要が拡大する可能性が高いのもメリットです。

正社員以外で働く

「体力的にきつい」「フルタイムでの勤務が難しい」などの理由で離職を考えているなら、派遣やアルバイト、パート、業務委託などの雇用形態で働くことも考えてみましょう。
正社員以外の働き方であれば、勤務日数や勤務時間の選択肢が増えるので、自分の都合に合わせた働き方ができます。

正社員登用制度があるサロンなら、まずパートやアルバイトとして働き、自分に合うサロンかどうかを見極めてから正社員になることもできます。

独立してサロンを持つ

美容師として十分な経験があり、「収入を増やしたい」「もっと自由に働きたい」と考えているのなら独立開業の道もあります。

独立開業する場合、美容師としての技術はもちろん開業・運営資金や経営に関する知識も必要です。
また、集客できなければ収入がゼロになるリスクもありますが、上手くいけば今よりも収入を増やせます。

独立するタイミングにきまりはありませんが、施術からサロン運営まですべてを自分でこなす必要があるため、少なくとも10年は実務経験を積んでおいた方がよいでしょう。

自分に合ったサロン選びのポイント

ヘアサロンの内装

別のサロンへの転職を考える際には、「自分の希望や適性に合ったサロンなのか」をきちんと判断することが大切です。
自分に合ったサロン選びで押さえておきたいポイントは、以下の2点です。

  • 何を求めているかを自己分析してみる
  • 自己分析の結果を踏まえて求人をチェックする

それぞれのポイントについて、詳しくみていきます。

何を求めているかを自己分析してみる

美容師に限らず、転職するときには自己分析から始めることが重要です。
自分の強み・弱みや希望することがわからないまま転職活動を進めても、自分に合う転職先は見つかりにくいものです。

自己分析の方法はさまざまですが、下記の手順を参考にしてみてください。

  1. 学生時代から現在に至るまでの自分の歴史を書き出す
  2. 起こった出来事に対して自分が感じたことや悩んだこと、解決策、どのような学びを得たかなどを書き出す
  3. 書き出した内容を分析する

たとえば「美容師の国家試験1回目で、緊張しすぎて実技が上手くいかず落ちてしまった」という出来事があったとします。
これに対して「次の試験では緊張しすぎないように、毎日何時間も練習して自信をつけた」ことでクリアしたと書き出したとします。
分析してみると、「弱みは緊張しやすく実力が発揮できない場合があること。強みは粘り強く努力できること」ということがみえてきます。

このように自分に起きた出来事とその後の気持ちや行動を詳細に洗い出していくと、自分の性格(強み・弱み)や希望の働き方、将来像などがまとめられます。
理想の条件が明確化されることで、自分に合ったサロン選びができるようになります。

求人をチェックする

自己分析が完了したら、理想の条件をもとに求人をチェックします。とくにチェックしておきたいのが、下記の6つのポイントです。

  • 給与

    固定給のほか歩合制(歩合率)や昇給の有無、社会保険(健康保険や厚生年金)に入れるかを確認します。

  • 福利厚生
    家賃補助や研修費、特別休暇などの福利厚生が充実していることは働きやすさにつながります。
    自分自身が求めるものと合致しているかを確認します。

  • 年間休日数
    労働基準法では、毎週1日または4週を通じて4日の休日を与えることなっています。
    一方で例外を除き一週間の労働時間は40時間であるため、多くの企業では年間104日の休日を与えることで法令を遵守しています。

  • 勤務時間
    オープンからクローズまで勤務するのか、またはシフト制なのか、さらには時短勤務が選べるのかなどどのような働き方ができるのかをチェックします。

  • 雰囲気
    どのような先輩、同僚や後輩がいるのかといった点から、技術力やサービスのクオリティ、取り入れている美容機器などが自分に合っているのかを見極めます。

  • 規模
    アットホームな雰囲気のサロンではシャンプーやカットといったすべての施術を担当しますが、規模が大きいサロンだとそれぞれの作業を分業するかたちを採用していることが多いです。自分の強みが活かせて、希望する業務が叶うサロンなのかを確認しておきます。

いずれかひとつのポイントだけにこだわると、希望に見合った求人が見つかりにくいことも考えられるため、それぞれのポイントをチェックしながら総合的に判断することが重要です。

まとめ

美容師は就職後1年で30%、3年で50%と離職率が高い仕事です。その理由は給料の低さや勤務体系のハードさ、下積み期間の長さなどです。
ただし、これらの問題は転職すれば解決できる可能性もあります。

せっかく取得した美容師免許を無駄にしないためにも、美容師業界から遠ざかるのではなく、転職を検討してみましょう。
どうしても美容師を続けるのが難しい場合は、美容師免許を活かせる別の職種に転職する方法もあります。

しっかり自己分析をして、自分がどんな働き方を希望しているのか、将来どうなりたいのかを明確にしたうえで求人をチェックしてみてください。

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監修者岡田 真太郎

美容師

学校法人 国際共立学園 国際理容美容専門学校 美容科 教務

国際共立学園は創立69年の伝統ある学園で、職人の技術偏重主義に決して偏ることなく、あらゆる職業を通して、豊かな人間性を併せ持った職業人育成を目指している。『夢をかなえる 人づくり』を教育のテーマに、これまでの教育実績をさらに進化させ、社会に貢献できる人材を育成している。

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監修者秋田 繁樹

特定社会保険労務士

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研

2004年に秋田社会保険労務士事務所として開業スタートアップをはじめ中小企業の就業規則の作成や労働トラブルの予防や解決のためアドバイスを行っています。

執筆者yue26