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理容師免許の取得方法は?理容師国家試験の内容や合格へのコツも解説【理容師監修】

「理容師になりたいけど、何から始めればいいかわからない」
「理容師国家試験に合格するためには何が必要?」
このような悩みを抱えていませんか?

理容師になるためには、国家試験に合格して理容師免許を取得しなければいけません
免許取得までの大まかな流れとしては、以下のとおりです。

  1. 国家試験の受験資格を得るために養成学校に通う
  2. 国家試験(実技と筆記)に合格する
  3. 免許申請の手続きをする

本記事では、理容師免許を取得するまでの流れや必要な項目を詳しく解説します。
国家試験の合格に向けた対策やポイントもご紹介しているため、理容師を目指している方はぜひ参考にしてください。

理容師に必要な免許とは?|理容師は国家試験への合格が必要!

施術をしている理容師の男性

理容師になるためには、理容師法に基づいた厚生労働大臣または都道府県知事指定の理容師養成施設を卒業し、理容師の国家試験に合格しなければいけません。
国家試験に合格して、理容師の免許登録申請を行うことで、理容師免許証が交付されます

理容師国家試験とは?試験の概要を解説

理容師国家試験には、実技試験と筆記試験の2つの試験があります。

受験費用は、実技試験・筆記試験それぞれ単独受験の場合、各12,500円です。実技試験と筆記試験の両方を受験する場合は、25,000円の受験料がかかります
※2024年3月時点

国家試験は、春と秋の時期に年に2回実施され、それぞれの受験時期は以下のとおりです。

  • 春の時期:2月上旬に実技試験で、3月上旬に筆記試験
  • 秋の時期:8月上旬に実技試験で、9月上旬に筆記試験

実技試験と筆記試験を受験して、どちらか一方のみ合格した場合は、次回の試験に限り、合格した試験の方が免除される仕組みとなっています。

理容師国家試験の受験資格を得るには?

理容師の国家試験を受験する資格を得るためには、厚生労働大臣または都道府県知事指定の養成学校に通う必要があります。

養成学校では「昼間課程」「夜間課程」「通信課程」の3つのパターンがあり、それぞれで定められた期間で必要な学科や実習などを修了しなければいけません。

1.昼間課程

昼間課程では、2年以上の期間で、理容師になるために必要な科目を修了する必要があります
ただし、平成10年3月31日以前に昼間課程を修了して1年以上の実務経験がある方は、1年以上の昼間課程の学習で受験資格を得られます。

衛生管理や保健、文化論などを学ぶ必修科目と、外国語やエステティック技術などを学ぶ選択科目があり、それぞれで必要な単位の取得が必須です。

また、昼間課程は決まったスケジュールで学校でしっかりと授業や実践練習ができるため、長く時間をかけて十分な国家試験対策を行いたいという方に向いているでしょう。

2.夜間課程

夜間課程では、昼間課程と同様に養成学校で2年以上学ばなければいけません。
ただし、平成10年3月31日以前に夜間課程を修了して1年以上の実務経験がある方は、1年4ヶ月以上の夜間課程の学習で受験資格を得られます。

夜間課程も必修科目と選択科目の両方を習得することが一般的です。昼間に他の仕事をしている方は、夜間課程が向いているでしょう

3.通信課程

通信課程の場合は、3年以上の学習期間が必要です。
ただし、平成10年3月31日以前に通信課程を修了して1年以上の実務経験がある方は、2年以上の通信課程の学習で受験資格を得られます。

また、通信課程の場合は、養成学校で600時間以上の対面授業の受講が必須です。理容室で勤務しながら受講する方は、通常の学習時間の半分である300時間以上のスクーリング授業が必要となります。

通信課程では、8つの必修科目と5つの選択科目を自身で学習しながら、課題を提出して添削指導を受けなければいけません。対面の授業では、自習だけでは身につけることが難しい実技のスキル強化を目的に行われます。

通信課程が向いている方は、夜間課程と同様に昼間に時間が作れない方や、自分のペースで学習したい方などがあげられます。

理容師国家試験の合格率は?

令和元年〜令和5年までの理容師国家試験の合格率は以下のとおりです。

受験者数

合格者数

合格率

令和元年

第40回

819人

532人

65.0%

第41回

1,285人

972人

75.6%

令和2年

第42回

866人

613人

70.8%

第43回

1,188人

992人

83.5%

令和3年

第44回

752人

482人

64.1%

第45回

1,289人

1,096人

85.0%

令和4年

第46回

770人

549人

71.3%

第47回

1,305人

1,048人

80.3%

令和5年

第48回

883人

653人

74.0%

第49回

1,303人

1,067人

81.9%

※参照:公益財団法人理容師美容師試験研修センター「過去の試験実施状況」

受験者数も試験ごとに異なるため、一概にはいえませんが、令和元年〜令和5年での理容師国家試験の合格率は60%〜80%程度で推移しているようです。

理容師国家試験の試験内容とは?

理容師が施術をしている手元の様子

理容師国家試験は、実技試験と筆記試験に分かれ、それぞれの審査基準を満たさなければいけません。
実技試験と筆記試験も出題される内容は、公益財団法人理容師美容師試験研修センターのホームページに掲載されているため、内容を確認して試験対策を行いましょう。

実技試験の試験内容

実技試験は、「衛生上の取扱試験」と「基礎的技術試験」の2つがあります。それぞれの審査項目については以下のとおりです。

▽衛生上の取扱試験

審査項目

第1部
準備時間前の審査

  • モデルウイッグに対する禁止行為

第2部
身体及び服装等の審査

  • 頭髪の作業適性及び衛生状態
  • 手指の清潔保持
  • 爪の清潔保持
  • 作業衣の着用状態
  • 衣服の作業適性
  • マスクの着用
  • 履物の作業適性
  • 装飾品等の装着
  • 手指消毒

第3部
用具類の審査

  • 衛生用具類の有無
  • 用具類の表示
  • 用具類の衛生状態
  • 用具類の収納方法
  • 個人特定情報の表示

第4部 
課題作成作業時間中に実施する審査

  • 落下用具類の消毒・使用許可
  • モデルウイッグの取扱い
  • 出血応急処置
  • 用具類の貸借
  • 追加取り出し
  • 迷惑行為
  • 衛生面に配慮した作業姿勢
  • 作業の指示違反

第5部
作業終了後に実施する審査

  • 汚物入への収納状況
  • 作業終了後の用具類収納状況
  • 出血事故の処理状況

▽基礎的技術試験

試験項目

審査項目

カッティング

  • ミディアムカット
  • セニングカット

シェービングおよび顔面処理

  • ラザーリング
  • シェービング
  • 顔面処置

整髪

  • 整髪
  • 分髪線の位置と形状

仕上がり状態

  • カッティング
  • シェービング
  • 整髪

※参照:公益財団法人理容師美容師試験研修センター「衛生実技試験審査マニュアル」「理容師実技試験審査マニュアル
※2024年3月時点

衛生上の取扱試験は、身だしなみ・手指や道具の消毒・使用する道具の取り扱いなどの25項目が審査対象です。

基礎的技術試験は、カッティング・シェービング・整髪・仕上がりの状態などの10項目から審査され、カッティング25分・シェービング15分・整髪5分の制限時間が設けられています。

試験地は、秋田県・岐阜県・滋賀県・香川県・長崎県・大分県・宮崎県を除く都道府県で受けることが可能です。
※参照:公益財団法人理容師美容師試験研修センター「第49回理容師国家試験のデータ

実技試験の合格基準

実技試験は、減点方式で採点されます。
衛生上の取扱試験と基礎的技術試験の合格基準は以下のとおりです。

  • 衛生上の取扱試験:減点が20点以下
  • 基礎的技術試験:減点が40点以下

どちらも減点基準に満たない場合は、不合格となってしまいます。

筆記試験の試験内容

筆記試験は、5分野7科目で出題数は全部で55問となります。
試験科目や重点項目、それぞれの問題数の割合は以下のとおりです。

▽関係法規・制度及び運営管理

試験科目

問題数

関係法規・制度

  • 理(美)容師法
  • 生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律
  • 保健所の役割
  • 衛生行政
  • 政策金融の意義と仕組み
  • 消費者保護の仕組み

10問

運営管理

  • 理美容業の経営環境
  • 資金管理 
  • 年金保険
  • 医療・介護保険
  • 労働関係法規

▽衛生管理

試験科目

問題数

  • 公衆衛生・環境衛生
  • 感染症
  • 衛生管理技術

15問

▽保健

試験科目

問題数

  • 人体の構造及び機能
  • 皮膚科学

10問

▽香粧品化学

試験科目

問題数

従来の理・美容の物理化学のうちの香粧品化学

5問

▽文化論及び理(美)容技術理論

試験科目

問題数

文化論

  • 日本のファッション文化史
  • 礼装の種類

15問

理・美容技術理論

  • 理・美容技術理論
  • まつ毛エクステンション(美容のみ)
  • 理・美容器具
  • 色彩及びデザイン

※公益財団法人理容師美容師試験研修センター「新制度による筆記試験実施要領」を参照して筆者作成
※2024年3月時点

筆記試験は、マークシート方式で解答時間は1時間40分となっています。

試験地は、北海道・岩手県・宮城県・群馬県・千葉県・東京都・神奈川県・石川県・愛知県・大阪府・岡山県・広島県・愛媛県・福岡県・鹿児島県・沖縄県の16の都道府県で実施されています。
※参照:公益財団法人理容師美容師試験研修センター「第49回理容師国家試験のデータ

筆記試験の合格基準

筆記試験の合格基準は60%以上で、55問中33問以上の正答率が必要です。ただし、7科目の中でどれか1科目でも無得点だった場合は、不合格となってしまいます

例えば、香粧品化学が0点、ほかの6科目がすべて満点で正答率が60%以上であっても、不合格ということになります。

理容師国家試験に合格した後に必要な免許申請手続きとは

理容師国家試験に合格した後は、理容師免許証の交付を受けるために、理容師の免許登録申請を行わなければいけません。必要書類を理容師美容師試験研修センターへ直接提出または送付し、申請後およそ2〜4週間後に免許証が交付されます。

理容師免許申請(名簿への登録)の流れ

理容師の免許を申請する際は、理容師美容師試験研修センターが管理している名簿に「本籍地都道府県名」「氏名」「性別」「生年月日」などを登録する必要があります。

もし、免許証の交付を受けずに理容師としての仕事をしてしまうと、無免許営業とみなされ、30万円以下の罰金または免許の付与権限がなくなる可能性があるため、注意しましょう。

理容師免許申請に必要な書類や送付先は?

試験合格後に初めて免許申請を行う際に、必要な書類や送付先などの詳細は以下のとおりです。

必要な書類

部数

送付先

免許申請書

1部

公益財団法人 理容師美容師試験研修センター

〒151-8602
東京都渋谷区笹塚2-1-6JMFビル笹塚01(8F)



戸籍謄本または本籍の記載のある住民票(6ヶ月以内に発行されたもの)

1部

精神疾患の有無を診断した医師の診断書(3ヶ月以内に発行されたもの)

1部

収入印紙(登録免許税)9,000円

1部

登録事務手数料5,200円(非課税)

1部

免許証に旧姓や通称名の併記を希望する場合は、併記する氏名が記載された戸籍謄本または住民票(6ヶ月以内に発行されたもの)を用意する

1部

※参照:公益財団法人理容師美容師試験研修センター「試験合格後、初めて免許を取得するときの申請」
※2024年3月時点

これらの提出書類に不備があると、再度提出の手間がかかるため、提出する際は、必ずチェックするようにしましょう。

理容師国家試験合格に向けた対策|合格に向けた勉強・練習のコツを紹介

理容師の道具

理容師国家試験に合格するためには、養成学校で知識や技術を習得しながら、実技試験や筆記試験の対策を自ら行わなければいけません。試験合格のために、ポイントを押さえて効率的に学習することが重要です。

筆記試験の過去問を繰り返し解く

筆記試験の合格を目指すためには、過去問を使用した勉強法が効果的です。試験では過去問と同じような問題が出題される可能性が高いため、過去問を繰り返し解くことで、出題傾向や自分の苦手な部分が把握できます。

過去問自体は、公益財団法人理容師美容師試験研修センターのホームページから過去29回分が閲覧可能です。

ただし、平成29年の3月31日の理容師法施行規則等の一部を改正する省令に基づき、令和元年に実施された第41回の筆記試験から5分野7科目に変更となっています。問題数は50問が55問になり、法改正前の過去問のみだと新しく追加された範囲の学習ができません。

法改正前の過去問も参考にしつつ、最新の情報も合わせて学習をするように心がけましょう。

時間を計りながら実技の練習を行う

実技試験では、制限時間の中でカッティング・シェービング・整髪を仕上げなければいけないため、実技試験の練習の際は時間を計りながら行う練習が効果的です。普段から時間の意識や本番を想定して繰り返し練習することで、本番で実力を発揮できるでしょう。

また、実技試験は減点方式で採点されるため、採点基準や自分の苦手な部分を把握しておけば、減点を最小限に留められます。

時には養成学校の先生や先輩、同期などに自分の技術を客観視してもらい、癖や改善ポイントを把握できれば、より自身のスキル向上につなげられます。

道具の使用方法や衛生面に気を付ける癖をつける

実技試験では、技術的な面のほかに試験当日の身だしなみや道具の扱い方なども採点基準となります

公益財団法人理容師美容師試験研修センターが開示している「衛生実技試験審査マニュアル」を確認し、25項目の遵守事項・ポイント・審査対象の部分を理解しておくことが重要です。

特に使用する道具の扱い方は、試験当日だけ意識をして整えようとしてもうまくいく可能性は低いです。普段の練習の時から、技術面と同様に採点基準を把握し、減点されないように意識しておけば、本番でも練習の成果を出せるでしょう。

まとめ

理容師になるためには、厚生労働大臣が指定する養成学校を卒業し、実技試験と筆記試験の2つの国家試験に合格する必要があります。
養成学校での学習や技術の練習にくわえて、自身でも普段から合格基準を意識したり、繰り返し苦手な部分を練習したりすることで、本番で実力を発揮できるでしょう。

免許を取得した後は、理容室や美容室、シェービングサロンなどに就職し、スキルを磨いていく流れが一般的とされています。最近では、理容室に足を運べない方のために、病院や福祉施設などでも理容師の需要は高まっているようです。

人との関わりが好きな方や、ヘアカットやシェービングなどを通して喜んでもらいたいと思う方にとって、理容師は適した職業といえます。

プロフィール画像

監修者池田 昌央

理容師

学校法人 国際共立学園 国際理容美容専門学校 理容科学科長

国際共立学園は創立69年の伝統ある学園で、職人の技術偏重主義に決して偏ることなく、あらゆる職業を通して、豊かな人間性を併せ持った職業人育成を目指している。『夢をかなえる 人づくり』を教育のテーマに、これまでの教育実績をさらに進化させ、社会に貢献できる人材を育成している。

執筆者下舘 湧太