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理容師と美容師の違いは?理容師の仕事内容や資格取得、ダブルライセンスのメリットも徹底解説
美容関連の仕事に携わりたい方の中には、理容師や美容師を選択肢に入れている方もいることでしょう。理容師免許・美容師免許は国家資格であり、手に職をつけられる堅実な職業です。
この記事は、理容師・美容師の仕事内容や国家試験の違い、ダブルライセンスのメリットについて解説します。理容師になるために必要なステップについてもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
理容師と美容師の違い
理容師も美容師も、どちらも髪を切る仕事ですが、仕事の内容や国家試験の内容に違いがあります。ここでは理容師と美容師の違いについて解説します。
そもそも理容師とは?
理容師とは、理容師法に基づき理容師免許を取得した理容従事者のことを指します。
理容は理容師法において「頭髪の刈込、顔そり等の方法により容姿を整えること」と定義されており、主に男性向けの美容サービスを提供します。具体的な業務内容は、髪のカットや顔剃り・襟剃り(シェービング)、パーマ、カラーリングなどです。そのほか、女性向けシェービングを提供することもあります。
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「理容師法(昭和22年12月法律第234号)
1 定義
理容師は「理容を業とする者」をいい、理容師法に基づき厚生労働大臣の免許を得なければならない。理容師の免許を持たないものは理容を業として行うことはできない。
理容とは「頭髪の刈込、顔そり等の方法により容姿を整えること」とされており、刈り込み等の行為に伴う理容行為の一環として男子に対し仕上げを目的とするコールドパーマネントウェーブを行うことは理容の範囲に含まれる。染毛も理容・美容行為に含まれる。業とは反復継続の意思をもって行うことで、有料・無料は問わない。
また、理容師が理容を行う場合には器具やタオル等を清潔に保たねばならない。
理容室では髪を短くカットすることが多いため、作業はミリ単位となります。
限られた時間の中で、お客様とコミュニケーションをとりながらニーズを把握し、満足の行く仕上がりを目指します。1人ひとりのお客様と真摯に向き合い、高い技術力を提供することでお客様との信頼関係が生まれ、常連客を獲得することができます。
従来は、理容室よりも美容室のほうがおしゃれなイメージがあったかもしれません。しかし近年では、個性的で洗練された理容室も増えてきており、理容師に対するイメージも変わってきています。現代では男性の美容意識が高まり、髪型やカラーリングなど流行が目まぐるしく変化しているため、流行に合わせた施術ができる理容師への需要は年々高まりを見せています。
理容師と美容師はなにが違うの?
理容師と美容師は、それぞれ国家資格である理容師免許・美容師免許を取得した人を指します。
一見同じような業務内容に思える2つの職業ですが、実は法律によって明確に区別されています。ここでは理容法・美容法に基づき、それぞれができることできないことに注目しながら解説します。
理容師法と美容師法の違い
1947年(昭和22年)施行の理容師法と1957年(昭和32年)施行の美容師法では、それぞれの業務範囲について明記しています。従来は顧客の性別に着目して業務範囲を定め、理容師は主に男性を、美容師は主に女性を顧客とする通知がありましたが、平成27年(2015年)に廃止されています。
また理容師法および美容師法では、業務を行う場所としての理容所・美容所に関する衛生や構造についても言及しています。理容師は理容所以外の場所で業務を行ってはならず、美容師もまた美容所以外の場所で業務を行うことは禁止されています。
つまり同じ髪を扱う職業であっても、理容師が美容所で業務を行うことは認められておらず、美容師もまた理容所での業務はできません。
理容師と美容師がそれぞれできること
前述の通り、理容師と美容師の業務内容は法律が定めた範囲内に限られます。具体的には以下のような業務内容が挙げられます。
- 理容師の業務範囲:パーマ・カット・顔剃り(ひげ剃りを含む)
- 美容師の業務範囲:パーマ・カット・ヘアセット・メイク・まつ毛エクステンション・まつ毛パーマ
理容師は、男性顧客をメインとする業務内容で、カミソリを使った顔剃りが行えるのが特徴です。理容法改定以前はカットをともなわないパーマの施術も禁止されていましたが、2015年(平成27年)に出された通知でパーマに関する限定項目は撤廃されました。
近年では、女性へのシェービングをメニューとして提供する理容室も出てきました。理容室の一角で施術する場合もありますし、女性専用のシェービングサロンは年々増加しています。いずれも理容師が施術するのが共通点です。理容師は男性専門というイメージが、多少変化しています。
美容師は、お客様の要望や髪の状態を確認しながら、カットやカラーリング、さらにはヘアセットやヘアケア、メイクなどの美容に関する施術を行えるのが特徴です。髪の毛だけでなく、まつ毛エクステンションなどまつ毛への施術も、美容師だけが行える美容行為であり、まつ毛サロンなどの施設は美容所として届け出なければなりません。
美容師によるシェービングは認められておりません。化粧の一環として眉毛を整える程度であれば認められますが、顔全体へのシェービングを行えるのは理容師だけです。
国家試験の内容も異なる
理容師や美容師になるためには、国家試験の合格が必須です。ここからはそれぞれの国家試験の内容についてご紹介します。
受験資格の違いは?
理容師および美容師の国家試験を受験するためには、受験資格をクリアしていることが条件となります。理容師美容師試験研修センターによると、以下のような条件が明記されています。
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理容師国家試験及び美容師国家試験
受験資格1 理容師・美容師養成施設で、次の課程を修了した人
《平成10年4月1日以降に入学した人》
昼間課程 2年以上
夜間課程 2年以上
通信課程 3年以上2 理容師・美容師養成施設で、次の課程を修了した後、1年以上の実地習練を経た人
《平成10年3月31日以前に入学した人》
昼間課程 1年以上
夜間課程 1年4カ月以上
通信課程 2年以上※平成14年3月31日までに1年以上の実地習練が終了していない人については、受験資格はありません。
理容師・美容師の国家試験受験において、受験資格に違いはありません。
受験科目の違いは?
理容師・美容師どちらの国家試験も、実技試験と筆記試験が実施されます。受験科目は以下の通りです。
- 実技試験
- 理容師:理容実技(カッティング、シェービング、顔面処置、整髪、衛生上の取扱い)
- 美容師:美容実技(カッティング、オールウェーブセッティング、衛生上の取扱い)
- 筆記試験:関連法規・制度および運営管理、衛生管理、保健、香粧品化学、文化論および理容/美容技術理論
実技試験は業務内容に応じて異なるものの、筆記試験の内容は、技術理論以外は同じ課目となります。
試験には一部免除規定があり、試験で筆記試験もしくは実技試験のどちらかを合格している場合は申請により次回試験において合格済み試験が免除されます。また、理容師資格・美容師資格をすでに取得している場合は、申請により筆記試験内の理容技術理論・美容技術理論を除く部分が免除されます。
理容師の国家試験の合格率はどれくらい?
理容師美容師試験センター発表によると、2023年(令和5年)度の第49回理容師国家試験は受験者数1,033人対し、合格率は81.9%となっています。なお、美容師国家試験においては受験者数19,523人に対し、合格率86.5%となっています。
理容師・美容師国家試験は受験年度により難易度に差が見られますが、過去3年間(2020~2022年度、年2回実施)の合格率を平均すると、いずれの試験も合格率7割を超えています。よって、履修内容をしっかり身につければ合格できる内容であると推測されます。
※引用:公益財団法人 理容師美容師試験研修センター「過去の試験実施状況」
働く場所の違いは?
理容師法と美容師法の定めにより、理容師は理容所でのみ、美容師は美容所でのみ業務を行うことが義務付けられています。そのため、たとえ理容師資格を所有していても美容院に就職してスタイリストとして働くことはできません。
理容師は基本的に理容室での就職となりますが、理容室にも全国展開しているチェーン店や個人経営のサロンなど様々な形態があります。
最近では1階が理容室、2階が美容室といったトータルヘアサロンを展開している店もあります。店舗によって客層や教育体制などが異なるので、自分の希望にあった店舗を選ぶことが重要です。
理容師と美容師どちらを目指せばいい?
これまで理容師と美容師の違いについて解説してきましたが、職業はその人の適性にあったものを選ぶことも重要です。理容師や美容師向きの資質とはなにか、いくつかご紹介します。
理容師が向いている人
美容院に比べ固定客の割合が高い理容室では、以下のような資質が必要とされます。
- 短時間でミリ単位の作業を行う技術力
- 人との会話を楽しめるコミュニケーション力
- 長時間の立ち仕事をこなす体力
- 最新トレンドなど世の中の流れをキャッチする情報収集力
厚生労働省調べによると、理容室の主な利用者層は40代以上の男性が半数を占めており(※)、待ち時間の少なさなど短時間での作業が求められます。頭皮ケアに関心があるお客様も多く、専門知識も必要となります。
※引用:厚生労働省「収益力の向上に向けた取組みのヒント」理容業編(6ページ)
美容師が向いている人
ファッションに興味があり、要望や悩みがはっきりしているお客様が多い美容院では、次のような資質が求められます。
・流行に敏感で、髪型だけでなくファッションへの強い関心
・会話からニーズをすぐに汲み取るコミュニケーション力
・長時間作業をこなす体力
・お客様の悩みに応える豊富な知識や技術
厚生労働省調べによると、女性客は男性客よりも担当者の技術や提案にシビアな傾向が強く、店の雰囲気や清潔感などを重視していることが分かりました(※)。美容師はお客様をトータルでプロデュースすることが求められており、人をキレイにすることに喜びを感じる姿勢を持ち続けることが重要です。
※引用:厚生労働省「収益力の向上に向けた取組みのヒント」美容業編(8ページ)
理容師になるには?
理容師に関心を持った方へ、ここからは理容師になるために必要なステップについて、さらに詳しく解説します。
理容師に必要な国家資格は?
理容師として働くためには、理容師国家試験に合格し、理容師免許を取得しなければなりません。この試験は春期と秋期の年2回行われ、それぞれ実技試験と筆記試験があります。試験内容は下記の通りです。
どうやったら国家資格を取得できるの?
理容師国家試験を受験するためには、理容師養成施設を卒業して受験資格を得る必要があります。そのため、以下のようなステップで資格取得を目指しましょう。
1.厚生労働大臣または都道府県知事指定の理容師養成施設に入学する
昼間もしくは夜間過程で2年以上、通信課程では3年以上の課程を修了することが求められています。高等学校を卒業後、理容専門学校へ進学するのが一般的です(中学校卒業でも進学できる養成施設もあります)。
養成施設では、理容師養成施設指定規則(省令)によって、必修課目および選択必須課目の単位数が定められており、授業時間に関しても取り決めがあります。養成施設ではこの規則をもとにカリキュラムを組んでおり、すべての課程を修了すると、受験資格を満たすことができます。
2.公益財団法人理容師美容師試験研修センターによる理容師美容師国家試験を受験
試験内容は下記の通りです。受験手数料は25,000円(実技試験のみ12,500円、筆記試験のみ12,500円)
- 実技試験:上限減点100点とする減点方式
- カッティング(準備7分、試験25分、毛払い2分)配点40点
- シェービングおよび顔面処理(準備7分、試験15分)配点20点
- 整髪(試験5分、毛払い・顔面拭き取り2分)配点10点
実技試験と同時に、衛生上の取扱試験が行われます。この試験では、受験者本人の衛生状態や、使用するモデルウィッグや用具類の衛生状態が採点対象となります。合格基準は、衛生上の取扱試験における減点が20点以下であり、技術試験における減点が40点以下となっています。
- 筆記試験:マークテスト(55問)、解答時間1時間40分
- 試験課目:関係法規・制度および運営管理、衛生管理、保健、香粧品化学、文化論および理容技術理論
合格基準は、55問中正解率が60%以上であることに加え、試験全課目において無得点課目がないこととなっています。
実技試験と筆記試験のいずれかのみが合格した場合、次回の試験では合格済みの試験は免除となります。
減点方式である実技試験、それから約1カ月後にマークテスト方式の筆記試験が行われ、両方とも合格ラインに達すると、国家資格取得となります。
3.免許申請を行う
理容師美容師試験研修センターで免許申請手続きをします。理容師名簿に合格者情報が登録されると免許書が交付されます。
国家試験に合格しただけでは理容師免許取得とならず、免許を得ないまま理容師として働くと罰せられることがあるため、注意してください。
理容師の給与ってどれくらい?
厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagによると、理容師の平均年収は330万円ほどで、平均年収が最も高くなるのは45~49歳で404万円ほどです。もちろん、地域や就業形態などによって金額は大きく異なります。
※引用:厚生労働省 職業情報提供サイトjob tag「理容師」
アシスタントの時代は、労働時間が長い割に給料も低く抑えられていますが、経験を積んでアシスタントからスタイリスト、トップスタイリスト、ディレクター、マネージャーというように昇給していきます。
店舗により細かく昇級ランクが設定されており、昇級するごとに給料が上がっていくシステムになります。給与体系は、アシスタント時代は基本給と職能給から構成されますが、スタイリストに昇級すると指名料と歩合給が加算される店が多く、集客力や売上で収入が左右される仕組みとなっています。
理容師として高収入を得るためには、技術力を高めお客様の信頼を勝ち取ることが重要です。多くのリピーターを獲得できれば、毎月の売上と給与は安定します。
高度な技術と顧客を獲得できれば、独立も可能です。独立すると安定性は減りますが、平均をはるかに上回る年収を得られる可能性もあります。
理容師と美容師のダブルライセンスについて
最近では理容室・美容室どちらでも働けるようにダブルライセンスを取得するケースも増えています。
ダブルライセンスとは?
理容師・美容師両方の免許を持っている状態をダブルライセンスと言います。
ダブルライセンスを取得する方法は2つあります。
1つはいずれかの免許を取得している状態で、もう一方の国家試験を受ける方法です。もう1つはダブルライセンスコースのある専門学校(養成施設)へ通う方法です。
これまではダブルライセンスを獲得するためには、受験資格を得るためにそれぞれの学校へ進む必要がありましたが、2018年度の制度改正により履修時間が縮小されました。
その結果、すでにいずれかの免許を取得している場合は、昼間課程・夜間課程において1年、通信課程では1年6カ月の履修で済むこととなりました。このことから昼間は理容師として働き、夜間は専門学校や通信教育で学んでダブルライセンスを目指すという方もいます。
ダブルライセンスのメリット
理容師と美容師とでは施術できる内容が異なります。ダブルライセンス取得のメリットは、この業務上の制限をなくすことにあります。
一人でメイクやヘアセット、シェービングを行えるようになれば、ブライダル業界では貴重な人材となります。
ダブルライセンスにより理容・美容全般の施術が行えるため、働く場所に縛られることなく就職の幅が広がります。ダブルライセンスは技術力向上とともに、新しい働き方を手にいれる鍵となるでしょう。
美容師の仕事内容や資格についても興味がある方は、以下記事も合わせて参考にしてみてください。
▷「美容師に必要な資格・免許はどうやって取得する?3つの方法や関連資格も紹介【美容師監修】」
まとめ
理容師や美容師について、国家試験の受験資格や試験内容、試験の難易度などを詳しく解説してきました。
同じ髪を扱う仕事であっても、理容師と美容師とでは業務範囲や働く場所に違いがあります。美容業界に興味がある方は、誰を対象にどのような施術を行いたいのかを明確にしましょう。ダブルライセンスを取得すれば一人で様々な施術が可能になり、就職の機会も広がります。
近年は女性だけにとどまらず、男性の美容意識も高まっています。理容・美容業界は最新トレンドを生み出し発信していく場として、今後ますます個性化や他店との差別化が進むことが推測されます。
理容師・美容師のスペシャリストとして技術を磨いていくのか、ダブルライセンスを取得してマルチプレイヤーを目指すのか、将来のキャリアを考えて自分にあった道を選択しましょう。
監修者:池田 昌央
理容師
学校法人 国際共立学園 国際理容美容専門学校 理容科学科長
国際共立学園は創立69年の伝統ある学園で、職人の技術偏重主義に決して偏ることなく、あらゆる職業を通して、豊かな人間性を併せ持った職業人育成を目指している。『夢をかなえる 人づくり』を教育のテーマに、これまでの教育実績をさらに進化させ、社会に貢献できる人材を育成している。