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鍼灸師が副業をする理由とは?副業の注意点やおすすめの働き方をご紹介

鍼灸師の中には、「開業資金を貯めたい」「収入を増やしたい」「空いた時間を有効活用したい」など、さまざまな理由で副業を考えている方がいます。

本記事では、副業をしたい主な理由や始める前に知っておきたい注意点、おすすめの副業についてまとめています。

鍼灸師が副業をする場合、稼げるかどうかだけでなく、本業と両立できるか、安定的に継続できるかを考えることも重要です。副業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

鍼灸師が副業をしたいと思う理由とは?

鍼灸師の男性

鍼灸師の方が副業をしたいと思う理由はさまざまですが、特に多く見受けられる理由を4つ紹介します。

自分の店舗や新店舗の開業資金を貯めるため

自分の店舗や新店舗の開業資金を貯めるためです。開業の方法としては、自宅の一部を店舗にする方法とテナントを借りる方法の2パターンがあります。自宅の一部を利用すれば費用は多少抑えられますが、テナントを借りる場合は費用がかさみます。

開業資金の目安は約300〜800万円で、以下の費用が含まれます。

  • 人件費
  • 水道光熱費
  • 施術器具代
  • 販促費(チラシ、Web広告、看板など)
  • テナント料(内装工事、賃料数カ月分)

これらを補うため、副業で資金を貯める人もいます。

収入をもっと増やしたいため

鍼灸院に勤務する正社員の平均年収は約382万円(※)です。これは、日本の平均年収と比べると低い傾向にあります。このため、収入を増やすために副業を検討する方が少なくありません。
※引用:求人ボックス 給料ナビ「鍼灸師の仕事の年収・時給・給料」(2024年9月27日時点)

一定の収入を得られるようになると、本業の鍼灸師だけで収入を上げることは難しくなります。収入アップが難しい場合、収入面で物足りなさを感じた際に、副業を始めることもひとつの選択肢です。

▷「鍼灸師の年収はいくら?働き方別の給料や年収を上げる方法を解説」

空いた時間を活用したいため

キャリアアップを目指して、休日などの空いた時間に副業をしたいと考える方もいます。キャリアアップを目的とする副業には、以下のメリットがあります。

  • 鍼灸師の知識を活かしてスキルアップできる
  • 新たな人間関係により人脈が広がる
  • 新たな知識を得て価値観が広がる
  • 自己実現につながる
  • 収入が増え、開業資金が貯められる

副業で施術やコミュニケーションスキルを高められ、開業に向けて資金や人脈を確保できることも期待できます。

転職に向けて準備したいため

転職に向けて準備を進めるため、副業を始める人もいます。転職活動には以下の費用がかかります。

  • 履歴書や職務経歴書、証明写真、などの雑費
  • スーツやカバン、髪型などの身だしなみ費用
  • 交通費や宿泊費

特に、Uターン転職などで飛行機や新幹線を利用する方や、面接の前日や転職活動の一定期間ホテルに宿泊する方は、予算を多めに確保する必要があります。

転職活動の費用は、本業をこなしながら副業で貯めることをおすすめします。特に、他業種への転職を考えている場合、転職活動中は本業を辞めない方が得策です。さまざまな副業を体験して、自分に合う業種があるか、実際に転職したら働けるかを見極めましょう。

また、退職後に転職活動を行う場合、生活費の一部を失業給付金で補うケースもありますが、全ての人が失業給付を受け取れるわけではありません。自己都合退職などの理由で、一定の待機期間が設けられており、その期間中は失業給付金が支給されないため、退職前から生活費を計画的に準備しておくことが大切です。
具体的には、退職後に転職活動を始める場合、失業給付金の支給まで待機期間が2カ月あります。5年以内の自己都合による退職が2回を超える場合の待機期間は3カ月です。

なお、令和7年4月1日以降、待機期間は原則1カ月、5年以内の自己都合よる退職が3回以上の場合、待機期間は3カ月に改正されます。職業訓練を行う場合は待機期間がなくなります。

とはいえ、資金がない状態や再就職の目途が立っていない状態で、本業を辞めることは避けるべきです。失業給付金をすぐもらえるとしても、再就職までの資金確保のため、本業を続けながら副業で資金を貯めることをおすすめします。
※引用:厚生労働省「【雇用保険法等の一部を改正する法律】の成立について」

鍼灸師は副業できる?鍼灸師が副業を始める前に知っておきたい注意点

鍼灸師が副業を始める際の注意点

鍼灸師が副業をする場合、以下の注意点を理解しておけばスムーズに始められます。

服務規程で副業がOKか確認しよう

働き方改革により、副業を認めている企業が増えているものの、自分が勤務する鍼灸院が副業可能であるとは限りません。勤務先が副業可能かどうかは服務規程を確認しましょう。

禁止されているのに副業を行うと、解雇の可能性があります。また、副業可能でも、本業と同じ鍼灸師としての副業が制限される場合があるため、注意が必要です。

※引用:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和4年7月改定)」

副業をするなら自己管理を徹底しよう

フルタイム勤務の鍼灸師は8〜10時間働くため、副業は本業に支障のない範囲で行いましょう。長時間働くと体調を崩す可能性があるため、体調管理と時間管理が重要です。

副業は自分で働く時間を設定できる分、働きすぎるリスクもあります。休日や勤務時間外のスキマ時間を活用し、無理のない範囲で行いましょう。本業に支障をきたした場合は、早急に副業の勤務日数や勤務時間を調整しましょう。

副業の収入が年間20万円以上になると確定申告が必要となる

1月1日〜12月31日までに副業で年間20万円以上の所得がある場合、2月16日〜3月15日までに確定申告が必要です。

期限を過ぎても確定申告は可能ですが、期限後申告の扱いとなり、本来納める税金のほかに「無申告課税」が発生します。しかし、申告の期限から1カ月以内に自分から申告すれば、無申告加算税が免除されます。確定申告をしなかった場合や納税額を少なく申告した場合も、無申告加算税の課税対象です。

また、確定申告後に納税が済んでいない場合は、納税が完了するまで延滞税がかかります。虚偽申告や隠蔽があれば、重加算税が課されることもあります。

確定申告を故意にしなかった場合は脱税と見なされるため、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(法人税法159条3)の刑事罰が科せられる場合があります。また、正当な理由がなく申告を行わなかった場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金(法人税法160条)の可能性があります。

※引用:e-Gov 法令検索「法人税法(昭和四十年法律第三十四号)」

鍼灸師におすすめの副業方法

鍼灸師の女性

鍼灸師の副業には、鍼灸師のスキルを活かして働く方法と、他業種の仕事を行う方法の2パターンあります。それぞれの注意点を踏まえ、自分に合う副業のやり方を見つけましょう。

他の院の施術スタッフとして働く

他院で鍼灸師として掛け持ちで働くことも副業のひとつです。まずは、事前に双方の勤務先から許可を得たほうがよいでしょう。なぜなら掛け持ちを申告せずに働くと、トラブルにつながるおそれがあるからです。

早番・遅番やパートなど、さまざまな勤務形態があります。双方の勤務先のシフトや勤務時間、休日などを上手く組み合わせられるよう、調整しましょう。

他院でも働くことは、視野が広がりスキルアップにつながります。特に開業を目指している方には、おすすめです。

鍼灸師の技術を活かして訪問施術を行う

フリーランスとして、お客様の自宅などで訪問施術を行う方法もあります。店舗が不要なため、掛け持ちしやすく、費用を抑えられる点がメリットです。

訪問施術の場合、始めたばかりの頃はお客様が少ないかもしれませんが、口コミや宣伝で少しずつ収入がアップする可能性があります。チラシを配布して宣伝するだけでなく、無料施術サービスを行うなど、お客様の獲得方法を工夫してみましょう。
特に高齢者など、鍼灸院に通いにくい方に訪問施術は需要があります。ケアマネジャーに営業する方法も効果的です。

資格や専門知識を活かしたネットサービスを提供する

鍼灸師に関するライティングや記事監修、国家資格対策の講師など、鍼灸師の知識を活かして、ネットで収入を得る方法もあります。

リモートワークや在宅ワークが可能なため、休日やスキマ時間に働きやすく、副業に最適です。通勤する手間も省けるので、効率がよく体への負担も減らせます。

また、YouTubeやSNS、ブログで情報発信し、鍼灸の知識を提供しながら収益化する方法も有効です。鍼灸の知識を提供しつつ、自身の鍼灸院を宣伝すれば、集客効果も期待できます。

転職したい・興味がある職業のアルバイト・パートで働く

他業種への転職を考えている場合、興味のある職業のパート・アルバイトを始めてみるのもおすすめです。実際に働くことで、理想との違いを体感できるため、自分に合っているかどうかを見極められます。

また、副業の経験は転職活動でのアピール材料にもなります。

掛け持ちOKの鍼灸院・整骨院の求人情報を探してみよう

副業を検討している方は、掛け持ちが可能な鍼灸院・整骨院の求人情報を求人サイトで探してみましょう。

社会保険や福利厚生が充実しているところも多くあります。休日形態もさまざまなので、シフトを調整しやすいところを選ぶのがポイントです。

検索時は、収入を重視するなら給与面、他業種を経験したいなら未経験者を歓迎しているかの条件を確認しましょう。

まとめ

鍼灸師は、他院での鍼灸師の掛け持ちやフリーランスとして訪問施術、ネットを利用した記事作成、国家試験対策講師など、幅広い副業が可能です。また、経験したことない他業種に挑戦することもできます。

年収を増やしたい方や独立資金を貯めたい方、スキルアップしたい方、他業種に転職したい方など、副業の目的は人それぞれです。副業が認められる社会に変化しつつある現代において、鍼灸師が目的を持って副業をすることは珍しくありません。

プロフィール画像

監修者秋田 繁樹

特定社会保険労務士

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研

2004年に秋田社会保険労務士事務所として開業スタートアップをはじめ中小企業の就業規則の作成や労働トラブルの予防や解決のためアドバイスを行っています。

執筆者さく田