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柔道整復師になるために必要な学費は?国家試験の費用や利用できる制度を紹介
柔道整復師になるには大学や専門学校、短大などで必要なカリキュラムを修了することが必要です。学費はどの教育機関を選ぶかで異なります。
柔道整復師になるために必要な学費、国家試験の受験費用、学費負担を軽減するために利用できる制度、勉強をする教育機関を選ぶときのポイントを紹介します。
これから柔道整復師を目指している方は参考にしてください。
柔道整復師になるには
柔道整復師になるには、まず養成施設として厚生労働省に認められた大学や短大、専門学校などで必要な単位を取得します。
在学中に卒業するための実技試験に合格することで初めて国家試験の受験資格が得られます。
実技は学校で審査されるため、国家試験は筆記試験だけです。
柔道整復はもともと柔道の技で負傷した人などに対する伝統療法で、柔道整復師は主に手指を使って身体を刺激し、人間が本来持っている自然治癒力を引き出す医療職です。
東洋医学と西洋医学を融合し、投薬や注射、手術をしない特徴があり、接骨院や整骨院、スポーツトレーナー、福祉の現場などで活躍できます。
ご参考までに直近3年間の合格率の推移を紹介します。
2021年度 | 合格率62.9%(新卒81.0% 既卒16.9%) |
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2022年度 | 合格率49.6%(新卒65.4% 既卒11.5%) |
2023年度 | 合格率66.4%(新卒84.0% 既卒35.9%) |
※引用:公益財団法人柔道整復研修試験財団「1.柔道整復師国家試験の実施」
柔道整復師の国家試験については以下記事で詳しく解説していますので、興味がある方はぜひ参考にしてください。
▷「柔道整復師は難しい?国家試験の難易度や合格率、取得するメリットを紹介」
柔道整復師になるために必要な学費
柔道整復師になるための学費はどの学校を選ぶかで変わります。それぞれのケースについて解説します。
大学の場合
大学の場合、入学金や授業料の他、実験実習費用、施設費用などをすべて含めた4年間の合計金額は約600~800万円です。大学のカリキュラムの内容や施設、立地などで学費は変わります。
参考までに5大学の学費を紹介します。
学校名 | 学費 |
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帝京大学医療技術学部柔道整復学科 | 6,995,000円 |
明治国際医療大学保険医療学部柔道整復学科 | 6,920,000円 |
日本体育大学保険医療学部整復医療学科 | 6,669,500円 |
帝京科学大学医療科学部柔道整復学科 | 6,585,370円 |
東京有明医療大学保険医療学部柔道整復学科 | 7,800,000円 |
短大の場合
短大の場合、現状の選択肢は限られており、帝京短期大学ライフケア学科柔道整復専攻柔道整復コースの昼間部と夜間部があります。
入学金や授業料、施設拡充費用、実験実習費用をすべて含めた3年間の学費の合計は昼間部が3,25,600円、夜間部が3,249,350円です。
※引用:帝京短期大学「納入金」(2024年7月15日時点)
専門学校の場合
専門学校の場合、全日制のみ、または夜間部、昼間部、トレーナーコースなどに分かれた学校もあります。
入学金、授業料、施設費用、実習費用をすべて含めた在学期間の学費の合計は約300~500万円が相場です。
学校名 | 学費 |
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東洋医療専門学校柔道整復師学科 | 昼間部4,400,000円+約770,000円(教材費、総合演習費、諸経費)合計約5,170,000円 |
新宿医療専門学校柔道整復学科 | 4,390,000円 |
東日本医療専門学校柔道整復スポーツ科学科 | 4,012,850~4,029,900円(白衣・サンダル・柔道着代による) |
東京メディカル・スポーツ専門学校柔道整復師科 | 約4,660,000円(別途諸費用) |
森ノ宮医療学園専門学校柔道整復学科 | 夜間コース/3,335,000円 昼間コース/4,335,000円 トレーナーコース/4,515,000円 |
柔道整復師の国家試験の受験に必要な費用
指定された教育機関で受験資格を得たら、筆記の国家試験を受験します。柔道整復師の国家試験にかかる費用は受験料と免許登録手数料です。
受験料
国家試験は受験する際に手数料が発生します。柔道整復師の場合は23,900円です。
手数料は試験の運営や管理に必要な費用として設定されているため、受験費用として予算に入れておきましょう。受験手数料の支払いは所管する柔道整復研修試験財団が指定する銀行または郵便局の口座に振り込みます。
受験手続で願書などの必要書類が受理されると、振り込んだ受験手数料の返還手続きはできません。
※引用:厚生労働省「柔道整復師国家試験の施行」(2024年7月15日時点)
免許登録手数料
国家試験に合格し、柔道整復師の免許を取得した後も費用が発生します。
新規登録申請の手数料が4,800円、登録費用として登録免許税9,000円が必要です。柔道整復師の資格で仕事を行う前に免許の申請・登録はしておかなければなりません。
受験料とともに免許登録の手数料と税金は必要経費に入れておきましょう。
ご参考までに免許登録後、結婚などで名字が変わると名簿訂正・免許証書換え申請が必要です。その際の申請手数料は3,700円、登録免許税は1,000円かかります。交付された免許証を紛失するなどして再交付を申請する場合の申請手数料は4,000円で、登録免許税は不要です。
その他、国家試験の合格証明書、英訳文証明書も申請できます。申請手数料は2,950円です。
※引用:公益財団法人 柔道整復研修試験財団「2.柔道整復師免許証の登録事務」(2024年7月15日時点)
柔道整復師の学費負担を軽減するために利用できる制度
柔道整復師になるには指定された学校で必要な課程を修了し、筆記の国家試験に合格することが必要で、費用の大半は学費です。国家資格が多い医療系資格の取得費用は他の分野より多くかかりますが、以下のような学費の支援制度が多数用意されています。
- 給付金
- 奨学金
- 国の教育ローン
- 学校独自の支援制度
それぞれ詳しく解説します。
給付金
社会人の中長期のキャリア形成ができる教育訓練を対象にした国の給付金制度があります。柔道整復師は国の指定を受けた資格のため、支給条件を満たせば利用が可能です。
- 専門実践教育訓練給付金
- 教育訓練支援給付金
以下で詳述しますが、いずれも雇用保険への加入期間などが受給条件となるため、キャリアアップや専門的な知識・技能の習得を考えている社会人におすすめです。
専⾨実践教育訓練給付⾦
これまで雇用保険受給者に行われてきた教育訓練給付金が拡充され、社会人の専門学校生が利用できる制度として創設された給付金です。厚生労働省が指定した専門教育訓練の課程を受講し、支給条件を満たせば、給付が受けられます。
年間最大40万円と資格取得後1年以内に就職し、雇用保険に加入した場合はさらに48万円が給付されるため、支給額は3年間で最大168万円です。支給条件は雇用保険加入期間が3年以上(初めての支給は2年以上)で、加入期間を満たせば、離職から1年以内(延長の場合は20年以内)も対象になります。
支給申請はハローワークで行います。
※引用:厚生労働省「専門実践教育訓練給付金に関するよくあるご質問」
教育訓練⽀援給付⾦
社会人の専門学校生が在学中の生活費の補助に使える給付金です。
専⾨実践教育訓練給付⾦の対象者で、支給要件を満たすと訓練中の生活費として、ハローワークから雇用保険の基本手当日額の80%が支給されます。
失業状態にあり、教育訓練を修了する見込みがある45歳未満の方で、初めての利用が条件です。
また、受講する柔道整復師の教育訓練課程は夜間や通信制は認められません。
奨学金
奨学金は、国・地方自治体から民間運営のものまで複数あります。そのうち、一般的に奨学金制度として知られ、利用者が多い2つの奨学金制度について解説します。
- 日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金
- 東京都育英資金貸付事業の奨学金
なお、奨学金には返済が必要な貸与型と返済不要の給付型があり、給付型奨学金の対象と認められれば、柔道整復師の学費は免除または減額されます。
日本学生支援機構の奨学金
憲法に定められた教育の機会均等の理念に則り、経済的理由で修学が困難な優れた学生などに学費の貸与や給付を行う制度です。
貸与型と給付型があり、給付型は2020年4月にスタートしました。給付型は奨学金の返済は不要ですが、世帯収入や学習意欲、過去に給付型の支給を受けていないなどの条件クリアすることが必要です。
一方、貸与型も第一種(無利子)と第二種(有利子)の2種類があります。貸与月額の希望額の選択が可能で、返済期間は卒業後9~20年です。
東京都育英資金貸付事業の奨学金
東京都内に居住する、高等学校や高等専門学校、専修学校の在学生で、学習意欲がありながら経済的理由で学業が困難な方に無利子で貸与する奨学金制度です。柔道整復師の専門学校の場合、月額53,000円が無利子で貸与されます。返済期間は卒業後10~15年程度です。
※引用:公益財団法人東京都私学財団「東京都育英資金貸付事業」(2024年7月15日時点)
国の教育ローン
国の教育ローン制度を利用する方法もあります。具体的には日本政策金融公庫の教育ローンです。上限350万円まで、一定の要件を満たせば450万円まで借り入れできます。利息は年2.40%の固定金利です。国の教育ローンの他にも金利は高くなりますが、各銀行、信販会社の教育ローンがあります。
※引用:日本政策金融公庫「国の教育ローン」(2024年7月15日時点)
学校独自の支援制度
公的機関や民間の団体だけでなく、柔道整復師の学校が学費を支援する独自の制度もあります。
例えば特待生支援として、成績優秀者は初年度の入学金・授業料の一部を免除し、免除になる金額を3段階から選べる制度です。
また、柔道整復師と鍼灸師のダブル受験を目指している方の支援として、入学金・授業料3年間の合計額210万円を免除する制度もあります。夜間部では、社会人の学び直しを支援するとして、3年間で100万円の学費が減免される制度などがあります。
柔道整復師の勉強をする学校を選ぶときのポイント
柔道整復師になるには学校選びが重要です。学校を選ぶ際のポイントは以下のポイントをチェックしましょう。
- 学費
- 教育の内容
- 学校の運営歴
- 自分の条件や目標
それぞれ詳しく解説します。
学費
柔道整復師の学校選びを費用の面で考えると、大学より専門学校の方がかなり抑えられます。専門学校は夜間部だとさらに学費を抑えられます。大学の場合は卒業まで4年かかりますが、専門学校はほとんどが3年制なので、資格取得までの時間と費用を抑えるなら有力な選択肢です。
教育の内容
国家試験合格に役立つカリキュラムが整っているか、理論と実技の両方が習得できるか、現場の実習が可能か、導入している設備機器や講師の実績などもチェックしましょう。幅広い医療知識を学ぶのであれば、大学の方が適しているため、様々なことを学びたいと考えている方には魅力的な選択肢です。
学校の運営歴
運営歴が長い伝統校であればOB・OGとのつながりや広い転職先へのネットワークなど、新しい学校であればオンラインを活用したDXな学び方など、それぞれに特色があります。学校説明会などで詳しく確認してみてください。
自分の条件や目標
社会人から柔道整復師になるには、通いやすい専門学校や夜間部などがおすすめです。仕事をしながら学べるので、資金面の不安を感じずに済みます。専門学校はスポーツトレーナーに特化していたり、民間資格の取得をサポートしたり、学校によってそれぞれ特色があります。
自分の条件や目標に合った学校も見つけやすいはずです。
まとめ
柔道整復師になるには指定された学校で必要な教育課程を修了し、国家試験に合格する必要があります。
柔道整復師の資格を取得する費用の大半は学費です。経済的負担を抑えるために国の給付金や奨学金制度、国の教育ローンの他、学校独自の支援制度を利用する方法もあります。
大学は4年間かけて幅広い知識を学び、専門学校はおよそ3年で実践的な内容を学べる点がメリットです。
学校選びの際は学費や教育内容、運営年数などをチェックし、自分の条件や目的に合ったところを選ぶようにしましょう。
監修者:三浦 勝寛
リクルート進学総研 主任研究員
教育政策の研究、学生募集マーケティング、それらの学校運営・経営への接続等に従事。全国の大学・短大・専門学校・各種団体等での講義・講演・FD/SD等での講師、専門職大学院認証評価委員、学校関係者評価委員、文部科学省委託事業ワーキンググループ委員、文部科学省#知る専ロゴマーク審査委員、等を務める。