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自宅ネイリストの給料はどれくらい?自宅ネイルサロン開業に必要な資金や売上をアップさせる方法を解説
「自宅ネイルサロン」は、家賃や交通費などがかからず、自由に自分の時間を使えるなど、メリットが多い開業方法です。
しかし、自宅で開業するからといって、まったく経費が掛からないわけではありません。
何も知らずに準備をして、開業資金が必要以上にかかったり、なかなか黒字にならなかったりすれば、長く続けていくことはできません。
そこで今回は、自宅ネイルサロンを開業した場合の月収例や、開業する際に必要な経費、収入を増やすためにやるべきことについてご紹介します。
正しい知識を身に付けて、好きなことを仕事にしましょう。
自宅でネイルサロンを開業した場合の月収は?
自宅でネイルサロンを開業した場合、月収はどのくらい稼げるのでしょうか?
ひと月の給料の計算方法は「お客様1人あたりの単価×来店者数-諸経費」となります。
例えば、1日に単価5,000円のお客様を1人接客して、ひと月に20日間稼働すると売上は10万円です。
ここから経費を差し引くことになりますが、自宅ネイルサロンで経費となるのは「ネイル用品」「販売用商品」「ネイル用備品」のほかに、水道光熱費や通信費・保険料などです。
自宅を兼ねているため、水道光熱費や通信費は「家事按分」といって、すべての費用ではなく事業に充てている分のみを経費とします。
仮に、売上10万円の10%である1万円を経費として使った場合、残った9万円が給与です。
会社員のネイリストよりも稼げるのか
自宅でネイルサロンを開業する場合、会社員時代よりも稼げるのかが気になる方も多いのではないでしょうか?
厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査を基に計算すると、会社に勤務するネイリストの年収はおよそ320万円です。
ここから社会保険料などを差し引いた手取りは、年収の75%~85%といわれており、240万円~270万円程度になります。
年間の手取り額が240万円とした場合、ひと月あたり20万円です。
自宅ネイルサロンの場合、1日に単価5,000円のお客様を3人接客したとすると、1日1万5,000円、20日間で30万円です。
経費が10%で3万円かかったとしても、残りが27万円のため、会社に雇用されているネイリストよりも多くの収入が得られる可能性があります。
このように、経費の少ない自宅ネイルサロンの場合は、工夫次第で会社員のネイリスト以上の給料も期待できます。
ネイルサロンに勤務する正社員やアルバイトの給料について知りたい方には、こちらの記事もおすすめです。
自宅でネイルサロンを開く場合の開業資金はどれくらい?
自宅ネイルサロンの最大のメリットは、家賃や仕事場までの交通費が必要ないことです。
ワンルームの部屋を借りれば、最低でも月5万円ほどの家賃が掛かることが予想され、都市部であればさらに賃貸費用がかさみます。
部屋を借りた場合の開業資金は、敷金・礼金や当初の賃料だけでも数十万円かかるケースが多いですが、自宅で開業すればその分が抑えられるでしょう。
とはいえ、自宅ネイルサロンでも開業資金は用意しておく必要があります。
開業の際に必要な費用の内訳は、次のようになります。
内訳 | 費用 |
---|---|
内装費 | 0円~ |
什器費 | 0円~ |
備品費(ネイル関連) | 20万円~ |
広告宣伝費 | 0円~ |
計 | 20万円~ |
内装費は、自宅をサロン向けに改装するための費用です。
0円~となっているのは、人によっては一切お金をかけずに、パーテーションや家具などをうまく使い内装費を最小限に抑えているためです。
「什器」には、椅子やデスク・ソファ、収納棚・テレビ・パソコンなどがあげられます。
内装費同様に、自宅にある什器をうまく活用できれば、費用はほとんどかかりません。
広告宣伝費も、チラシや予約サイトに掲載せず、SNSや口コミのみで集客できれば、0円に抑えられます。
開業したての頃は、集客に時間が掛かる可能性もあるため、これらのほかにも数ヶ月分の運転資金や生活費を用意しておいたほうがよいでしょう。
このように、自宅ネイルサロンを開業する場合は、工夫次第でかなりの費用を抑えることができます。
一方、内装や什器は、こだわればいくらでも費用をかけられる部分です。
しかし、開店後にどの程度集客できるかは未知数であるため、開業資金は将来のための自己投資に位置付けられます。
開業の際には、何ヶ月で初期費用を回収できるのかも、考える必要があるでしょう。
例えば1ヶ月に売上げが10万円だった場合、毎月の経費に1万円、自身の給与に5万円使うと、残りが4万円です。
20万円の開店資金であれば、5カ月で回収できますが、100万円の場合は25ヶ月、つまり2年以上かかる計算になります。
自宅ネイルサロンは、自身ですべての業務を行うため収支計画を立てても、その通りにいくとは限りません。
そのため開業資金は、可能な限り抑えたほうが無難です。
ネイルなどの消耗品はこまめに買い足す必要がありますが、什器類は妥協できる範囲で、できるだけ安いものを購入するなど、費用を抑えましょう。
自宅ネイルサロンを開業する際の注意点
ネイルサロンでは、おおがかりな機械を必要としないため、美容関連の業種でも比較的開業しやすいジャンルです。
しかし、参入障壁が低いため開業する方が多く、顧客獲得競争が激化しています。
そのような中、競合店に負けずに長く続けるために、気を付けるべきことがいくつかあります。
1.固定客(リピーター)を獲得する
開業する際は、固定客(リピーター)の獲得を意識しましょう。
もちろん新規顧客を増やすことも大事ですが、リピーターが増えなければ継続した収入にはなりません。
また、リピーターが増えると、次のようなメリットもあります。
- 閑散期でも集客が見込める
- 信頼関係があるため、お互いリラックスして施術できる
- お客様の好みがわかるため、希望に合ったネイルをおすすめしやすい
リピーターを獲得する方法としては、「自身の得意とするテイストをSNSで積極的に発信する」「細やかなサービスを心掛ける」などが考えられます。
また、次回予約をその場で受け付けるのも有効です。
2.料金を安く設定しすぎない
ネイルサロンをオープンする際は、価格を安くしすぎないようにしましょう。
最初のうちはオープン記念で価格を抑えたり、無料キャンペーンなどを実施したりすることがあるかもしれません。
しかし、それでは、収入は限りなくゼロに近くなる可能性があります。
固定客離れを恐れて開店当初のキャンペーン価格を維持し続けると、将来的に収入を増やしにくくなってしまうためです。
また、同様におすすめできないのは、初回だけ安くすることです。
初回と2回目以降の料金に差があればあるほど、リピーターになりにくくなってしまいます。
オープンしたてで、いくらにすればよいか分からなかったり、施術に自信がなかったりといった理由で安くすることもおすすめしません。
一度安く設定してしまった料金を上げるのは、非常に勇気がいります。
値上げできずに、安い料金のままでいれば「安ければよい」というお客様が増えます。
しかし、ある程度料金を高く設定しておくことで、「優良なサロンに長く通いたい」という考えを持ち、固定客になってくれそうなお客様が増えるでしょう。
3.生活感のない空間で施術する
ネイルサロンへ来店されるお客様の中には、非日常空間を楽しむために来店される方も大勢いらっしゃいます
生活感があふれるサロンでは非日常感を味わえないため、リラックスできず、居心地の悪さを感じるかもしれません。
生活感のない空間を作るには、次のことを意識する必要があります。
- トイレや洗面所への導線
- 待合スペースの確保
- 玄関近くに施術室を設置
トイレや洗面所が独立している場合は問題ありませんが、家族と共有する場合は、ほかの部屋への導線が見えないようパーテーションなどで仕切る必要があります。
また、こまめな清掃も必要です。
万が一施術時間が伸びてしまい、次のお客様を待たせるときのために、待合スペースも作っておくとよいでしょう。
自宅と玄関を共有する場合は、できるだけ玄関に近い場所に施術室を設けることで、家族との接触が減り、生活感を出さずに済みます。
4.税務署への届け出を行う
自宅でネイルサロンを開業する際は、開業してから1ヶ月以内に税務署へ開業届けを提出しましょう。
開業届けを出さなくても罰則はありませんが、1年間の事業所得が48万円以上ある場合は、確定申告をしなければなりません。
その際、開業届と一緒に青色申告承認申請手続をしておくことで、最大65万円の「青色申告特別控除」を受けられます。
要件によって、10万円~65万円の金額を控除できるため、その分所得税を節税できます。
住民税も、青色申告特別控除によって控除された所得税を基に計算するため、節税可能です。
さらに国民健康保険も、住民税同様に青色申告特別控除を適用するため、保険料が安くなります。
会社に勤務している方の場合は年末調整で済むケースがほとんどですが、個人事業主になると、確定申告の手続きを自分で行う必要があります。
開業届や確定申告について、難しいと感じる場合は、最寄りの税務署へ相談してみましょう。
自宅ネイルサロンの売上をよりアップさせるための方法
自宅で開業しているからといって、毎月の経費が一切かからないわけではありません。
例えば、ネイル関連の備品や、電気代などがかかります。
初月は赤字だったとしても、徐々に売上を伸ばしたいところです。
そのためには、サロンのファンを多く作ることが重要になります。
売上アップのためにできる方法を、3つご紹介します。
1.固定客(リピーター)を増やす
自宅ネイルサロンの中には、奥まった場所にある、大々的に看板を出しにくい、などの理由から新規顧客を獲得しにくいケースがあります。
しかし売上アップのためには、リピーターを増やさなくてはなりません。
リピーターを増やすには、メニューを工夫し、他店との差別化を図ることが重要です。
「ジェルネイルの一層残しによるお直しコース」や、「自爪の育成コース」を作るなど、他店ではあまりやっていないメニューを考えてみましょう。
また、差別化を図るために、自分のサロンでしかできないサービスを実施しましょう。
例えば、お茶をお出しする、LINE公式アカウントを作りリピートしてもらえるような特典を作る、などのサービスが考えられます。
金額の安さで他店と競い合っても、忙しくなるわりに、収入はそれほど増えません。
料金以外の部分で、他店と勝負できる「唯一無二のサロン」を目指すことが大切です。
2.SNSを活用し集客する
集客力を上げるためには、SNSの活用もおすすめです。
チラシや広告、検索・予約サイトに載せる方法もありますが、基本的には掲載料がかかります。
オープン時に大々的に集客したいということであれば、検索・予約サイトは非常に便利です。
ただし、無料で宣伝できるうえに拡散力もあるという点では、SNSに勝るものはありません。
また、SNSであれば、実際に施術したネイルや動画を投稿することもでき、自分の得意とするジャンルを簡単にアピールできます。
投稿した画像を見て、好きなデザインだと感じたお客様が、予約を入れてくれる可能性もあります。
既存のお客様だけでなく、不特定多数にキャンペーンの告知や宣伝ができるのもSNSの大きなメリットです。
どのように投稿すればよいか悩んだときは、フォロワーの多いネイリストやネイルサロンの投稿を分析してみましょう。
新しいネイルデザインの参考にもなります。
3.ネイルのスキルアップを目指す
自宅ネイルサロンの売上をアップさせるには、ネイリストとしてのスキルアップも欠かせません。
他店と変わらない施術やサービスだったとしても、高い技術があれば、仕上がりやお客様の満足度に差が出ます。
また、爪をきれいに保つ方法やネイルを長持ちさせる方法など、お客様が知っておくとよい知識や情報をお伝えすることで、信頼度も上がるでしょう。
その結果、リピーターの増加につながるかもしれません。
スキルアップに効果的なのは、以下のような方法です。
- ネイルスクールに通う
- ネイルに関する資格を取得する
- 開業前にネイルサロンで技術を磨く
独学でネイルを学んだ場合は、ネイルスクールに通ったりネイルサロンで働いたりすることで、さらに知識を補えます。
ネイルサロンに勤務することで、経営に関するノウハウも身に付けられるでしょう。
ネイルに関する資格は、公益財団法人日本ネイリスト検定試験センターの「ネイリスト技能検定試験」や、NPO法人日本ネイリスト協会の「JNAジェルネイル技能検定試験」など複数あります。
資格を取得することで、知識が身に付くだけでなく、お客様からの信頼を得やすくなるでしょう。
ネイリストの資格に関しては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
▷ネイリスト技能検定1級とは?取得するメリットや高難度といわれる理由、試験内容を解説
▷ネイリスト技能検定2級とは?試験内容・合格するためのポイント
▷ネイリスト技能検定試験3級合格ガイド!試験内容・合格率・勉強法を解説
▷ジェルネイル技能検定試験とは?ネイリスト技能検定試験との違い、級別の概要を解説
まとめ
自宅ネイルサロンは、費用を抑えて開業でき、勤務時間も比較的自由が利くなど、メリットの多い開業方法です。
自宅でネイルサロンを開業した場合、何人くらいお客様が来るのか、客単価をいくらにするのかによって、手元に残る給料が変わってきます。
比較的初期投資が少ないうえに、毎月の経費も抑えられるため、軌道に乗れば正社員としてサロンに勤務するよりも多くの給料を得られるかもしれません。
しかし、立地的に集客しにくい場所にある場合は、自身の強みを活かせるような経営戦略を立てる必要があります。
まずは、開業資金や毎月かかる経費がいくらくらいなのか、月に何人くらいのお客様が見込めるかなどを試算して、開業計画を立てましょう。
監修者:唐沢 真弓
ネイリスト
学校法人 国際共立学園 国際理容美容専門学校 ビューティアーティスト科教務
国際共立学園は創立69年の伝統ある学園で、職人の技術偏重主義に決して偏ることなく、あらゆる職業を通して、豊かな人間性を併せ持った職業人育成を目指している。『夢をかなえる 人づくり』を教育のテーマに、これまでの教育実績をさらに進化させ、社会に貢献できる人材を育成している。
監修者:秋田 繁樹
特定社会保険労務士
社会保険労務士法人 秋田国際人事総研
2004年に秋田社会保険労務士事務所として開業。スタートアップをはじめ中小企業の就業規則の作成や労働トラブルの予防や解決のためアドバイスを行っています。