柔道整復師

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柔道整復師はやめたほうがいいと言われる理由とは?魅力や将来性と合わせて解説

柔道整復師は、手技による治療の知識・スキルを備えた人が取得できる国家資格です。
大学・短大・専門学校で知識と技能を3年以上かけて修得したのち、1年に1度の国家試験に合格してはじめて資格取得ができます。

しかし、柔道整復師に対してネガティブなイメージを持ち「目指すのはやめたほうがいい」という意見も少なくありません。

柔道整復師という仕事には、難しい課題へ直面する可能性がある一方で、他職種では得がたい大きな魅力もあります。

この記事では柔道整復師はやめたほうがいいと言われる理由や、把握しておきたい魅力についてご紹介します。
進路選択やキャリア選択でお悩みの方はぜひチェックしてください。

柔道整復師はやめたほうがいいと言われてしまうのはなぜ?7つの主な理由を解説

柔道整復師が働いている様子

「柔道整復師を目指すのはやめたほうがいい」と言われるのには、7つの理由が関係しています。
なにが理由となっているのか、それぞれ詳細をご紹介します。

  1. 他の医療系の国家資格の職種と比較して給料が低い
  2. 体力的・身体的な負担が大きい
  3. 勤務時間が長くなる傾向がある
  4. お客様とのコミュニケーションが難しい
  5. 職場の人間関係で悩む場合がある
  6. 保険の不正請求問題によりネガティブな印象を持たれている場合がある
  7. 独立開業しても競争が激しく廃業・倒産の不安がある

1.他の医療系の国家資格の職種と比較して給料が低い

厚生労働省の運営する職業情報提供サイト「jobtag」によると、柔道整復師の平均年収は443.3万円です。
ただしそのなかでも、柔道整復師として駆け出しといえる10~20代の年収は、下記のとおりです。

  • 10代の平均年収:201.48万円
  • 20代の平均年収:20~24歳まで338.53万円、25~29歳まで385.54万円

一方、同様に医療系国家資格に位置する看護師の給料は、平均年収508.1万円です。
20代の平均年収は前半(20~24歳)で400.35万円、後半(25~29歳)で477.04万円となっており、柔道整復師とは年間平均で数十万円の差が生じています

上記のような開きがあるため、同じ国家資格にもかかわらず、給与面で適切な評価がされていないと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

ただし、平均年収の算出には1,000万円以上を獲得している人のデータも含まれているため、値が高めに出ている可能性もある点に注意が必要です。統計上の数値は、あくまでも目安として把握しておきましょう。

※引用:jobtag「柔道整復師」「看護師

2.体力的・身体的な負担が大きい

柔道整復師は立った状態で全身を使って施術するうえ、強く力を加える施術も少なくありません。
そうした施術を通じて身体に負荷がかかり続けると、腰痛腱鞘炎などの不調が生じてしまう可能性があります。

柔道整復師は施術を受ける人を元気にする職種のため、疲れた様子を見せるのは好ましくないとされ、セルフケアや徹底した自己管理能力が求められます。

柔道整復師としていつも元気でいるための自己管理を大変だと感じたときには、就業を後悔する可能性もあるでしょう。

3.勤務時間が長くなる傾向がある

柔道整復師が勤務する接骨院や整体院は、2時間程度の休憩を挟んで営業しているケースも少なくありません。
そのため実働時間は8時間でも、職場にいる時間が長くなる傾向にあります

くわえて、開院前後の事務作業・掃除・後片付け・ブログ更新などの庶務を担当する場合、就業時間はより長くなります。

さらに、就業後に施術スキルを高めるための勉強会へ参加したりトレーニングをしたりすると、オフの時間が確保しにくい場合もあります。

上記の取り組みは、自信を持ってお客様に施術をするため、あるいは経験を積んで独立開業を志すために重要です。

カウンセリングをしている柔道整復師

4.お客様とのコミュニケーションが難しい

柔道整復師は、問診や施術の際にコミュニケーションを取ってお客様の悩みを聞き出し、不調の原因を探る必要があります
身体の不調の原因は人それぞれ、かつ適したアプローチ方法も人によって異なるため、意思疎通を図って的確な原因をつかむことが大切です。

悩みを打ち明けられる十分な信頼関係を構築する必要があるものの、コミュニケーションへ協力的な人だけが来院するわけではないため、難しさを感じるときもあるでしょう。

とはいえ、コミュニケーションがうまく取れないまま施術し、効果が実感できなかった場合はクレームに発展する可能性もあります
顧客対応や対人コミュニケーションに不慣れ・不得手な場合は、精神的な負担がかかり、「きつい」と感じるかもしれません。

5.職場の人間関係で悩む場合がある

柔道整復師が勤務する接骨院や整体院には、小規模な店舗が多い傾向にあります。

小規模店舗では、従業員が少ないために閉鎖的な環境が生まれやすくなります
くわえて技術力が求められる柔道整復師の場合、経験年数に応じて、比較的強い上下関係が生まれる場合もあるでしょう。

上記のような環境でも円滑なチームワークを発揮する必要があるため、合わないと感じるスタッフがいる場合は、勤務にしんどさを覚える人もいます。

6.保険の不正請求問題によりネガティブな印象を持たれている場合がある

以前、柔道整復師の不正請求事件が続いたため、なかには「柔道整復師」そのものにネガティブなイメージを持つ人もいます。

しかし現在では、国による取り締まり強化や研修の義務づけなどにより、不正請求の件数は減少しています
審査委員会によるチェックや、領収書・カルテなどの資料提示を通じ、不正が生まれにくい環境作りが進められているのです。

※参照:厚生労働省関東信越厚生局「保険医療機関等、訪問看護ステーション及び柔道整復師等において不正請求等が行われた場合の取扱いについて」

7.独立開業しても競争が激しく廃業・倒産の不安がある

柔道整復師資格の取得ハードルは決して低くありませんが、国家資格を取得し実際に就業する人数は年々増えています
厚生労働省の公表する「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、2012年には58,573人だった柔道整復師は、2022年に78,827人へと増加しています。

柔道整復師の人数に比例するように、施術所数の数も増加中です。
こうした背景があるために、経験を積んだ柔道整復師による競争が激化している側面があり、施術所の運営は常に廃業・倒産のリスクと隣り合わせとも言えるのです。

施術所数

2012年

42,431ヶ所

2014年

45,572ヶ所

2016年

48,024ヶ所

2018年

50,077ヶ所

2020年

50,364ヶ所

2022年

50,919ヶ所

※参照:厚生労働省「令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況

独立開業後に長く施術所を維持するには、事務・経理面での経営能力や、マーケティング・分析をもとにした他院との差別化など、経営者としての手腕も求められるでしょう。
施術のみに注力したい人にとっては、独立開業した場合は「きつい」と感じる可能性もあります。

柔道整復師の魅力や将来性|一概に柔道整復師はやめたほうがいいと言えない理由とは?

柔道整復師が施術をしている様子

柔道整復師について「やめたほうがいい」と言われる背景にはさまざまな理由がありますが、柔道整復師の仕事にはポジティブな面も多くあります
柔道整復師はやめたほうがいいと言い切れない、下記の4項目についてご紹介します。

  1. 職場環境やスキルアップにより高収入を目指せる
  2. 独立開業し大きく成功する可能性もある
  3. お客様から直接感謝の声をもらえて、やりがいがある仕事である
  4. 女性施術者のニーズが高まり活躍場面が増えている

職場環境やスキルアップにより高収入を目指せる

柔道整復師の収入は、職場環境や、自身の技術力に影響されます。

たとえば、夜間診療・開院日の多い施術院は、勤務できる時間が多く、高い給料を獲得しやすいといえます。
なかには固定給と歩合給を組み合わせた給与体系を採用した施術院もあるため、スキルを上げてリピート客を増やすことで、高収入を目指せる可能性があります。

くわえて他職種と同様に、スキルアップして役職へ就けば、給料もアップする傾向にあります。
向上心があり、知識と施術スキルを高めていける人が輝く職種といえるでしょう。

独立開業し大きく成功する可能性もある

柔道整復師資格を取得すると、開業する権利も得られます。

施術経験を積んで独立開業をすれば、自身の理想とする施術院を作れます
独立開業した柔道整復師のなかには1,000万円以上の年収を獲得している方もいるため、高収入を獲得できる可能性もあります。

数多くの施術院があるなか、お客様を獲得するための取り組みを楽しめる人にとっては、向いている仕事といえるでしょう。

常にスキルアップに努める自己研鑽の姿勢と、マーケティングの知識を反映させた経営により、やめたほうがいいと言われる理由となっている収入面の懸念を払拭できる可能性があります

お客様から直接感謝の声をもらえて、やりがいがある仕事である

柔道整復師は手技による治療や応急処置のほか、骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷などへのアプローチにも取り組みます

一人ひとりに合わせた治療・アプローチを通じて悩みやつらさを解消すれば、直接的に感謝の声をもらえるでしょう。
さらに施術スキルを高めればお客様の反応に反映されるため、手応えや努力の結果を実感できるはずです。

信頼関係を築きながら、施術を通じて悩みが解消されていく姿を見られるため、大きなやりがいを感じられる仕事といえます。

女性施術者のニーズが高まり活躍場面が増えている

女性のなかには、男性柔道整復師による施術に対し多少の抵抗感がある人もいます。
そのような人は、女性柔道整復師が担当すると分かれば「通いやすい」と感じてもらえるでしょう。

実際に女性柔道整復師の割合は増えており、女性が活躍できる場所も増加傾向にあります。

女性柔道整復師がいることで、さらに異なるメリットが得られることも考えられます。
例えば、店舗作りに女性の視点が反映されて安心して通える雰囲気を演出できたり美容を意識した施術メニューを加えたりするなどです。

当然ながら一人ひとりセンスやスキルが異なるため女性だからと一概に言えることではありませんが、安心感やトレンドへの対応という観点から、女性柔道整復師のニーズは高まることが予想されている、ということです。

接骨院・整体院以外の柔道整復師の資格を活かせる就職場所は?

柔道整復師といえば、接骨院や整体院などで勤務するイメージが強いのではないでしょうか。
しかし現在では、柔道整復師資格で修得した手技や知識を活かして、転職し介護トレーニングの現場で活躍する人も増えています。

それぞれどのようなスキルの活かし方ができるか、確認していきましょう。

介護業界で働く

柔道整復師の資格があれば、デイサービスや特別養護老人ホームなどの介護施設で「機能訓練指導員」として勤務できます。

機能訓練指導員は、利用者一人ひとりの身体状況に合わせて、自身で身の回りのことができるよう支援していく職種です。
この職種は、柔道整復師や理学療法士・作業療法士・看護師などの国家資格がなければ就業できません

機能訓練指導員は、利用者や家族と面談して希望を聞き取り、イメージに合わせて訓練を実施します。
柔道整復師として勤務した経験がある方なら、ヒアリング・コミュニケーション能力が日々の業務で培われているため、機能訓練指導員としても活躍できる可能性が高いといえるでしょう。

機能訓練指導員が活躍できる介護施設も増加傾向にあり、柔道整復師のスキルや経験を活かしたキャリア転向を検討する際も、選択肢が広くなっています。

スポーツトレーナーとして働く

柔道整復師は、資格取得の際に身体構造に関連する知識も修得します。

スポーツ選手のコンディションを整えるスキルがあるため、スポーツトレーナーやインストラクターとしての活躍も可能です。
スポーツ選手を支えたい人にとって、魅力の大きな資格といえます。

さらには、柔道整復師は骨折や脱臼の応急手当ができるため、スポーツ大会で応急処置班として活躍したりスポーツチームのリングサイドドクターの一員として活躍したりする人もいます。
柔道整復師の資格を取得すれば、身体に関連するさまざまなキャリア選択が可能になるでしょう。

まとめ

柔道整復師には「勤務時間が長い」「体力が必要」「競合が多い」などのネガティブな面もあり、目指すのはやめたほうがいいと言われてしまう場合もあります。

しかし専門的な知識とスキルを身につけ、自身に合った活躍方法ができれば、大きく成功できる職種です。
柔道整復師は、整体院のほかに介護業界やスポーツ医療の分野にも活躍が広がっているため、興味・関心のある方は資格取得や就職を目指すとよいでしょう。

マイナスの面だけを考慮するのではなく、自身が「どのようなキャリアを歩んでいきたいのか」「どのような仕事をしたいと思っているのか、重視したい点はなにか」などをもとに、じっくりと検討しましょう。

プロフィール画像

監修者岡野 夏樹

柔道整復師

合同会社Hope Dream(代表社員)

お客様と整体師を救いたいという想いから、看板もないビルやマンションの1室で完全自費の整体院を大阪で4店舗経営。
自身は総フォロワー数約20万人の知名度を誇り、全国各地から悩みを持ったお客様が多数ご来院する整体院に成長。
現在は、整体師への講師活動も行い、整体師や経営者の育成にも携わっている。

・整体院 望夢:https://seitai-nozomu.com/
・整体院 望夢 求人情報:https://en-gage.net/seitainozomu_jobs/
・YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCiaK_FFPIKL3mACo1VRioqA

プロフィール画像

監修者秋田 繁樹

特定社会保険労務士

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研

2004年に秋田社会保険労務士事務所として開業スタートアップをはじめ中小企業の就業規則の作成や労働トラブルの予防や解決のためアドバイスを行っています。

執筆者佐藤