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カイロプラクターになるには?必要な資格や仕事内容、年収について解説
カイロプラクターとは、腰痛や股関節の痛みなどに対し、脊髄を中心として体のバランスの調整や機能向上のために働きかける施術をおこなう仕事です。
しかし、カイロプラクターの仕事内容や資格の有無などは、あまり知られていません。興味はあるものの、カイロプラクターについて詳しく知らないという人もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、カイロプラクターの資格や仕事内容・年収などについてご紹介します。カイロプラクターの仕事に興味のある方、転職を考えている方はぜひ参考にしてください。
カイロプラクターとは
カイロプラクターとは、とくに背骨を中心とした骨格のゆがみなどを手技によって調整する行為(カイロプラクティック)を行う施術者のことです。
手技による施術のほか、食事や睡眠といった生活面でもアドバイスも行っており、その場だけよくなればよいのではなく、ご自身の力で健康を維持し、向上させるためのサポートをおこないます。
カイロプラクターは医療従事者だと認識されているケースもありますが、厚生労働省によると、カイロプラクティックは医療類似行為であり、カイロプラクターは医療従事者ではありません。
※引用:厚生労働省 「医業類似行為に対する取扱いについて」
カイロプラクターが行える施術には限りがあり、正しい処置をするためにもカウンセリングを入念に行い、適応症かどうか判断する必要があります。
カイロプラクターになるには
カイロプラクティックが民間療法として扱われている日本国内では、資格がなくてもカイロプラクターになることができます。ただし、カイロプラクターになるためには、専門的な知識や技術が必要です。
たとえば、アメリカなどの海外では、カイロプラクターは専門職として認知されており国家資格としても認められています。
WHO(世界保健機関)でも、未経験から学ぶ場合は4年制の専門教育を学べる学校で、最低でも4,200時間の専門教育と1,000時間の臨床教育の履修を要件としています。
この章では、日本国内でカイロプラクターになるためのポイントをご紹介します。
実は資格は必要ない
国内でカイロプラクターになるには、資格は必要ありません。
日本では、カイロプラクティックに関する法整備がまだ海外ほど整っておらず、国家資格もありません。あくまでもカイロプラクティックは国内では医療類似行為と捉えられています。
誰でも今日から「カイロプラクターだ」と自分が名乗ることができますが、カイロプラクターは直接患者の身体に触れて施術することから、知識のないままでは危険をともないます。不安を感じてしまう患者さんもいらっしゃるでしょう。
特に施術経験のない方や実績が少ない方は、民間資格の取得を通じて、技術や知識を得るとよいかもしれません。
カイロプラクターの資格について
カイロプラクター関連の資格を仕事に生かすには、あらかじめ「どのような資格があるのか?」「費用や受験資格はあるのか?」などのポイントを把握しておく必要があります。この章では、カイロプラクターの資格に該当する「認定登録カイロプラクター」の概要をご紹介します。
カイロプラクター登録試験(JCR登録試験)について
認定登録カイロプラクターとは、通常一般財団法人日本カイロプラクティック登録機構(JCR)により認定されたカイロプラクターのことを指します。
JCRは、国内でカイロプラクターの法整備が進み登録制度ができるまで代替的な役割を果たし、登録者名簿を厚生労働省へ提出、一般公開もされています。つまり、カイロプラクターとして周囲からも信頼を得やすい認定制度だといえるでしょう。
JCRの認定登録カイロプラクターには、第1種・第2種の2種類があります。国内で認定されるためには、どちらも年に1回行われるカイロプラクター登録試験を受験しなければなりません。
なお、第1種認定登録カイロプラクターは、登録試験に不合格でも、受験資格を満たした人(認定登録対象者)であれば認定されます。試験に合格すると第2種認定登録カイロプラクターとして認定されます。
受験資格
カイロプラクター登録試験を受験するためには、条件を満たす必要があります。
条件は、以下の3つです。
条件 | 条件を満たせる地域 | 認定される種類 | |
---|---|---|---|
試験に不合格 | 試験に合格 | ||
(1)CCE 認証(アクレディテーション)もしくはそれに準ずるカイロプラクティック教育機関の卒業者 | 海外のみ | 第1種認定登録カイロプラクター | 第2種認定登録カイロプラクター |
(2)JAC承認CSCプログラムおよび安全教育プログラムの修了者 | 海外・国内 | ||
(3)国内養成学校の卒業者 | 国内 | ー |
※参考:日本カイロプラクティック登録機構 国際認証取得のカイロプラクティック教育プログラム一覧
現在、カイロプラクター登録試験の受験資格が得られるのは、国内では(2)(3)のどちらかを満たしている場合のみです。
日本で受験資格を満たすには
日本でカイロプラクター教育試験の受験資格を満たすためには、教育を受け実務経験のある人は(2)で第2種認定登録カイロプラクターを、実務経験のない人は(3)国内養成学校の卒業者の条件を満たし、第1種認定登録カイロプラクターを目指すことが現実的です。
ただし、受験資格(2)のうち「JAC承認CSCプログラム」は現在国内では受講できません。
(2)で受験資格を満たすためには、一般社団法人日本カイロプラクターズ協会の臨床カイロプラクティックプログラム(安全教育プログラム)を2年(最長3年)受講する必要があります。
ただしこのプログラムを受講できるのは「過去カイロプラクティックもしくは療術の専門教育を履修し、かつ1年以上のカイロプラクティック業務の臨床経験を有する者」となっておりまったくの未経験では受講できません。
※引用:臨床カイロプラティックプログラム募集要項
未経験の方が短期間で受験資格を満たすためには、(3)の国内養成学校を卒業する方法もあります。ただし条件を満たす国内の養成学校は、1年以上のカイロプラクティックまたは療術のコースがある学校です。
気になる学校が国内養成学校の基準を満たしているか知りたい場合は、日本カイロプラクティック登録機構へ直接お問い合わせください。
カイロプラクター登録までの流れ
2023年12月末現在日本カイロプラクティック登録機構が厚生労働省に提出している名簿には624名登録されています。
認定登録カイロプラクターとして認定されるためには、まず受験資格を満たし、カイロプラクター登録試験(JCR登録試験)に合格する必要があります。
ただし、合格しただけでは認定登録されるわけではありません。合格後、3点の提出と登録料1万円(税込)の納入により、初めて登録されます。
- 登録申請書
- 卒業証書の写し
- 登録試験合格証明書
また、認定登録カイロプラクターは3年ごとの単位更新制です。
更新までの間にオンラインセミナーや学術大会・カイロプラクティック関連セミナーなどに出席し、指定の単位を取得したうえで、再度登録し直す必要があります。
受験難易度
カイロプラクター登録試験は、国際カイロプラクティック試験委員会(IBCE)の試験問題を使っています。
発表されている過去5年の受験者数と合格者数は以下のようになります。
受験者数 | 合格者数 | |
---|---|---|
第6回(平成28年) | 14名 | 14名 |
第7回(平成29年) | 20名 | 20名 |
第8回(平成30年) | 14名 | 13名 |
第9回(平成31年) | 13名 | 12名 |
第10回(令和2年) | 13名 | 13名 |
※参考:一般財団法人日本カイロプラクティック登録機構 過去のJR-IBCEカイロプラクティック統一試験の受験者数と合格者数
ほぼ100%の確率で合格しています。受験資格を満たすことは簡単ではありませんが、しっかり知識を身につけ試験に臨めば、試験のハードルはそれほど高くはないでしょう。
カイロプラクターの仕事内容
カイロプラクターの仕事内容は施術だけに限らず、以下のように多岐にわたります。
- カウンセリング
- 検査
- 施術
- アフターケア
カイロプラクターが1回の施術をどのような流れで進めていくのか、詳細を確認しておきましょう。
カウンセリング
カイロプラクターは、まずカウンセリングから行います。記入してもらったカウンセリングシートをもとに、さらに深く現在の症状を聞き、これまでの病歴などと結び付け、症状の分析を行います。
生活習慣が症状の原因となっている可能性もあり、詳しく聞き取る必要があります。
検査
次はカウンセリングの情報をもとに、身体状態のチェックです。体のバランスを確認したり、体の状態を確認するために病院で撮影された画像を見たりもします。
この時点で、カイロプラクティックでは治せない伝染病や癌など禁忌ではないかの判断もします。
施術
施術前にお客様に対し、検査の結果や今後の施術内容、方針について説明し、納得していただいたうえで施術を行います。
カイロプラクターの施術は、手技が基本。背骨や骨盤のゆがみの矯正・筋肉のバランスの調整などを行います。通常、痛みをともなうような施術はしません。
施術後は、施術前後の身体の状態の変化を確認します。
アフターケア
施術後のアフターケアも、カイロプラクターの重要な業務です。
生活習慣や運動、栄養など、日常生活で気を付けるべきことをアドバイスし、場合によってはご自宅でもできるストレッチや体操なども指導します。
柔道整復師や整体師、あん摩マッサージ指圧師との違い
カイロプラクティックを行うカイロプラクターと混同しがちな職業に、柔道整復師や整体師・あん摩マッサージ指圧師などがあります。
それぞれできることが異なり、間違った施術をすれば違法行為となりかねません。これらの職業との違いを確認しておきましょう。
柔道整復師との違い
柔道整復師は、骨・関節などのケガに対し施術を行う専門家です。
接骨院に勤務するケースが最も一般的ですが、技術力を生かしてリハビリ関連やスポーツ関連などさまざまな場で活躍の機会があります。
柔道整復師は国家資格であり、国内では国家資格のないカイロプラクターとは異なります。
また、柔道整復師の施術は打撲や捻挫など保険適用されるものもありますが、カイロプラクティックはいわゆる民間療法であり、保険適用はされません。
※柔道整復師の施術で保険適用する場合、骨折や脱臼など一部医師の同意が必要なケースもあります
整体師との違い
整体師もカイロプラクター同様に国家資格はなく、保険適用もされません。
整体は、中国や日本に古くから伝わる手技で、さまざまな流派が存在します。そのため、同じ症状でも整体院によって施術方法が異なる可能性もあるでしょう。
一方カイロプラクティックは、アメリカ発祥の手技療法で、現在は世界各国で法制化されており、WHOが定めた教育基準も存在しています。
あん摩マッサージ指圧師との違い
あん摩マッサージ指圧師は、柔道整復師同様に国家資格です。
手技療法の点ではカイロプラクターと似ていますが、骨盤などのずれを矯正するカイロプラクティックとはアプローチが異なります。
あん摩マッサージ指圧師は、押す・揉む・叩くといった手技で、血行をよくしたりゆがみを矯正したりします。
疲労回復や健康増進などで利用する場合、基本的に保険適用されませんが、筋力の増強や関節の可動域の拡大などを目的とし、医師が同意している場合に限り健康保険の対象となります。
カイロプラクターの年収
正社員で働くカイロプラクターの平均年収は約384万円(2024年3月25日時点)です。
ただし年収は600万円台まで幅があり、地域やスキルなどによって差があることが考えられます。
※引用:求人ボックス給料ナビ「カイロプラクターの仕事の平均年収は384万円/平均時給は1,049円!給料ナビで詳しく紹介」
同じく整体院などで仕事をする柔道整復師の平均年収は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」では、443.3万円となっています。
上述のように柔道整復師は国家資格に該当するため、ややカイロプラクターよりも上回っていると考えられます。
カイロプラクターのキャリア形成方法
カイロプラクターとしてキャリアを積むためには、経験と知識が必要です。
これらを身につけるための流れとしては、まずは就職して経験値を上げ、最終的に独立開業という道が考えられます。
カイロプラクティック院や整体院で働く
まずは、カイロプラクティック院や整体院で多くの経験を積みましょう。経験を積みながら、ご紹介した「認定登録カイロプラクター」を目指し、知識を身につけられるとよいですね。
夜間学校に通って柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師の資格取得を目指しても、仕事の幅が広がるでしょう。
また、カイロプラクターの就職先は、整体院やカイロプラクティック治療院だけでなく、総合病院や鍼灸治療院・ヒーリングサロンなど多岐にわたります。
より条件のよい職場に転職することも、キャリアアップや年収アップにつながります。
独立開業する
カイロプラクターは最終的には、独立開業の道も開けています。
順調にお客様を増やせれば、雇用されて働くよりもより多くの収入を得ることも不可能ではありません。
ただし、独立開業して成功するためには、お客様からの信頼を得て、多くのファンを作る必要があります。
信頼を得るためには、認定登録カイロプラクターを目指すだけでなく、患者さん一人ひとりに対し丁寧な施術やアフターフォローを心掛ける必要があるでしょう。
まとめ
カイロプラクターとは、骨格のゆがみなどを手技によって改善する専門職です。
現状、日本国内では法改正が進んでおらず、国家資格もないため、誰でもカイロプラクターと名乗ることができます。
しかし、医療行為として認められていないとはいえ、医業類似行為であり、知識や技術がなければ逆に体調不良を起こしかねません。
これからカイロプラクターを目指そうと考えている方は、認定登録カイロプラクターを目指すなど信頼を得られるような働き方をしましょう。
監修者:樋口 直彦
整形外科医
医療法人藍整会 なか整形外科(理事長)
帝京大学医学部卒業後、いくつかの病院で勤務し、院長を経験後、2021年1月に医療法人藍整会 なか整形外科の理事長に就任。
バレーボールVリーグのサントリーサンバーズのチームドクターも務める。骨折治療をはじめ関節外科、スポーツ整形外科を専門に治療。
クリニック運営にICTを推進し、お待たせすることない診療が信条。