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アロマセラピストとは?資格取得や仕事内容を徹底解説【専門家監修】
近年、医療や介護、スポーツなどさまざまな世界でアロマセラピーが注目を集めています。アロマセラピストになるには、どこで学び、どのような資格が必要なのでしょうか。
本記事では、アロマセラピストとは何かから、仕事内容や代表的な資格、学び方までを解説します。
アロマセラピストってどんな職業?
ここでは、アロマセラピストの概要やアロマセラピーの目的、アロマセラピストの具体的な仕事内容について解説します。
そもそもアロマセラピストとは?
アロマセラピストは、植物から抽出された精油(エッセンシャルオイル)を用いて、お客様の心身を癒す職業です。精油は植物の根や果皮、花などから抽出された香り成分であり、アロマセラピーの基本となるツールです。
アロマセラピー関連で、国内で唯一、内閣府に公益認定されている公益社団法人日本アロマ環境協会では、アロマセラピーを以下のように定義しています。
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アロマテラピー(アロマセラピー)は、植物から抽出した香り成分である『精油(エッセンシャルオイル)』を使って、美と健康に役立てていく自然療法です。
アロマテラピーの目的
・心と身体のリラックスやリフレッシュを促す
・心と身体の健康を保ち、豊かな毎日を過ごす
・心と身体のバランスを整え、本来の美しさを引き出す
アロマセラピストの仕事内容
主な仕事内容は、トリートメント法などを用いた施術、お客様へのアドバイス、カウンセリングに加え、タオルやシートの交換などの庶務です。
アロマセラピーの施術を施す
アロマセラピストの行う施術法にはいくつかの種類があります。代表的な施術法のひとつがトリートメント法です。精油を0.5~1.0%以下の濃度に希釈して作ったトリートメントオイルを、お客様の顔や身体に塗布する方法で、リラクゼーション効果をもたらします。敏感肌などで肌が弱いお客様に対しては、オイルの濃度をより低くするなどの工夫が施術者には求められます。
フェイシャルスチーム法もよく行われている施術法です。精油の成分を含む蒸気をお客様の顔全体にあてて浸透させ、肌の乾燥などを防ぎます。この施術法で主に用いられるエッセンシャルオイルはティーツリーやサンダルウッド、ユーカリなどです。
最後に紹介する施術法が湿布法です。湯(温湿布)や水(冷湿布)を張った器に精油を数滴垂らし、タオルなどの布を湿らせて、任意の部位にあてる方法です。
アロマセラピーには、そのほかにも芳香浴法、沐浴法、吸入法などがあります。
アドバイス・カウンセリングを行う
カウンセリングでは、お客様が抱えている悩みを丁寧にヒアリングしたうえで、施術に使用する精油や施術方法などを選定・提案します。初めてアロマテラピーを受けるお客様の多くは、精油にどのような種類があって、どのような効果が得られるのかを知りません。アロマセラピストは、アロマのプロとして正しい知識にもとづいて、それぞれのお客様に適した提案やアドバイスを行います。
カウンセリングにおいてアロマセラピストに求められるのは、
- お客様の話に共感しつつ、最後まで遮ることなく聞く傾聴力
- お客様との会話の内容から、悩みの本質が何であるのかを抽出するための分析力
- 悩みの解決方法をわかりやすく説明するための言語化能力
といったスキルです。
その他庶務
アロマサロンで勤務する場合には、事務作業などを行うこともあります。例えば、顧客情報や施術記録などのパソコンでの入力、各種書類の作成、問い合わせ電話への対応、帳簿作成、経費精算といった経理事務などが該当します。
店内清掃も庶務のひとつです。お客様の多くは、癒やしを求めてサロンへ来店するため、店内は常に清潔さを保ち、快適な環境でなければなりません。店内の庶務としてはそのほかにも、施術に使用したタオルやシートを交換する作業などがあります。
ひと口に庶務といっても、店舗の体制や就いているポジションによって、行わなければならない業務の内容は変わってきます。店舗の責任者であれば、集客やSNSなどを用いた情報発信、マネジメントなどもこなさなくてはなりません。
アロマセラピストになるには?
アロマセラピストに必要な専門知識やスキルを習得するためにも、資格の取得をおすすめします。
アロマセラピストになるには資格は必要?
アロマセラピストになるために必要な公的資格や免許はなく、誰でもアロマセラピストは目指せます。アロマセラピー関連の資格を保有していなくても、アロマセラピストを名乗ることはでき、独立開業することも可能です。
ただし、あまりおすすめはできません。なぜなら、アロマセラピストには専門的な知識や施術のスキルが必要だからです。開業にこぎつけたとしても、専門的な知識やスキルをもたないアロマセラピストに、お客様は定着してくれません。
本気でアロマセラピストを目指すのであれば、アロマセラピーに関する民間資格を取得することをおすすめします。関連する民間資格は数多くあり、資格取得にいたるまでのプロセスで、専門的かつ正しい知識を身につけられます。
資格を取得するメリットとは?
資格があれば、就職や転職活動を有利に進められるのはもちろん、自らのやりたいことに特化したスキルや知識を得ることもできます。
就職や転職のときに有利になる
資格を取得していれば、アロマセラピーに関する専門的な知識を有していると証明できます。人材を求めているアロマサロンやアロマ販売店からみれば、基礎的なことを一から指導する必要がないため、育成コストを抑えられるうえに、即戦力としても期待できます。
非資格保有者に比べれば、採用してもらえる確率はかなり高いはずです。企業によっては、資格保有者に手当を支給していることがあるため、収入アップにつながる可能性もあります。
ただし、アロマセラピストに求められるのは、施術に関する正しい知識やスキルだけではありません。人を癒やす職業であるため、きめ細やかな心配りやお客様に配慮した言葉遣い、不快にさせない振る舞いなどが必要であることも忘れてはいけません。
やりたいことに特化したスキル・知識を獲得できる
アロマセラピストが活躍できるシーンは多く、取得する資格によって、やりたいことに特化した知識やスキルを習得できるようになります。民間資格のなかには、幅広いアロマセラピーの知識を問われるものから、アロマセラピーの授業が可能なスキルを証明できるもの、高度なオイルトリートメント技術を習得できるものまで、さまざまなものがあります。
取得した資格によって、どのような専門知識やスキルをもっているアロマセラピストなのかが明確になります。例えば、高度なオイルトリートメント技術を証明できる資格を保有しているのであれば、オイルトリートメントに特化した人材を求めているサロンへの就職や転職の際には有利です。
アロマセラピストを目指す人におすすめの資格6選
上述したようにアロマセラピスト関連の民間資格にはさまざまなものがあります。だからといって、やみくもに取得するのではなく、習得したい知識やスキルについてよく検討し、目的・ゴールから逆算して、取得すべき資格を絞り込むことが重要です。
ここでは、アロマセラピストの資格認定団体と取得できる資格を6つ紹介します。
▽おすすめの資格認定団体
- 公益社団法人日本アロマ環境協会(AEAJ)
- IFPA 国際プロフェッショナルアロマセラピスト連盟
- 日本アロマコーディネーター協会(JAA)
- IFA国際アロマセラピスト連盟
- 一般社団法人日本アロマセラピー学会(JSA)
- NARD JAPAN ナード・アロマテラピー協会
1.公益社団法人日本アロマ環境協会(AEAJ)
先に触れた通り、アロマセラピー関連で内閣府から唯一、公益認定されているのがAEAJです。アロマセラピーの普及や調査などの活動を主軸としつつ、各種資格を認定することによって、正しく専門的な知識を有するセラピストの育成にも取り組んでいます。
AEAJの行っている資格認定のひとつに「アロマテラピー検定」があります。アロマセラピーに関する基礎的な知識を習得することが可能な、登竜門のような資格です。これから体系的にアロマセラピーを学びたい、上位資格への足がかりにしたいといった方に適しています。基礎知識を学べる2級と、2級の知識に加えてトリートメント法なども習得できる1級とがあります。
アロマセラピーに関する基本知識を伝える能力が問われる認定資格が「アロマテラピーアドバイザー」です。アロマショップで精油販売に携わりたい方などは取得することをおすすめします。アロマテラピー検定1級に合格するなどの取得条件があります。AEAJでは、そのほかにも「アロマテラピーインストラクター」「アロマブレンドデザイナー」など、さまざまな資格を認定しています。
2.IFPA 国際プロフェッショナルアロマセラピスト連盟
英国に拠点を置くアロマセラピスト協会がIFPAです。英国内で活動していた複数のアロマセラピー団体が合併し、2002年に誕生しました。同連盟が主催している国際認定資格がIFPA認定アロマセラピストです。
同資格の保有者は、英国の補完療法規制団体であるCNHCにセラピストとして登録でき、医療機関で勤務することも認められます。資格取得者の多くが、産婦人科や福祉施設などで活躍しているほか、高齢者やがん患者などへのケア、訪問アロマセラピーなど多彩なシーンに活躍の場を広げています。アロマセラピーに関する世界レベルの知識やスキルの保有者であることを証明できるため、日本だけでなく海外にも活躍の場を広げたい、より高度な知識や技術を習得したいという方に適しています。
3.日本アロマコーディネーター協会(JAA)
JAAは、社会に役立つアロマコーディネーターの育成を目的にとして1995年に発足しました。全国に1,000校以上を展開するアロマコーディネータースクールも運営しています。
同協会の代表的な認定資格のひとつが「アロマコーディネーター」です。アロマセラピーの基礎知識を習得し、日常生活のなかへ安全に取り入れられる能力を証明できます。アロマショップやサロンの開業、セミナーの開催などを目指している方におすすめです。
同協会では、上記以外にもさまざまな認定資格や検定試験を主催しています。例えば「ハンドトリートメント検定」「ボディトリートメントセラピスト」「セラピストマナー検定」などがあり、個々人の目的に適した資格・検定を選べます。
4.IFA国際アロマセラピスト連盟
1985年に創設されたIFAは、世界43か国で活動を展開しており、慈善団体としても登録されています。慈善団体としてアロマセラピー関連の研究に積極的に投資しているほか、介護業界におけるアロマセラピーの開拓にも尽力しています。
IFAの主催する認定資格が「IFA国際アロマセラピスト」です。高度な精油学に加え、解剖生理学やアロマトリートメントの技術も学べる点が特徴です。国際的な活躍ができるアロマセラピストを目指したい、国際資格を取得したい、アロマを極めて医療業界でも活躍したいといった方に適しています。
5.一般社団法人日本アロマセラピー学会(JSA)
1997年に設立され、医療分野におけるアロマセラピーの普及および確立を目指して活動しているのがJSAです。「JSA基礎認定」をはじめ、3種類の認定制度を主催しています。そのほかにもエビデンス集やアロマセラピー用語集、学会誌などを刊行しています。
「JSA基礎認定」は、医療の現場でアロマセラピーを正しく応用できる基礎知識を習得、証明できる認定資格です。「JSAトリートメントMAS認定」は、アロマセラピーを用いたトリートメントが可能なスキル、「JSAスポーツアロマ認定」は、医療現場およびスポーツ施設などでスポーツアロマを応用できる能力を証明します。
6.NARD JAPAN ナード・アロマテラピー協会
アロマセラピーの研究や情報収集、正しい知識の普及などを目的に設立されたのがNARD JAPANです。メディカルアロマセラピーに関する情報をヨーロッパで発信している研究機関であるNARDが母体の同協会では、ハーブの育成や精油の成分分析なども手掛けています。
NARD JAPANの主催する入門カリキュラムが「アロマテラピーベイシック」です。5つのコースで構成されており、楽しくアロマセラピーを体験しながら基礎的な知識を学びたい方におすすめです。
「アロマ・アドバイザー」は、アロマセラピーの基本知識と、精油を安全に扱えるスキルの保有を証明できる資格です。試験に合格して申請することで認定されます。自分の健康管理にアロマを活かしたい、アロマセラピーについてもっと学びたいという方に適しています。NARD JAPANではそのほかにも「アロマ・インストラクター」「リラックス・トリートメント」「アロマ・セラピスト」などの資格を取得できます。
アロマセラピストの資格取得に向けた勉強方法
専門学校や認定校でカリキュラムを受けて学べるほかにも、書籍やインターネットで独学したり、オンライン講座を受講したりすることでも学べます。
専門学校や認定校などのスクールに通う
アロマセラピストの育成を目的としたカリキュラムが用意されている専門学校であれば、効率的に知識やスキルを学ぶことが可能です。取得したい資格によっては、認定校でカリキュラムを終える必要があります。
専門学校やアロマスクールで学ぶメリットは、講師から直接指導を受けられることです。正しい知識を有するプロの講師から学べ、疑問点などもその場で解決できます。基礎的な知識から実践的なスキルまでを習得できるスクールも多く、即戦力として活躍できる技術を身につけられる点も魅力のひとつです。
さらにスクールであれば、クラスメートなどができるため、学ぶことへのモチベーションも維持できます。同じ道を志す仲間同士での人脈が広がる可能性もあり、いずれはアロマセラピストとして独立開業したい方には大きな財産になります。
ただし、後述する学習方法に比べると、ややコストが高くなる点はデメリットです。スクール選びの際には、カリキュラムの内容や修了時に取得できる資格、就職サポートの有無などもチェックしておくことをおすすめします。
通信講座で学ぶ
アロマセラピー関連の通信講座を利用すれば、スクールに通わずとも専門的な知識を習得することは可能です。さらに、アロマセラピー関連の資格取得を目指す方を対象とした講座もあります。
通信講座の最大のメリットは自宅で学習できることです。オンライン講座であれば、わざわざスクールに通う必要はありません。仕事が終わって帰宅後にアロマセラピーの勉強をする、といったことも可能です。コスト面でも専門学校や認定校などのスクールに比べれば有利です。
デメリットは、スクールのように疑問点をその場ですぐに解決できない点です。通信講座のなかには、電話やメールなどで講師への質問を受け付けているところもありますが、対面での質疑応答に比べれば、聞ける範囲などはどうしても限定されてしまいます。
通信講座を選ぶ際には、カリキュラムの内容はもちろん、サポート体制もよく確認することをおすすめします。質問できる時間帯や回数、学習期間の延長が可能かどうかもチェックしてください。
独学で学ぶ
アロマセラピーに関する書籍は数多く出版されており、インターネット上にも有益な情報を発信しているWebサイトがいくつも存在します。これらをうまく活用すれば、独学でもアロマセラピーに必要な知識を習得することは可能です。
独学のメリットはマイペースで学べる点です。時間に縛られることがなく、いつでも好きなときに学べます。専門学校や認定校などのスクール、通信講座に比べてコストを大幅に抑えられるのもメリットです。
ただし、プロのアロマセラピストを目指すのであれば、独学はおすすめできません。指導してくれる講師などがいないため、体系的に必要な知識を学ぶことが難しいだけでなく、誤った知識を覚えてしまうおそれもあります。わからないことはすべて自分で調べる必要があり、効率的に学習を進めることができません。
最大のデメリットは実践的な技術を学びにくいことです。書籍やインターネットを利用すれば、知識は習得できるかもしれませんが、トリートメントなどの技術を正しく収録することは困難です。本気でアロマセラピストを目指すのであれば、独学ではなく、スクールや通信講座を検討することをおすすめします。
アロマセラピストの主な働き方や活躍場所は?
アロマセラピストが活躍できる場はサロンだけではありません。アロマ販売店やスクール、医療・介護現場など、活躍できる場所は数多くあります。
1.アロマサロンに就職して働く
アロマサロンで働きたいのであれば、インターネット上で求人情報をチェックしてみましょう。求人サイトで「アロマサロン」や「アロマセラピー」と検索すれば、求人情報を確認できます。美容系や医療系に特化した求人サイトもあります。
アロマサロンが公式サイトで人材を募っているのなら、直接応募してみることもひとつの方法です。利用している店舗がある場合は、人材を募集していないかを聞いてみるのもよいかもしれません。
2.アロマサロンを開業する
資格を取得して、サロンを開業する道もあります。前述の通り、資格がなくても開業は可能ですが、顧客の信頼を得るためにも資格の取得をおすすめします。
独立開業の魅力は、自分好みのサロンを作れる点です。独自サービスも提供でき、思い通りにサロンを運営できます。サロンへ就職する場合に比べて、高い年収を得られる可能性がある点もメリットです。ただし、自分で営業してお客様を集めなければならず、アロマセラピストとしての知識・スキルはもちろんのこと、経営やマーケティングに関する知識も必要とされます。
3.アロマ販売店やコスメショップなどでアドバイザーになる
アロマに関する知識を活かし、お客様へアドバイスをする仕事です。お客様の悩みや希望などをヒアリングし、最適な精油を提案して販売につなげます。業務の中心は接客および販売であるため、アロマに関する知識はもちろん、一般的な接客スキルも求められます。店舗によっては担当する業務領域には幅があるため、事前に確認しておきましょう。
4.アロマセラピーの講師として働く
アロマスクールや専門学校などで講師・インストラクターなどとして働く道もあります。インストラクターの資格を取得していれば、就職が有利になる可能性があります。アロマセラピーに関する高度な専門知識が求められるのはもちろん、指導力も必要です。生徒に対してわかりやすく説明したり、コミュニケーションを取ったりする能力も求められます。
5.その他アロマセラピーに関連した業務を行う
近年、医療や介護の世界でアロマセラピーが注目を集めています。メディカルアロマや介護アロマなども誕生しており、ニーズはますます高まりつつあります。医療機関や介護施設などが人材の募集を行うことも増えており、こうした業界を狙うのもひとつの方法です。
そのほかにも、アロマ関連のイベント企画や商品の仕入れ、広報など、アロマセラピストが活躍できる場所は増えつつあります。
まとめ
アロマセラピストはお客様に癒やしを与える職業であり、施術やカウンセリングなどの実務を通して、その目的を実現します。資格がなくても目指すことは可能ですが、知識と技術の習得の証明にもなるため、資格の取得をおすすめします。書籍やインターネット上の教材を利用しての独学よりは、スクールや通信講座を利用した方が効率的に学べます。
スポーツアロマや介護アロマ、メディカルアロマなど、アロマはさまざまな世界で注目されており、ニーズは高まっています。将来性のある職業なので、この機会に目指してみてはいかがでしょうか。アロマが好きなので仕事にしたい、お客様を癒やす職業に就きたい、と考えているのであれば、アロマセラピストはおすすめです。
監修者:今井通子
アロマセラピスト
ローズリンク株式会社
20年以上に渡り、ローズのメディカルな利点を研究し、独自のメディカルローズ®メソッドを開発・商品化、全国約200店舗で導入し実績を上げている。現在ローズオイルの研究のため長崎大学大学院医歯薬学総合研究科に研究協力員として在籍している。