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ヘアメイクアップアーティストになるには?仕事内容や必要な資格、給料を解説

テレビや映画、雑誌、ファッションショー、ブライダルなど、華やかな現場をバックヤードから支える多くの人たちの中に、ヘアメイクアップアーティストがいます。

従来のニーズに加えて、近年では動画コンテンツが拡大していることから、改めてその存在が注目を集めている状況です。

本記事では、ヘアメイクアップアーティストを目指す人に向けて、仕事内容や必須条件、おすすめの資格、ヘアメイク以外に求められるスキル、平均年収、将来性などを解説します。

ヘアメイクアップアーティストとは?仕事内容を解説

メイクをするヘアメイクアップアーティスト

ヘアメイクアップアーティストは、クライアントからの依頼に応じて、モデルにメイクやヘアアレンジなどを行う仕事です。
仕上がりの要望だけではなく、背景や目的、シーン、優先事項、表現したい形、世界観、衣装との相性などの細かなところまでくみ取りながら、それぞれが持つ魅力を最大限に引き出すことが求められます。

中には、ヘアメイク事務所美容院(ヘアサロン)写真館(フォトスタジオ)などの組織に所属する人もいれば、フリーランスとして働いている人もいます。

なお、美容部員(ビューティーカウンセラー)はモデルにメイクを行う点に共通していますが、一般的にメイクのアドバイスなどを通して、そのモデルに適した化粧品を提案する仕事です。

テレビ・映画・雑誌などで活躍する

ヘアメイクアップアーティストとしてのキャリアを積んでいくと、テレビや映画、雑誌などで働く機会を得やすくなります。

モデルや俳優、タレント、ゲスト、エキストラなどに、それぞれの個性や雰囲気、TPO、クライアントの意向などを踏まえて、適したヘアメイクを行います。しかし映画では、テーマや世界観、演じる役柄、各シーンなどに合わせると、必ずしもキレイなヘアメイクを行うわけではありません。

各種メディアでの仕事は、クレジットタイトルなどに自分の名前が載る場合があるため、大きなやりがいや喜びを感じることが多いです。

ファッションショーなどでメイクを行う

さまざまな企業やブランドが主催するファッションショーやイベントなどで、出演するモデルやゲストのヘアメイクを担当する場合もあります。デザイナーや演出家、スタイリスト、ほかの同業者など、各分野のエキスパートと協働しながら、一つのショーを作り上げることは、強い充足感につながるはずです。

ヘアメイクアップアーティストは、自分の培ったスキルで勝負する世界なので、着実に経験を積むことにより、年齢や性別、国境などの壁を越えて、世界にも活躍の場を広げていけるでしょう。

ブライダルヘアメイクを担当する

結婚式や前撮りの際に、ブライダルヘアメイクを担当する機会もあります。新郎・新婦からの要望を聞きながら、テーマやイメージに合ったヘアメイクで、特別な1日を演出します
場所によっては、新郎・新婦の親族や友人などにも、お祝いの場に適したヘアメイクを行うケースもあるようです。

また、結婚式では、ウェディングドレスなどの洋装に加えて、和装を好む人も少なくありません。そのため、白無垢や色打掛、引き振袖などの帯の結び方を含めた着付けも習得していると、より重宝されます。その際は、ヘアメイクが古風になりすぎないよう、適度にトレンドを取り入れることも大切です。

化粧品メーカーに勤務する

化粧品メーカーにも活躍の場があり、企業専属のヘアメイクアップアーティストとして、自社製品の広告に出演するモデルやタレントのヘアメイクなどを担当します。

例えば、ある国内の大手化粧品会社は、約40名ものヘアメイクアップアーティストを雇用していることで知られています。組織に属しながら、それぞれの得意分野を活かしつつ、活動を行える点が大きな魅力です。

美容院・写真館の専属スタッフとして活動する

美容院の専属スタッフとして働く場合は、イベントなどの特別な日に、ヘアスタイルとメイクの両方を行うトータルプロデュースを提供できます。また、保持している美容師免許を活かして、美容師とヘアメイクアップアーティストを両立させることも可能です。

また、写真館やフォトスタジオに勤めるという選択肢もあります。例えば、成人式では袴などの和装が多いため、ブライダルの現場と同様、帯の結び方を含めた着付けや、和装が映えるメイクなどの技術を習得しておけば、表現の幅が広がります。七五三や誕生日、記念日、就職活動、終活など、あらゆるニーズで訪れる幅広い年齢層のモデルに対して、さまざまなヘアメイクを提案できる点はやりがいを感じるポイントです。

ヘアメイクアップアーティストになるには?2つの条件

ウィッグでカットの練習をしている女性

ヘアメイクアップアーティストは、ヘアメイクを通してさまざまな表現ができる仕事です。
しかし、ヘアメイクアップアーティストとして働くためには、以下に挙げる必須条件を満たさなければなりません。

美容師免許については、以下記事でも詳しく解説しているので、興味がある方は合わせてチェックしてみてください。
▷美容師に必要な資格・免許はどうやって取得する?3つの方法や関連資格も紹介【美容師監修】

1. 美容師免許が原則必要

ヘアメイクアップアーティストになるには、美容師の国家資格である「美容師免許」を原則取得・保持する必要があります

名称から見て、美容師のみが美容師免許取得の対象であると思いがちですが、カットやパーマ、カラーリングなどはもちろん、ヘアスタイリングやメイク、まつげエクステなどの美容に関連する行為をする人すべてに取得が義務付けられています

なお、美容師免許を取得した後すぐに、ヘアメイクアップアーティストとして働き始めるケースだけではなく、一度ヘアサロンに所属し美容師として働いた後、キャリアチェンジするケースも見受けられます。
※引用:厚生労働省「美容師法の概要」

2. 美容師養成施設の卒業が前提

前述した美容師免許を取得するには、まず受験資格を得るために、「厚生労働大臣または都道府県知事が指定した美容師養成施設」を卒業することが前提です。一般的には美容師専門学校が多いですが、美容系の短大や大学、夜間学校、通信課程でも受験資格を得られます。

試験は実技・筆記の両方があり、合格した後に申請・登録を行うことで、初めて免許証が交付されます。

万が一、免許を取得せずにヘアメイクアップアーティストの仕事を行うと、30万円以下の罰金が科されるうえ、今後免許を取得できなくなる可能性があります。知らないうちに違反しないよう注意しましょう。

ヘアメイクアップアーティストを目指すうえでおすすめの資格3選

ヘアメイクアップアーティストとして仕事を行うために、美容師免許の保持は必須ですが、以下に挙げる民間資格をプラスアルファで取得することもおすすめです。

1. 日本化粧品検定

一般社団法人日本化粧品検定協会(文部科学省後援)が実施する「日本化粧品検定」は、皮膚や毛髪・頭皮、爪、口腔・歯などの構造・機能、肌タイプの見分け方をはじめ、化粧品の原料や成分、化粧品関連の法律などの知識に関する資格です。3級から特級まであり、1級以上は、「化粧品の専門家」としてアピールできます。
※引用:一般社団法人日本化粧品検定協会「日本化粧品検定」

2. JMA日本メイクアップ技術検定試験

日本メイクアップ技術検定試験」は、一般社団法人JMA(日本メイクアップ技術検定協会)が定めた適切なメイク基準などを審査します。国内外で活躍するメイクアップアーティストを育成するために設けられました。

試験は実技のみで、1級に上がるにつれて、難易度は高くなります。その分、客観的なスキルの証明になるので、美容業界で働く場合は取得しておいた方が有利です。
※引用:一般社団法人JMA「日本メイクアップ技術検定試験」

3. IBF国際メイクアップアーティストライセンス

国内外問わず共通する、メイクに関する知識や技術などを認定するものが、一般社団法人IBF International Beauty Federation(国際美容連盟)の「IBF国際メイクアップアーティスト認定試験」です。

試験は筆記と実技の両方があります。IBFはアーティストの活動もサポートしていることから、資格を取得した後は、ヘアメイクに関するセミナーをはじめ、就職や開業、フリーランスとしての活動の支援なども受けられます。
※引用:一般社団法人IBF International Beauty Federation(国際美容連盟)「認定資格・検定」

ヘアメイクアップアーティストの給料・年収

厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」によると、ヘアメイクアップアーティスト(「メイクアップアーティスト」として分類)の平均年収は約330万円で、月収に換算すると約27万円です。ボリュームゾーン(中間所得層)の月収は約18~20万円で、全体の約18%を占めています。

また、就業形態は正社員(42%)よりも、自営・フリーランス(66%)の方が多いことが見受けられます。
平均年齢は33.6歳ですが、年収額は45~49歳が一番大きく、約404万円との結果でした。

※引用:厚生労働省「職業情報提供サイト(メイクアップアーティスト)」

ヘアメイクアップアーティストに将来性はある?

ヘアメイクアップアーティストが働いている様子

コロナ禍で美容液やパック、洗顔クリームの需要が増えたように、戦時下などの特殊な状況を除いて、いつの時代でも、これまで美容に関するニーズが完全に廃れたことはありませんでした。したがって、今後もヘアメイクアップアーティストの需要は維持されると考えられます

近年では、女性だけではなく男性もメイクを行うなど、美容に関心を持つ層が増えている点も、ヘアメイクアップアーティストにとっては追い風です。

さらに、動画コンテンツの市場が拡大し、メディアにとどまらず各企業や個人での小規模な撮影、地方での撮影などの増加により、ヘアメイクアップアーティストの需要が一層の高まりを見せています。

しかし、それと同時にSNSでも、インフルエンサーからメイクテクニックの情報が頻繁に発信されており、誰もが簡単にヘアメイクに関する情報を得られるようになりました。そのため、プロであるヘアメイクアップアーティストこそ、積極的に知識と流行をアップデートして付加価値をつけることが、勝ち残るためには欠かせません。

ヘアメイクアップアーティストに向いているのはどんな人?

ヘアメイクの技術に加えて、以下に挙げるスキルを備えている人が、一般的にヘアメイクアップアーティストに向いているとされています。

美容やメイクへの関心が高く流行に敏感な人

ヘアメイクだけではなく、国内外のコスメや健康・美容、ファッションなどの流行を常にキャッチすることが大切です。

美容業界は、特にトレンドの変化が早いので、これまでに得た知識と技術だけに頼っていると、すぐにトレンドから離れてしまいます。着実に技術を磨きながら、最新のトレンドを自身のヘアメイクに柔軟に取り入れることで、表現の幅が広がります

また、美容のトレンドは社会情勢などにも左右されるため、美容に限らずあらゆるニュースに通じておくことで、ヘアメイクアップアーティストとしての仕事により深みと説得力が加わるでしょう。

さらに、アートやカルチャー、歴史などの教養も身に付けておいた方が、表現の違いでほかのメイクアップアーティストとの差別化も図れます。

主観にとらわれないメイクを施せる人

自分が日常的に楽しむヘアメイクであれば、自分の好みや興味を優先して、さまざまなヘアメイクを試せます。
しかし、仕事上のヘアメイクの場合、自分の好みや感性、主観はひとまず置いて、クライアントの意向を最優先することが求められます

「何を表現したいのか」「何を前面に出したいのか」「世界観や価値観を損ねていないか」などをよく理解したうえで、最適なヘアメイクを行うことが大切です。対象となるモデルを客観的に観察することで、その人の魅力を最大限に引き出せます。

体力・集中力のある人

ヘアメイクアップアーティストは立ち仕事が多く、せわしく動き回る職業です。不規則な勤務スケジュールであることも珍しくありません。

それゆえ、普段からウォーキングやストレッチ、ヨガ、水泳など、自分に適した体力づくりの方法を見つけておくことも大切です。誰もが1度は仕事に行き詰まる場面も経験するかもしれませんが、そのような場面のよい気分転換にもなります。

また、ヘアメイクは繊細な作業であるにもかかわらず、現場では仕上げるまでの時間が限られています。そのため、突然イレギュラーな事態が発生したとしても、目の前の作業をなるべく速く確実に、冷静にやり遂げる集中力も求められます。

手先が器用な人

ある程度の器用さは、ヘアメイクを行ううえで欠かせません。ただし、トレーニングを継続することで、器用さは自然と身に付いてきます。

また、限られた時間内に、クライアントの意向に沿ったヘアメイクを完了させるためには、手際のよさや段取り力も必要です。日頃から先を読んで行動し、ものごとに優先順位をつけることが求められます。

コミュニケーション能力が高い人

どの職業においても言えることですが、コミュニケーション能力は大切なスキルです。

クライアントに限らず、フォトグラファーや演出家、スタイリスト、アシスタントなど、協働する人とも円滑に意思疎通を図ることは、自分が直接かかわるヘアメイクの出来だけではなく、プロジェクト全体の質にも直結します。
クライアントの意向を踏まえたうえで、それを上回る提案を行うことも大切です。

また、肌や髪などのデリケートなところに直接触れる仕事なので、短時間で信頼関係を築くことも求められます。ただ単に会話をするのではなく、細かい気配りも忘れないようにしましょう。

まとめ

ヘアメイクアップアーティストは、クライアントの意向と要望をはじめ、表現したい形やTPO、それぞれの個性や雰囲気などを考慮しながら、最も適したヘアメイクを行う仕事です。

活躍の場は多岐にわたり、美容院や化粧品メーカー、写真館や結婚式場などに所属したり、フリーランスとしてファッションショーやテレビ、映画、雑誌などを担当したりすることもあります
いずれの場合も、美容やメイク、ファッションに限らず、国内外のニュースにもアンテナを張って、常に最新のトレンドを柔軟に取り入れることが大切です。

また、押し付けがましくないコミュニケーションを通して、クライアントと良好な関係性を築くスキルなども求められます。

ヘアメイクアップアーティストとして働くためには美容師免許が必須ですが、それに加えて日本化粧品検定などの民間資格の取得もおすすめです。
ヘアメイクに関する技術の客観的な証明となるので、仕事を得るうえで有利に働きます。

プロフィール画像

監修者齊藤 彩子

美容師

学校法人 国際共立学園 国際理容美容専門学校 美容科学科長

国際共立学園は創立69年の伝統ある学園で、職人の技術偏重主義に決して偏ることなく、あらゆる職業を通して、豊かな人間性を併せ持った職業人育成を目指している。『夢をかなえる 人づくり』を教育のテーマに、これまでの教育実績をさらに進化させ、社会に貢献できる人材を育成している。

執筆者ran02260401