ピラティスインストラクターになるための勉強方法は?資格の種類や独学のメリット・デメリットを解説

健康や美容への意識が高い方々の間で、注目を集めているのがピラティスです。それに伴い、ピラティスインストラクターに興味をもつ方も増えています。

本記事では、ピラティスの資格取得に向けた勉強の仕方や、資格の種類、独学のメリット・デメリットなどを解説します。最後に紹介する、ピラティスの勉強におすすめの書籍も参考にしてください。

ピラティスの資格取得に向けた勉強はスクールがおすすめ

ピラティスの資格取得に向けた受講風景

ピラティスの資格取得を目指そうと思ったものの、どのように勉強すればよいのかわからず諦めかけている方はいませんか?

ピラティスそのものを習得することは独学でも可能です。ただ、ピラティスインストラクターの資格を取得するとなると、資格の認定団体が運営するスクールなどで学ぶことが一般的です。ピラティスのスクールはそれぞれ特徴が異なるため、自分に合った資格を取得できるところを選ぶ必要があります。スクールを決める際は、まず複数の説明会や体験レッスンなどに参加し、それぞれの特徴を比較しましょう。自分に合っているかどうかはもちろん、立地や費用なども検討対象です。

ピラティスのスクールでは、理論や解剖学などの知識を習得し、実技や指導の練習をするのが一般的です。指定のカリキュラムを受講した後、試験を受けて合格すれば資格を取得できます。なお、ピラティスのスクールのなかには、インストラクターを養成しているところもあります。例えば、「PHIピラティス」や「JAPICA日本ピラティス指導者協会」「一般社団法人ボディ・エレメント・システム・ジャパン」などです。

そもそもピラティスとは?

ピラティスのグループレッスン風景

ピラティスは、1880年代初頭にドイツで生まれたジョセフ・H・ピラティス氏が考案したエクササイズです。幼少期から持病を抱えていたピラティス氏が、それを克服するためにあらゆる知識や治療法、スポーツなどを探求し、ピラティスの原型を生み出しました。その後、ピラティス氏は第一次世界大戦中に従軍看護師となり、負傷した兵士などの身体機能や精神面のリハビリ指導にあたります。そのなかで、自ら考案したピラティスの原型を活用し、発展させました。

ピラティスを行う際は、胸式呼吸と流れるような体の動きを意識することが重要です。そうすることで、交感神経の活性化やインナーマッスルの強化、柔軟性の強化などにつながります。最終的には、全身のバランスが整った状態を目指します。

ピラティスが注目される理由

もともとリハビリのために誕生したピラティスですが、現在は特に美容や健康面で注目を集めるようになりました。予防医学やウェルネスに対して、多くの人が関心を寄せるようになった近年では、単なるエクササイズとしてピラティスを取り入れるのではなく、メンタルヘルスケアの効果に期待する人も増えています。

ピラティスは、体幹の強化や可動域の向上によるケガ予防のほか、深い呼吸による血行促進やリラックス効果など、多角的な効果が期待できます。また、マットさえあればできる手軽さもピラティスの魅力です。特別なウェアも不要で、動きやすい服装であれば問題ありません。昼夜問わず思いついたときにすぐでき、日常に取り入れやすい点も注目されている理由のひとつです。

ピラティスとヨガの違い

ピラティスとヨガはよく比較され、明確な違いがわからないという方も多いかもしれません。しかし、両者には次のような違いがあります。

  • 目的の違い
  • 呼吸法の違い
  • 動きの違い

それぞれの違いについて解説します。

目的の違い

ピラティスの目的は、インナーマッスルを中心に全身の筋肉を鍛えて、姿勢を改善したり柔軟性を高めたりすることです。背骨や骨盤の位置が正しくなり、全身の骨格の歪みを改善する効果も期待できます。

一方、ヨガは、もともとは宗教的な思想を土台に実践されてきました。そのため、おもな目的は心の安定や集中力の向上などです。精神面の強化を図るなかで、筋力アップや柔軟性の向上なども期待できます。
さらに、ヨガはストレス解消の効果も期待でき、心身ともにバランスよく健康になりたい方に適しています。

呼吸法の違い

ピラティスとヨガはそれぞれ異なる呼吸法で行います。ピラティスの呼吸法は胸式呼吸ヨガは腹式呼吸です。胸式呼吸は胸の筋肉はもちろん、インナーマッスルも鍛えられ、姿勢改善の効果が期待できます。

また、肺に多くの酸素を取り込むことができ、血中の酸素濃度が上がり、全身の機能が高まります。胸式呼吸は交感神経を活性化させるため、筋肉に適度な緊張感が生まれるのも特徴です。

一方、腹式呼吸は、副交感神経を活性化させます。心拍数が下がり、体が休息状態になるため、ストレス解消やリラックス効果を期待できます。

動きの違い

ピラティスは、常に流れるように体を動かし続けるのが特徴です。ただし、急速に動くのではなく、ゆったりと動きながら行います。体がつらくなっても、反動で無理に動いたり静止したりせず、流れを意識し続ける必要があります。

一方、ヨガは、静と動がはっきりと分かれています。腹式呼吸を意識しながらポーズをとって、動きを止めます。ポーズによって、関節の可動域の拡大や筋肉の柔軟性向上、ストレス解消など、期待できる効果はさまざまです。
例えば、リラックス効果が期待できる「チャイルドポーズ」は静、複数のポーズを順番にとる太陽礼拝には動の要素があります。

ピラティスインストラクターの資格の種類

マシンピラティスの様子

ピラティスインストラクターの資格の種類はおもに3つあり、それぞれ特徴や難易度が異なります。

  • マットピラティス
  • マシンピラティス
  • コンプリヘンシブ

以下では各資格について紹介するので、自分に合ったものを選ぶ際の参考にしてください。

マットピラティス

一般的に、ピラティスといえばマットピラティスを指します。やわらかなマットさえあれば、場所を選ばずできるのが特徴です。ただし、ボールやベルトなどの補助道具を使用する場合もあります。基本の型だけでも約40種類あり、姿勢の改善や柔軟性の向上など、それぞれ期待できる効果が異なります。

マットピラティスの資格を取得するためには、基本から応用までのエクササイズについて学ばなければなりません。ほかには、ピラティスの目的や焦点を当てる筋肉、指導方法なども学習します。学習内容のなかには、ピラティスの歴史や解剖学なども含まれています。インストラクターの基本が身につく初心者向けの資格であり、受講料はピラティス資格のなかでは安価です。取得の仕方には、スクールに通う方法やオンライン講座を受講する方法があります。

マシンピラティス

マシンピラティスは、専用の大型器具を使用します。そのため、器具がそろっているジムやスタジオに通わなければ資格を取得できません。難易度はマットピラティスよりも高めですが、初心者でも資格の取得が可能です。マシンピラティスのエクササイズは、500〜600種類ほどあり、リフォーマーやチェアー、バレル、キャデラックなどの器具を使い分けて実施します。

資格取得のための講座は、おもにマンツーマンレッスンで行われます。ただし、リフォーマーピラティスは、グループレッスンの場合もあります。スクールによって学べるマシンの種類は異なるため、将来の目的を考慮したうえでコースを選ぶことが大切です。

たとえば、多くのピラティススタジオで使われているリフォーマーは、マシンピラティスの基礎を学ぶうえで欠かせないマシンです。

チェアーは高齢者のバランス感覚や下半身の筋力強化に効果的なエクササイズに適しており、キャデラックはリハビリテーション分野での活用に向いています。

スクールやコースによって、扱われているマシンが異なるため、カリキュラムの内容をよく確認してから選ぶようにしましょう。

コンプリヘンシブ

コンプリヘンシブ資格は、マットピラティスとマシンピラティスの両方を学び、指導できる総合的な資格です。

マットとマシンの資格をそれぞれ別々に取得する「ダブルライセンス」という方法もありますが、コンプリヘンシブは一つのコースで体系的に両方を学べるのが特徴です。マットやリフォーマーだけでなくチェアーやバレル、キャデラックなど多くの器具を包括的に学ぶため難易度は高めです。上級者向けとなるため費用と時間がかかるものの、レベルの高い知識とスキルを学べます。

また、よりパーソナライズされた指導を提供できるようになるため、幅広い顧客に対応できます。資格を取得することでインストラクターとしての需要が高まるため、仕事に就く際も有利に働く可能性が高くなります。ピラティスインストラクターのスペシャリストを目指したい方や、ピラティスのアプローチ方法を幅広く習得したい方などに適した資格です。

さらに、国際的な基準に準拠している「PMA(ピラティスメソッドアライアンス)」や「PHI Pilates Japan」などの資格を習得すると、将来的に海外での活動も視野に入れられます。

ピラティスの資格取得にかかる費用の相場

スクールでのピラティス資格取得の費用をイメージした桜、机と椅子、電卓

ピラティスインストラクターの資格を取得するための費用は、20〜90万円程度が相場です。ただし、資格の種類やスクールによって、費用に差があります。一般的に、オンライン講座は比較的費用が安価で、国際的な資格を取得できるスクールは高額になる傾向があります。

資格の種類別でみると、マットピラティスの場合、オンライン講座なら費用の相場は20万円程度です。国際的に認められた資格を取得するために、PMA認定のスクールで学ぶ場合は30万円程度かかります。

一方、マシンピラティスの場合、オンライン講座での資格取得はできません。扱うマシンによって費用の相場は異なり、リフォーマーだけなら30万円程度です。すべてのマシンを扱える資格取得を目指すコースの場合、50〜70万円程度かかります。また、コンプリヘンシブの場合、マットとマシンの両方の学習が必要なので、資格取得までに時間がかかります。その分費用も高額な傾向にあり、50〜90万円程度が相場です。

独学でピラティスの勉強をするメリットとデメリット

メリットとデメリットを示す木星の道標

ピラティスについての知識を独学で身につけたい場合、費用や学習ペースなどの面でメリットがあります。しかし、デメリットもあるため、両方確認したうえで自分に合った方法で勉強を始めるようにしましょう。

メリット

ピラティスについて独学する最大のメリットは、費用を抑えられる点です。書籍を使って勉強する場合、おもに必要なのはピラティスの基本や姿勢、解剖学、生理学、筋肉、骨格などの書籍を購入する費用です。また、独学には自分のペースで学べるメリットもあります。自分の取り組みやすいエクササイズから始めても問題ありません。周りのペースについていく自信のない初心者の方も安心です。

デメリット

スクールでピラティスを学ぶ場合、同じ目標に向かって取り組むほかの生徒がいるため、モチベーションを維持しやすい環境です。しかし、周りに仲間がいない独学の場合、モチベーションを維持しにくい面があります。また、独学で正しい姿勢や動き、指導方法などを理解するのは簡単ではありません。初心者にもかかわらず、いきなり難易度の高いエクササイズに取り組んでしまい、怪我をするおそれもあります。ピラティスは、方法が確立されているエクササイズであるため、独学よりもスクールで学ぶほうが正しい動きを身につけやすいでしょう。

ピラティスの勉強におすすめの書籍

マットピラティスのグループレッスン風景

ピラティスに関する書籍は多数あるため、自分に合ったものが見つけられず、悩んでいる方もいるはずです。そこで、おすすめの書籍を2冊紹介します。

Contrology ピラティス・メソッドの原点

ピラティスの創始者、ジョセフ・H・ピラティスによるピラティスの基本を学べる書籍です。

「YOUR HEALTH」と「Return to Life」の合本です。ピラティス理論の解説から実践まで網羅されていて、ピラティスの呼吸や姿勢、動きなどがわかり、さらにピラティス氏がピラティス・メソッドを考察した理由も理解できます。写真付きで姿勢や筋肉の使い方などが解説されていてわかりやすく、初心者から上級者までおすすめです。

【Contrology ピラティスメソッドの原点】
著:ジョセフ・H・ピラティス
訳:川名昌代
出版社:万来舎
発行:2009年12月

プロフェッショナルピラーティス

アラン・ハードマン氏による、ピラティスの実践的なマニュアル本です。インストラクターやインストラクターを目指す方向けの、中級レベルの内容です。「プレピラーティス・エクササイズ」では、基本の姿勢や動き、呼吸などを通じて、筋肉のコントロールの仕方を習得できます。「オリジナルの34のエクササイズ」は、オリジナルエクササイズを写真や図表を用いて解説されており、初心者でもわかりやすい内容です。基本情報だけでなく、スタジオ運営の情報やプログラム作成方法なども掲載されています。

【プロフェッショナルピラーティス】
著:アラン・ハードマン
訳:池田美紀
出版社:ガイアブックス
発行:2015年1月

まとめ

ピラティスの勉強方法には、おもに独学とスクールの2種類があります。

独学には、費用を抑えて自分のペースで学習できるメリットがありますが、体の使い方や指導方法を正しく理解するのは難しい部分もあります。ただし、ピラティスインストラクターの資格を取得するには、スクールで学ぶのが一般的です。

ピラティスインストラクターの資格には、マットピラティスとマシンピラティス、そしてコンプリヘンシブがあり、それぞれ特徴や難易度が異なります。自分に合った資格を見つけ、理想のピラティスインストラクターを目指しましょう。

プロフィール画像

監修者長岡智津子

ヨガスタジオ経営者

Feel株式会社(代表取締役)

日本体育大学を卒業後国立競技場トレーニングルーム勤務し、2017年「Feel株式会社」設立。
35年以上健康に携わる指導(健康増進体操・ソシアルダンス・ポールウォーキングなど)を1週間に200人以上指導。
楽しく・美しく体を動かすことをモットーに性別・年齢を問わず、多くのメニューで心身の健康増進と生きがいづくりのプログラムを提供。

執筆者ヨシトモ