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美容師免許なしでも働ける?無免許でできること・できないこと

美容師を目指す方や美容業界で働くことを考えている方にとって、美容師免許の必要性と無免許で行えない業務について知ることは非常に重要です。

本記事では、美容師免許が必要な業務内容について詳しく解説しています。また、美容師免許がなくても可能な業務についても紹介し、美容業界で働く際の選択肢を広げる情報を提供します。これから美容業界でキャリアを築く方は、ぜひ参考にしてください。

美容師免許がないとできないことは?

美容師の女性

美容師免許がないままで行うと違法となる行為には、以下のようなものがあります。基本的にサロンなどでのお客様に触れて行う施術は美容師にしかできません。

  • カットやカラー、ヘアセット・ドライヤー
  • シャンプー・ヘッドスパ
  • メイクアップ
  • まつエク・まつ毛パーマ

できないこと1:カットやカラー、ヘアセット・ドライヤー

美容師法により、美容師免許なしで美容行為はできません。美容とは、以下のように美容師法で定義されています(美容師法第2条第1項)。

パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること

※引用:厚生労働省「美容師法概要」
※引用:e-GOV 法令検索「美容師法 第2条第1項」

同様に、染毛も美容行為に含まれます。そのため、ヘアカットやヘアカラー、ヘアセット、ドライヤーを使用したスタイリングなどはすべて美容師免許が必要です。これらの行為は、美容師をサポートするアシスタントでも、免許なしでは行えません。

できないこと2:シャンプー・ヘッドスパ

シャンプーはアシスタントがよく行っているイメージがありますが、実は美容師免許がなければ行えません。2020年に規制緩和の議論があったものの、厚生労働省からシャンプーを行うためには美容師免許が必要であるとの明確な回答が出されています

また、頭を濡らして行うヘッドスパも同様に美容師免許が必要です。ただし、洗髪を伴わないドライヘッドスパであれば免許なしでも行えます。

※引用:内閣府「提案内容に関する所管省庁の回答」

できないこと3:メイクアップ

美容師法の美容には、「化粧等」も含まれています。したがって、お客様の顔に触れながらメイクを施すサービスも、美容師免許がないと行えません。美容室だけでなく、撮影現場や舞台、ショーなどでのヘアメイクも同様です。これらのサービスを提供するためには美容師免許が必要です。ただし、美容部員等が化粧品等の販売目的でメイクを施すことに関しては、美容師法には違反しません。

できないこと4:まつエク・まつ毛パーマ

まつ毛エクステンション(まつエク)やまつ毛パーマ、さらには眉毛の施術も、かつて美容業のグレーゾーンとして扱われていました。しかし、無資格者による施術が原因で起きたトラブルが多発した背景を受け、2017年に経済産業省と厚生労働省が協議を行い、これらの施術に美容師法第2条第1項が適用されることが明言されました。これにより、まつエクやまつ毛パーマだけでなく、眉毛の施術も美容師免許を持つ者のみが行えるものとなりました。

アイブロウリストの仕事に関する情報は、こちらの記事もご覧ください。

アイブロウリストとは?必要な資格やスキル、仕事内容について徹底解説

※引用:経済産業省「まつ毛エクステンション施術に係る 美容師法の取扱いが明確になりました ~産業競争力強化法の「グレーゾーン解消制度」の活用~」
※引用:独立行政法人国民生活センター「後を絶たない、まつ毛エクステンションの危害」

施術以外で美容師法の違反になること

ヘアサロンの様子

美容師免許を取得していたとしても、以下の行為は美容師法に違反してしまうため、注意が必要です。

  • 美容所以外で施術を行った場合
  • 管理美容師不在で営業した場合

美容所以外で施術を行った場合

美容師法第7条では、「美容所以外の場所において、美容の業をしてはならない」とされています(美容師法第7条)。美容所とは、「美容の業を行うために設けられた施設」のことを指します(美容師法第2条第3項)。したがって、美容師免許を持っていても、美容所以外の場所で施術を行うことは違法です。ただし、訪問美容師として特別な許可を受けている場合を除きます。

※引用:厚生労働省「美容師法概要」
※引用:e-GOV 法令検索「美容師法 第2・7条」

管理美容師不在で営業した場合

美容師が常に二人以上いる美容所が営業を行うには、各美容所ごとに管理美容師を置く必要があります(美容師法第12条の3第1項)。また、美容所を開く際に、管理美容師の氏名などを都道府県知事に届け出なければなりません(美容師法第11条第1項)。

管理美容師とは、美容所において衛生管理や運営を適切に行うための責任者です。管理美容師は、3年以上の実務経験と特別な講習を受けることで、資格を得られます(美容師法第12条の3第2項)。

管理美容師を定めない状態で営業を行った場合、美容師法に違反することとなり、一定期間の閉鎖命令が出されます(美容師法第15条第1項)。さらに、管理美容師について虚偽の届出をしていた場合、30万円以下の罰金が科されます(美容師法第18条第2号)。

※引用:厚生労働省「美容師法概要」
※引用:e-GOV 法令検索「美容師法 第11・12・15・18条」

無免許で施術をしてしまったらどうなる?

美容師の女性

美容師免許を取得していない場合、美容行為に該当する施術を行うことは法律で禁止されています。万が一、無免許で施術を行ってしまった場合には、美容師法に基づき、罰則が科されます。

法令違反した場合の処分

美容師免許なしで、美容行為に該当するシャンプーやヘアカラーなどを行った場合、30万円の罰金が科されます(美容師法第18条第1号)。また、今後美容師免許試験を受ける際に、影響が出る可能性があります。

※引用:e-GOV 法令検索「美容師法 第十七条の二(罰則)」
※引用:厚生労働省「理容師・美容師の懲戒処分等の基準」

無免許がバレるのはどんなとき?

まず、サロンで働き始める際には、美容師免許の提示を求められることが一般的です。そのため、美容師免許がない状態で美容室やサロンで働くことはほぼ不可能です。また、内部告発によって無免許であることが発覚するケースが多く報告されています。さらに、保健所の定期的な立入検査により、無免許が発覚することがあります。

美容師免許なしでできる仕事の例

美容師免許がなくてもできる仕事には、たとえば以下のようなものがあります。

  • 美容室等のアシスタント
  • メイクアップインストラクター
  • 美容部員・ビューティアドバイザー
  • 他美容系職種(エステティシャン・ネイリスト)

美容室等のアシスタント

美容室やサロンでのアシスタント業務には、以下のものが含まれます。

  • 受付
  • 電話対応
  • 会計
  • 掃除
  • 道具の洗浄

これらのアシスタント業務は美容行為に該当しないため、無免許のアシスタントでも行えます。上述したとおり、アシスタントの仕事として誤解されているシャンプーやヘアカラーといった業務はできません。美容行為に該当する業務を行う場合、必ず美容師免許が必要です。

メイクアップインストラクター

メイクアップインストラクターとは、メイクに関する技術や知識を教える専門家のことを指します。主に、メイクの方法やコツをアドバイスし、個々の顔立ちや好みに合わせたメイクの提案をします。メイクアップインストラクターは直接お客様の顔に触れて施術を行うのではなく、あくまで指導やアドバイスが主な業務です。そのため、美容師免許がなくてもこの職務を遂行できます。

また、メイクアップインストラクターになるために国家資格を取得する必要もありません。ただし、メイク関連の講座や認定資格を取得することで、持っている技術への信頼性をより高められます。

美容部員・ビューティアドバイザー

美容部員・ビューティアドバイザーは、化粧品店やデパートのカウンターなどで、お客様に対して化粧品の販売や使用方法をアドバイスする専門職です。実際にお客様に化粧を施す場合であっても、その目的が商品の販売である限り、美容師免許が必要な美容行為には該当しないと解釈されています。

そのため、特別な資格や免許がなくても、美容部員やビューティアドバイザーとして働けます。ただし、商品の効果的な販売や顧客満足度の向上を目指すために、各メーカーやブランドが提供する研修を受けたり、認定資格を取得したりすることが一般的です。

働きながら最短で美容師の免許を取る方法

美容師の資格取得を目指す女性

美容師免許を取得するためには、国家試験での合格が必要です。国家試験を受験する前提として、指定を受けた美容師養成施設の課程を修了することが求められます。

昼間課程の美容師養成施設に通うのが一般的ですが、働きながら美容師免許を取得したい場合には、夜間課程や通信課程を選ぶことで、仕事と学業の両立も可能です。

夜間過程は主に平日の夕方から夜に授業を受けます。最短2年で卒業が可能です。

通信課程は自宅にいながら授業が受けられます。ただし、通学して一定時間実技を学ぶ必要があります。最短3年で卒業が可能です。

美容師免許の取得方法については、以下の記事も参考にしてください。

▷「美容師に必要な資格・免許はどうやって取得する?3つの方法や関連資格も紹介【美容師監修】」

まとめ

美容師免許がないとできない業務には、カットやカラー、ヘアセット、シャンプー、メイクアップ、まつエクなどがあります。これらは美容行為に該当し、無免許で行うと美容師法に違反し、罰金が科せられます。

一方で、美容室の受付や会計といったアシスタント業務は無免許でも可能です。またメイクアップインストラクターや美容部員などの職種も美容師免許は必要ありません。ただし、民間の資格を取得することで、お客様との信頼関係向上や、キャリアアップにつながります。

美容師免許は、働きながらでも夜間過程や通信課程に通うことで取得可能です。ぜひ諦めずに、チャレンジしてください。

プロフィール画像

監修者齊藤 彩子

美容師

学校法人 国際共立学園 国際理容美容専門学校 美容科学科長

国際共立学園は創立69年の伝統ある学園で、職人の技術偏重主義に決して偏ることなく、あらゆる職業を通して、豊かな人間性を併せ持った職業人育成を目指している。『夢をかなえる 人づくり』を教育のテーマに、これまでの教育実績をさらに進化させ、社会に貢献できる人材を育成している。

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